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ヴァンパイアを殲滅せよ  作者: 金糸雀
第1章 幹部編
32/148

ACT32 うそ! 赤ちゃん!【佐井 朝香】

 麻生が深刻な顔してPPKをこっちに渡したわ。ちょっと彼、意外にもちゃっかり者? さり気なく弾薬をポケットに仕舞ったりして。


 返された銃とマガジンをひっくり返して眺めてみる。誓ってもいい。あたしはそんな弾入れてない。大体そんなの持ってない。

 あたし、腰から予備の弾薬サックを取り出してマガジンに弾を籠めながら、そう言えばって思った。そう言えば、これを届けてくれた人が……居たわよね? 見るからに仕事出来そうで、背が高くて渋くて仕草が素敵な私好みのおじ様。そう、それはバトラー柏木! 

でも彼、桜子さんをお願いするって頼んだ本人よ? わざわざヴァンパイアに取って危険なそれを、これとすりかえる?


 そんな時、桜子さんが苦しそうに呻いたの。彼女の手と顔が白く、透き通ったみたいになってて……あたしには解った。これが「滅び」の瞬間なんだって。

 麻生ったら、そんな彼女を見下ろして……とんでも無い事をし出したの! びっくりしちゃったわ! せっかくわたしが巻いたバンデージングテープをビリビリ剥がして、血が噴き出したその傷口を桜子さんの唇の上に持って行ったんだもの! 赤い血がポタポタと桜子さんの唇を染めて、それを喉を鳴らして飲む音が聴こえて。すご……白かった桜子さんの顔色が明らかに良くなってるのが解る。ピクリと桜子さんの瞼が動いて。

 でもあたしは「え?」っと思って振り向いた。変な音がしたのよ。麻生の行動よりも気になるような、そんな音。ビタビタぴちゃぴちゃって、釣った魚が跳ねてるような?

 音の主は秋子さんのドレスだった。ぎょっとしたわ。だって……白いスカートの中で……なにかがもぞもぞ動いてるんだもの!

 大きなメロンくらいの丸い球に、胴体と手足がくっついたような……やだこれ! 人間の赤ん坊じゃないの!? どういうこと? 秋子さんが小っちゃくなっちゃった? どうするどうする? 見てみる? 大丈夫かしら。キシャアアアアーーって飛びかかって来たりしないかしら!


 でもあたしは医者。思い切ってスカートをめくる事にした。

 やっぱりそこに居たのは、可愛いらしい赤ん坊。

抱きあげて背中をさすったら、すぐに産声上げて。

 こういうことってあるのかしら。ううん、もっと普通に考えれば……お腹に赤ちゃんが居たってことかしら? お腹が大きいようには見えなかったけど、カンガルーとかコアラみたいに小っちゃく生まれて育つタイプなのかも。ヴァンパイアだし、ありかもね?

 ほらほら、大丈夫よ! ドレスの柔らかい裏地を引き裂いて身体に巻いてあげるわね? そう、気持ちいいの? いい子。お母さんは残念だったけど、あなたにはお父さんが居るわ。……あたしとは違う。

 そうだ。あそこの二人も心配してるわね? 早く見せてあげなくちゃ。


 そう思って滲んだ涙を拭き拭きそっちを見たら、なに?

 二人ともぜんぜん気にしても居なかったみたい。桜子さんったらすっかり元気になっちゃって、もう麻生に抱き付いて好き好き~てなってるし。麻生も麻生で桜子さんしか見えてない。しっかり抱き合ったまま見つめあって。だから今にも口と口をくっつけそう……なタイミングをわざと狙って後ろから肩をつついてやったの。


 その時の桜子さんの顔と言ったら! 

 あははは! 沸かしたお湯が瞬時に冷めた感じ? その口がしばらくパクパク動いてそして――


「その子……まさか……」

「ええ、そのまさかよ。秋子さんの子」





 ……二人とも、そんなに驚かなくてもいいんじゃない?

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