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ヴァンパイアを殲滅せよ  作者: 金糸雀
第2章 伯爵編
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ACT83 緊急事態宣言【菅 公隆】

 フラッシュの眩しい光が網膜を貫いた。閉じた眼の裏に残像が張り付いている。隣りに立つ沢口が声を張り上げる。


「吸対法に基づく『緊急事態宣言』によりこの場を預かりました、防衛省副大臣 沢口憲一です。事前に申し上げた通り、ヴァンパイアの首魁――伯爵と呼ばれる個体の捕獲に成功致しました」


 沢口の口上に場が静まる。促しに従い、両脇の男達が手錠姿のわたしを前へと押しやる。ざわめき立つ群衆。


「沢口副大臣! こちらは厚生労働相の菅公隆氏では!?」

「この方がヴァンパイアの伯爵だと言うのですか!?」


 再び焚かれる無数のフラッシュ。

 ……やめてくれ。陽の光の方がまだマシだ。


「御察しのとおり、菅公隆厚労相がヴァンパイアであり、その統領でした。我々も驚きを隠せずに居る次第です」

「本当に菅大臣がそうなのですか!? 根拠はあるのですか!?」

「彼自身が認めています」

「ヴァンパイアは日の光に弱いのでは?」

「弱点を克服した幹部に関してはその限りではありません。現在、彼を含めた2体が陽光に耐性を持つと報告を受けています」


 再び静まり返る記者達。慌てて下がる者も居る。無理もない。ヴァンパイアの恐るべき習性を知らぬ者など居ない。


「大丈夫なのですか!? 彼をこの場に置くのは危険ではありませんか!?」

「御安心を。この拘束具はヴァンパイアの弱点である銀を使用したもの。人並み以上の力は出せません」


 沢口がわたしの腕に光るブレスレットを記者達に向けて見せる。感嘆の籠もるどよめきと共に、彼らの眼がこの手首のあたりに集中する。カチャリと鳴る黒手錠。決していい気分じゃない。


「報道関係の方々、陽が沈めば奴らも動く。ここが戦場となる可能性がある。日没までにどうかご退去願います」

「今後の彼の扱いはどうするのですか!? ヴァンパイアとは言え、閣僚の一員であった菅大臣を簡単に処断出来るものですか!?」

「それについては菅大臣、もとい菅伯爵殿がご自身の進退についてご説明致します。皆様のご質問に答える準備もあるとの事です」


 わたしはさらに一歩、前に出た。強く背中を押されたんだ。よろめいて膝を突く、この両肩を掴み押さえる手。言葉とは裏腹な手荒な扱い、このわたしに対して……こんな屈辱的な格好を強いるとは。

 見ていろ。思う通りになどさせるものか。

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