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月明かりの魔法店  作者: 神楽一斗


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45 変身の魔法②

 ミサンガを手のひらに乗せ、変身の魔法の力を注ぎ込むようにイメージする。

「それでは、こちらをお持ちください」

 ハルカちゃんに魔法を込めたミサンガを渡す。上手く出来たか少し不安だ。

「魔法がきちんと込められているか確かめたいので、よければ使ってみて下さい」

 ハルカちゃんは嬉しそうな顔をしてミサンガを腕にはめた。

 彼女は魔法の発動に関してはお手の物だ。試してもらうには丁度いいだろう。


 ハルカちゃんの身体の周りを光の渦が包み込む。少しずつ、その姿が大きくなっていくのがわかる。ハルカちゃんがやると、ちょっと、魔法少女っぽくて可愛い。

 魔法は上手く込められたようだが、誰に変身するのだろう。光の中から現れたのは、二十代の大人の女性。髪はミディアムで、目は大きめ。巻き気味になっている耳の形がコンプレックス。

「……わたし?」

 目の前のわたしはニッコリ微笑んだ。


「わあ、ホントにアヤさんだ」

 鏡の前でわたしが無邪気にはしゃいでいる。なんだか、いたたまれない気持ちになってくる。

「ハルカちゃん、どうしてわたしの姿になりたかったの?」

「……だって、アヤさんのこと、大好きだし」

 ハルカちゃんはそこまで言うと、顔を赤らめた。わたしの方が色々な意味で恥ずかしくなる。

「憧れの人になってみたいってやつだよ。惚れられたね、お姉ちゃん」

 変身したハルカちゃんを面白がって、マナが写真を撮っている。

「わたし、アヤさんみたいに、誰かを助ける人になりたいの」

「ハルカちゃんだって、十分頑張ってると思うけどな」

 この子はわたしをヒーローみたいに思っているのだろうか。わたしなんて、自分の事で精一杯で、いつも右往左往しているだけなのに。

 そんな考えを見透かしたように、ミコトさんがクスリと笑った。


「アヤさんは、少し自己評価が低すぎますね。そんな事では運気を引き寄せる事は出来ませんよ」


 何度か指摘された事はある。もっと前に出ればいいのにとか、主張すべきだとか。そういう事も大切だと思うが、わたしの中では優先度が低いというだけなのだ。


「アヤさんがいなかったら、わたしは今でもひとりだったよ。他にも困っている人がいたら、助けてあげたいの。……アヤさんも」

 わたしの姿のハルカちゃんがこちらを見つめる。わたしがこうして魔法店を訪れた時、ミコトさんは手を差し伸べてくれた。

 店主代理として、今のわたしが、あの時のわたしと出会ったなら、どうするだろう。考えるまでもない。きっと、同じように手を差し伸べる。


 魔法をいくつも託された今、わたしが望んでいるのは、この力を誰かの役に立てたいという事。


「ミコトさん、わたしは魔導師の仕事をきちんと自分の物にしたいです。助手としてだけでなく、その先の事も含めて」

「わたしは、初めからそのつもりですよ」


 あまりにもあっさりと答えられたので、思考がついてこない。

「……初めから?」

「あなたには、魔導師としての素質と適正があります。初めてお会いした時からそう思っていました」

 ミコトさんがわたしを跡継ぎとして考えているとは聞いていた。マナを治すために魔法を求めてここに来た日。あの時から、わたしはミコトさんに認められていたという事。ミコトさんを見ると、いつもの微笑みが返ってくる。


 事故後の一年を思い出すと、今でも胸が締め付けれる。でも、マナの事故がわたしをこの店に導き、今は幸せを感じている。これも運気が為せる結果なのだろうか。

 色々と考えていたら、込み上げてくるものがあって、つい涙ぐんでしまう。


「アヤさん、大丈夫?」

 ハルカちゃんが変身を解いて、心配そうにわたしを見上げる。その姿が愛おしくてたまらない。

「ありがとう。わたしが困っていたら、助けてね」

「うん」

 わたしはハルカちゃんを抱きしめた。


「ところで、ハルカちゃん。お姉ちゃんが憧れの人なら、わたしの事はどう思ってるの?」

「マナさんも大好きだよ。友達みたいだもん」

「わたしは友達かぁ」

「振られたね、マナ」

 マナやハルカちゃんが無邪気に笑っている。わたしにはそれだけで、十分過ぎるぐらい幸せだ。でも、魔導師として出来る事はたくさんある。

 わたしは決意を込めて、わたしの憧れの人に目で合図した。


「これからもよろしくお願いします」


 ミコトさんは一段と優雅な微笑みを浮かべて、うなずいた。

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