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ヴァンパイアを殲滅せよ  作者: 金糸雀
第2章 伯爵編
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ACT98 お別れなの?【佐井 朝香】

 息をするのも忘れたわ! 見つめあう田中さんとハムくんがあんまり怖かったんだもの! 2人の身体からはあたしが見て解るほどオーラ? みたいのが立ち昇ってて。お互い今にも飛び掛かりそうなの。なんで? 仲間同士なのにどうして!?

 あたし、しゃがんだまま下がろうとした。でもまたあの眩暈が襲ってきて。


「何を言ってる? 兵器ってなんなんだ!?」


 ハムくんの声が一瞬だけ聞こえて消えた。例のDNA螺旋のお化けにぶわっと囲まれて、もう耳元でウワーンって音まで鳴り出して。頭痛とか吐き気とかもしてきてもう酷いの。誰かが腕とか引っ張ってくれてようやく少し離れた場所に座り込んだけど。

なんとか顔をあげてみればハンターたちが一斉にハムくん達に銃を向けたのが見えて。

堂々と立ったままの田中さん。ハムくんも動かない。ううん、動()ない? うそ! 何だかすっごく苦しんでる! どうしたの!? またいつもの発作!?

 あたし、よろめく足に鞭打ってハムくんに駆け寄ろうとして、でもすぐ傍に立ってた総理に腕を掴まれた。


「離して! 菅さんが!」

「早くここから脱出したまえ! 見なさい!」

「え?」


 眼を見張ったわ! 柱が! 議事堂の正面にあるあの太くて大きな石の柱がゆっくり外側に倒れていくの! ずしぃぃんって地面が響いて、そしてまた別の柱も! コツンって何か頭に当たって、上見たら割れたガラスが降ってきてて、急いで壁際に避難! でもその壁が海面みたいに波打ってる! なにこれ地震!? こんな時に?


「相変わらず世話の焼ける人ですね」


 すぐ後ろで聞き覚えのある声。


「麻生くんっ!? 生きてたのね!」


 そこに立ってたのはたったさっき今生の別れ、みたいな感じで別れた麻生くん。その手にはあの黒い銃。


「……て! 先生!」


 麻生くんが何か言ってる。でも良く聞こえない。耳を劈く無数の銃声がその声を掻き消して。

 彼の肩越しに見えたそれは一方的な殺戮。何処からか現れたヴァンパイア達がハンター達の手で次々に撃ち殺されていく。どうしてか抵抗らしい抵抗もせず、次々と壁際へと追い詰められていくヴァンパイア。絶叫に悲鳴。積み上げらて行く死体の山。

 その中で、田中さんだけがただ静かに立っている。彼の周りだけ、降ってくる瓦礫がドーム状に避けている。その田中さんの前には膝をつくハムくんと、いつの間にかその腕を取って支えながら、田中さんを見返している一人の……えーと……誰?


「先生はあの通路に走って! 地下に逃げて! 総理も、お早く!」


 麻生くんが袖を引っ張る。総理がSP達に連れられて走るのが見える。でも、あたし――


「先生っ!?」

「だめ! あたし、ハ……菅さんの傍に居たい! 菅さんから離れたくないっ!!」

「ええっ!?」


 麻生くんが左手で銃を構えたまま振り返る。


「先生!?」

「だめなの! どうしてもそっちには行けない!」

「……そうですか」


 彼の眼が哀しそうに光って、ゆっくりと黒い銃をあたしに向けて。


「さよなら、先生」


 言うなり銃口がパンッ! と音を立てて。あたしは胸に感じた衝撃よりも何よりも、ハムくんともう会えないって事の方がよっぽど重要で。もう霞んで良く見えない、たぶん彼が居る、その方向に無我夢中で手を伸ばした。

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