表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヴァンパイアを殲滅せよ  作者: 金糸雀
第2章 伯爵編
57/148

ACT57 奴の手下じゃねぇだろな【如月 魁人】

 結局もとの場所まで戻った俺ら。いばらが邪魔してた正面玄関な。茨の野郎。司令が正面に立った途端、ごそごそっと道を開けたもんだ。モーゼの何とかみてぇに。したらいきなり現れた高級感半端ねぇ真っ白の石畳。その所々に落ちてる黒い……葉っぱ?


 ――うわっとと……痛ってぇ……!


 なにって、葉っぱだと思ったものがキィキィわめきながら向かって来たのよ! 良くみりゃコウモリだ! 流石にすっ転びはしなかったがな? 飛び退いた先にスタンバってた茨の棘に、嫌っつーほど頬っぺた引っ掻けちまった。

 しっし! キーキー騒ぎやがってしつけぇんだよ! おらおら! 逃げねぇとぶっ放しちゃうよ? この自慢の銃でよ?


 したら奴ら、俺がホルスターに手ぇかけたとたん姫の後ろに隠れやがった。まさか、伯爵の手下じゃねぇだろな?


 だらしないわねっていつもの麗子さんなら言うとこなんだが、これがまた妙なの。あんだけ俺にいちゃもん付けまくってた女が、司令来てからひとっ言もしゃべんねぇの。さっきから俺の横、まるで生気の抜けまくった人形みてぇなカッコで歩いてやがる。なんげぇ前髪をかき上げもしねぇで。


「準備はいいかね? 魁人くん」


 司令の声に前を見りぁ、いつの間にか正面玄関。

 すげぇ……でっけぇドア。階段も壁も真っ白。白いバラとか天使の彫刻とか……なんとまあゴージャスでお上品。上流階級って奴ですか。こんな事でもなきゃあ一生お目にかかれねぇお屋敷だぜ。


「魁人くん? 準備はいいかね?」

「あ、はい。OKっすよ」


 準備。もしヴァンプが襲ってきたらの心の準備だろ?

 解ってるよ。もしそれが結弦だとしても容赦はしねぇ。決めてるからな。どちらかがヴァンプになっちまった時ぁ……ひと思いに楽にしてやるってな。


 姫の背をポンポンっと2回叩く。これは俺と姫とで決めたサインだ。ここでいい子で待ってるって言う。


 と、司令が手招きしてるぜ。ドアに近づく司令と、その後ろに従う俺。殿しんがりは麗子さん。外で待ってろって言いたいトコなんだが、庭も安全とは言えねぇからな。

 ちょっ! 俺のシャツ掴んだりして。しっかりして下さいよ! 護身術くらい使えるっしょ?


 んなことやってる一方で、司令の手がドアのノブにかかる。ゴクリと喉が鳴る。ヴァンプ野郎。いきなり飛び出してくんじゃねーぞ? 


 ……ギイィィィィィィ……


 イ……イヤな音たてんじゃねぇ! グリースくらい差しとけっての!



 だが踏み込んだ屋敷の中は、拍子抜けするくれぇ何にも無かった。いや、誰もいねぇんじゃなくて、普通にメイドさん達が「いらっしゃいませ」っつって、こっちも「あ、どうも」っつって。いやいや、普通変な顔くらいすんだろ。俺は見るからに場違いなカッコしてるし、麗子さんは貞子だし。


『ここだよ、魁人くん』


 右手のドアをちょこんと指差し、ほとんど吐息だけで囁く司令。

 なんすかその可愛らし過ぎる仕草! この非常時にやめてくださいよ! ハラにチカラ入んねぇじゃないですか!

 ここって……何だここ。ドアにハザードマーク付いてっけど。


 ≪コンコン≫


 ……ちゃんとノックするんすね。


「誰? 柏木さん?」


 答えたのは色っぽい女の声だった。どっかで聞いた気がするが思い出せねぇ。


「ええ。ただいま戻りました」

「入って入って! 丁度お願いしたい事があったの!」


 司令がドアを開ける。俺は一歩下がって壁に張り付く。ちょい様子見だ。


「麻生結弦の診察を?」

「そうよ。ちょうどいま眠ったとこ」


 お……思い出した! 佐井朝香だ! あっさり裏切ってあっち側についた女医! 

 畜生! そんなにヴァンプってもんになりてぇのか!?


「容態は如何でした?」

「ヴァンプ化はしてないけど、危うい状態よ。いわゆるサーヴァントって奴ね」


 サーヴァント。……だよなぁ。奴らに血ィ吸われて無事で済むわけがねぇもんな。


 俺は腰の銃を片っぽだけ抜いた。壁に背ぇつけたまま、二人の会話に耳を貸す。

 したらガツンと来た。うなじの辺りだ。大理石の床舐めたのは、気持ちイイぐれぇの浮遊感の後だ。 

 視界をぎるピンヒールの足首。


 そうだよ。犯人は俺のすぐ後ろに居た麗子さん。でも……なんで?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ