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月明かりの魔法店  作者: 神楽一斗
11/45

11 魔法の教科書①

 次の日の月曜日。夕日が沈むのを見届けて、わたしは出勤する準備をした。魔法店を開ける条件は、月が出るかどうか。今夜は満月だし、綺麗な月が見えるだろう。

 アパートを出て、魔法店のある森までは、歩いて十五分くらい。森に入って、湖にたどり着くまでに更に五分はかかる。不思議なことに、この五分の間に、空には必ず月が現れているのだ。

 魔法店は、湖の畔でお客様を待つように佇んでいる。扉を開けると、チリンと聞き慣れた鈴の音が頭上で鳴る。

「いらっしゃいませ」

 ミコトさんが優しい声でわたしを出迎えた。

「やだなあ、わたしですよ、ミコトさん」

 その所作が、お客様に対応するものだったので、わたしは思わず笑ってしまった。

「お客様をお連れしたのでしょう?」

 ミコトさんはにこやかに微笑みながら、わたしの方を見ている。その視線を追って振り返ると、入口前に少女が立っていた。

「あなた……昨日の?」

 それは治癒の魔法で足を治してあげた女の子だった。

「どうしてここに?」

「お姉さんの後をついてきたのよ」

 まったく気づかなかった。というか、誰かに後をつけられる覚えなどないので、警戒もしていなかったが。


 わたしはミコトさんに怒られるのを覚悟で、昨日の出来事を告白した。

「治癒の魔法が役に立って良かったじゃないですか」

 ミコトさんは気にした様子もなく、そう言った。

「それはそうなんですけど……」

 わたしは、出されたジュースを飲んでいる女の子の横顔をちらりと見た。

「……いいんですか? 魔法やこの店の事は、あまり堂々と世間に広めるべきじゃないのかと」

「そんな事はありませんよ。この店は望むべきお客様は全て受け入れますし、あの少女がアヤさんに出会ったのも、運気の為せる所ですから」

 ミコトさんはそう言うと、一冊の本を手にして少女の横に座った。

「お嬢さんのお名前を聞いてもいいですか?」

「ハルカだよ」

「では、ハルカさんに、この本を差し上げましょう」

 ミコトさんが少女に本を差し出した。彼女は受け取った本の表紙を眺めて、首を傾げている。

「その本は魔法の教科書です。もし、魔法に興味があるなら、その本に書いてある事を全て覚えて下さい」

「わたしに魔法を教えてくれるの?」

 少女が目を輝かせてミコトさんを見ている。

「二週間経ったら、そちらのお姉さんと一緒に、試験を受けてもらいますからね」

「試験?」

 わたしは思わず少女とハモってしまった。

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