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ヴァンパイアを殲滅せよ  作者: 金糸雀
最終章 サプライズ編
146/148

ACT146 ざまぁ!【如月魁人】

 大先生が、うえ見上げたまま、眼ぇ閉じてやがる。「感謝」、ねぇ……。まあそういうこった。


 俺が計画を持ち掛けられたのはつい今朝方だ。沢口の野郎がまだ暗ぇうちに官邸の俺の詰所へやに来やがってよ?

「菅総理にひと泡吹かせてみないか?」なんて言うんだぜ。

「あの時の恨みが少なからず残ってるだろ?」ってさ。

 だから言ってやったぜ。「忘れた」ってな。奴ぁ奴なりに最善を尽くした。たまたまその相手が俺だっただけだってな。


 ……らしくねぇが、ほんとのこった。毎日こうしてべったり張り付いて、見せつけられたからよ。じっさい総理ってのは大変な仕事なんだな。新聞雑誌ぜんぶ読むのはとうぜん、閣議に議会、挨拶の出張、災害がありゃあ飛んでいく、なんて公務をこなす傍らで、馬鹿丁寧に地元や地方の陳情って奴を聞くわけよ。アメリカや中国の要人から電話がくる、その合間にもよ?

 ほんと、いつ寝てんだか。不平も言わねぇ。デカい事と小せぇ事を区別しねぇ。妖しい勧誘はきっぱり断る、大臣どものお誘いすらノーサンキューだ。少しでもヒマがありゃあ……家帰って家族サービスってな。清廉潔白が過ぎるきらいもあるにはあるが、俺ぁこんな奴とやり合ってたのかと思うと、な~んかどうでも良くなっちまってな。


 したら沢口の奴、それならそれでいいって言うんだ。とどのつまり、サプライズがしてぇって事なのよ。どんなサプライズだ? って聞けば、ヴァンプ達を集めて人間にしちまう計画だっつーじゃねぇか。


「……はあ。田中が首謀か。決行はいつだ?」

「急で悪いが今夜だ」

「マジで急だな。場所は?」

「麻生結弦のリサイタルの会場だよ。チケット届いてるだろう?」

「あ! あれかぁ?! 菅がやたら愉しみにしてたぜ!」

「君は総理を確実に会場に連れて来るんだ。途中で邪魔が入らないとも限らない」

「それはいいが菅の奴、頼まれごとに弱ぇからな。急用がっつってどっか行っちまうかもしんねぇぞ?」

「心配ない。午前も午後も閣議に本会議、取次を受ける暇などない。昼の休憩も他との接触がないよう引き付けておくよ」

「じゃあそこは予約しとくが、ほんとのほんとに大丈夫なのかよ」

「なにがだ?」

「あの女医、ちゃんと仕事できんだろな? しくじってヴァンプに囲まれんのは御免だぜ?」

「そうならないよう、今日という日にわざわざ決めたそうだ」

「ハロウィンに満月、ねぇ」

「その事はあちらに任せて、自分の仕事に専念するんだ。成功するか否かは君の腕にかかっている」

「腕ぇ? 演技の(・・・)かぁ?」


 直前まで気が進まなかったってのが本音だ。沢口はああ言ってるが、術式とやらが成功する確率は100%(パー)じゃねぇからな。だから菅の眼ん玉の奥確認した時ぁ心底ホッとしたんだぜ。これで司令も浮かばれるってな。

もちろん、菅に取っても悪くねぇ。……相当悩んでたからな。今の防衛大臣、実は結構なタカ派でよ? ヴァンプを兵隊として活用したらどうか、なんて言いだしやがってよ? いざとなりゃ激戦区に送り込める特殊部隊ってな。遠隔で操作できる腕輪やら、銀のチップやらを心臓に埋め込むってな。

 むろん菅は反対するわな。人権侵害も甚だしいだろ。したら奴め、ネットの掲示板やらSNSやら駆使して強引に「国民の総意」なんてもん取り付けて来やがった。同意する国民も国民だが……まあヴァンプを毛嫌いするのは当然っちゃあ当然だが……とにかくあの菅が「参ったな」なんて零してよ? 憲法何条だかを掲げても、いまいちインパクトが弱ぇとか?

 いまいち対策も十分じゃねぇ状態で、明日の本戦(本会議)、奴と真っ向勝負する予定だったのよ。


 そのヴァンプが、綺麗さっぱり居なくなっちまった。

 へっ! ざまぁ! 無い袖は振れねぇってな!!


 終わりよければすべて良し。ちょい手荒だったかも知んねぇが楽しませてもらったぜ。やり過ぎなんて思わねぇ。てめぇはそんな小せぇ人間じゃねぇ。この程度でファビョるわけがねぇからな!

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