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ヴァンパイアを殲滅せよ  作者: 金糸雀
第1章 幹部編
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ACT9 ハンターだったの?【佐井 朝香】

 凄い音がしたわ! ドガン!! って!


 あっと思って見れば、彼がドア前に移動してて、滅茶滅茶になったドアがあっち側に倒れてる! ヴァンパイアの怪力で蹴破ったのね!? (もう! あのドア高かったのに!!)


 倒れたドアの横に転がってる男は、たった今発砲した本人。よね?

 肩まで伸びた金髪にゴーグル。黒のミリタリージャケットにカーキー色のひざ下丈カーゴ。黒革のグローブと、同じく黒革の編み上げ靴。戦闘服をストリートっぽく崩した系のファッション。右手に握ってるのは西部劇の保安官が使うような大きめの拳銃。ん~ヤクザの雇った殺し屋にしてはカッチリしてない?

 まあいいわ! 佐伯は無敵のヴァンパイアなんだから! いけーー! やっちゃえー!!


 あたしは片膝付いて、そっち方向に狙いをつけた。援護よ援護。必要ないかもだけど一応ね?

 そしたらパシィッて音がして。

 驚いたわ! 殺し屋くんに仲間が居たの!

 恰好はまるで外国映画で良く見る黒服のエージェント。その人が、真正面から佐伯の腕を受け止めてる。

 そんな彼に、佐伯も驚いたみたい。ビクッと硬直したりして、その隙狙って殺し屋くんが銃を構えるのが見えたから、あわてて撃ったわ! 撃鉄上げてスタンバってたもんだから、彼より早く撃てちゃった! 

 やっちゃった! 生まれて初めて人撃っちゃった!

 ひっくり返った殺し屋くん。当たったのは頭じゃなくて背中。出血なし、防弾チョッキをつけてたみたい。思わずホットしたりして。


 佐伯の方は、パシパシパシパシ!! ってもう凄いの。動きが早くてあたしの眼じゃどっちが蹴ったり殴ったりしてるのか全然解んない。でも佐伯が優勢ってのは間違いないわ。エージェントの彼は後退しっぱなしだったから。逃げて逃げて、あっと言う間に階段の方に移動して視界から消えちゃった。


 撃たれた彼はと見れば、上半身だけで一生懸命廊下を移動してて。引きずる足はまるで血が通ってないみたい。……あらら、脊髄損傷時の症状。腰椎が折れちゃった? でもまだ武器を手に持ってる。油断も容赦も出来ないわ。

 あたしは後ろから駆け寄って、金色の頭に銃口を押し当てた。


「動かないで。銃をこっちに寄越しなさい」


 あはっ! この台詞、ドラマで良く言うわよね~

 狙いは延髄。首に近いちょっと柔らかくて窪んだ部分。破壊されたら呼吸が出来なくなって死んじゃう場所。もちろん殺し屋なら知ってるわよね?

 男はグッと息をつめて、でも銃を離さない。


「なにしてるの? さっさとして」


 さっきより力を込めて銃口を押し付けてみる。金属と床が擦れるジャリリッて音。痛そうに呻きながら、グローブを付けた左手で床を引っ掻く殺し屋くん。でもやっぱり胸と床との間に挟まってる筈の銃を出そうとしないの。

 んもう! 往生際が悪いわねぇ!


「さっさとしないとホントに撃つわよ! 本気なんだから!」

「……どうだか。威勢の割にゃあ手が震えてっけど」

「なんですって?」


 あたしはガチっと撃鉄を起こして見せた。

 知ってるわよ。教わったもの。この銃はダブルアクション。コッキングする必要なんか無い。離れた的を撃つときは、命中精度を上げるため――つまり衝撃のブレを最小限にする為に上げる時もあるけど、こんな風にくっつけた時は必要ない。

 でもいいの! 必要あるの! あたしが本気だって納得してもらうためにね!


 そしたら流石に観念したのね?

 男がもぞもぞ手を動かして。ほらよ、なんて言いながらポイっと眼の前の床に銃を放る。


 あたしはすぐに飛んでいって銃を拾ったわ。そしたらびっくり! ずっしり重いし、触り心地がとってもいい! ツルツルすべすべして、まるで磨いた石で出来てるみたいなのよ。

 思わずそれを褒めちゃった! そしたら彼、もう小っちゃい男の子みたいに得意げになっちゃったの! 聞いてない事まで自慢げに捲くし立ててもう可愛いの!(解るわぁ~~あたしも愛用の聴診器とか褒められたら「力加減で低周波と高周波聞き分けられるのよ!」なんて自慢したくなっちゃうもの!)

 その上分解してお手入れしてるなんて言うのよ。分解なにそれ見てみたい!


「貸してみな」なんて手を出してくれるから、喜んで渡したわ。

 いいのよ、弾なんか入って無い。くれた人がね? 1発あれば十分だって。自決用なら尚更、初弾が当たらなかった時はどの道お仕舞いだから、過剰な装備はするなって。


 彼、受け取った銃とあたしの顔を見比べて、「え?」って顔。そんな顔しながらでもその手と指は動いてて。

 マガジン外してスライドを後ろに引っ張ったと思ったら、トリガーガードをグッと下に降ろして、またスライドを後ろに引いて持ち上げたの。そしたらそれがスルっと外れちゃった。すごいの。金属が擦れる音とかぶつかる音がしそうでしないの。2つに分解したあたしのPPK。銃身バレルとスライドに挟まったコイルが露出してる。オイルの匂いがプーンと匂う。


「すっごーい! はや~い! パズルみた~い!」


 そう言って手を叩いたあたしに、彼ったらあからさまにため息ついて。

「いいのか」なんて聞くから、「からだもの」って肩竦めてみせたら、なんとも言えない顔して。

そして聞くのよ、さっきはどうして無事だったのか、あたしの耳(の近く)を狙ったのにって。

困っちゃった。自分でも解らないもの。

実は時々あるの。昔からよく言われたわ。「谷に落ちたはずなのに」とか、「車にぶつかったはずなのに」とか。

……ちょっと。そんなに見ないで? あたしの顔に穴があいちゃうじゃない!

 


「こっちは片付いたよカイトくん」


素敵なバリトン声がした。顔を上げて、ギョッとしたわ。声の主は佐伯じゃなかった。やっつけられた筈のエージェントの方だったの! 

 うそ! 有り得ない! ヴァンパイアは殺し屋なんかにやられない! 対抗できるとしたらたぶんあれ。ヴァンパイア・ハンターだけ。

この人、ハンターだったの? じゃあこのカイトって子も?

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