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ヴァンパイアを殲滅せよ  作者: 金糸雀
第3章 朝香編
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ACT121 やっぱ魔物だぜ?【如月 魁人】

 ハイヒールの音カツカツさせて俺のベット脇に立った女医。またドヤされるかと構えた俺。白い手がスッと伸びてきて俺の手首を持ち上げた。思わず女医の顔見上げたぜ。その仕草があんまり優しかったもんでよ? なんだよ急にそんな真剣な眼ぇしやがって。


「そのハンター協会も曲者ね。あなたの血液からモルヒネに似た成分が検出されたわ」


 いつもの女医の声じゃねぇ。語尾が少し震えてやがる。細くてきれいな眉毛振るわしてな? ひっくり返した手の平じっくり眺めてから俺の眼を正面から覗き込むんだ。


「顔が赤いわ。脈も速いし黄疸も出てる。無理はダメ。あなたは使い捨て(ディスポーザブル)じゃない、血の通った人間なんだから」


 なにこれ。このヒトめちゃめちゃ綺麗じゃん。このドキドキも十中八九あんたのせいだよ。

 俺は掛布団を肩まで引っ張りあげながら、結弦へ向き直った女医を眼で追った。奴の脈も診るつもりなんだろ、手を取って、仰向けの結弦に覆いかぶさるようにしてかがみこむ。奴め、何処に眼ぇ向けていいか迷ってら。先生よぉ……どんだけ自慢か知んねぇけど、その胸の谷間、隠した方が互いの為だぜぇ?


「麻生君あなた、田中さんに血を吸わせたんですって?」

「どうしてそれを?」

「田中さんに云われたの。後で謝っておいて欲しいって」

「そうですか。その田中さんは?」

「ん……、一昨日までここに居たんだけど……」


 たまげたぜ。あの田中がここに居た? 意識ねぇ俺らの傍に? なんでさっさと逃げねぇで……ああ、女医か。彼女、田中の娘らしいからな。俺らよりそっちが心配だったんだろ。


「いい? いくらワクチン打ってても、新たな感染を防ぐ保証は何処にもないのよ?」

「そうなんですか?」

「そりゃそうよ。獲得した抗体量を上回る量の感染源が侵入したら、再感染の可能性は十分にあるわ」

「……すみません。以後気を付けます」

「解ればいいのよ。でももし異変を感じたらすぐに報告して?」


 いちいち頷いて顔赤くする結弦。なるほどこりゃあ……魔物だぜ? 患者の男どもがイカれるわけだ。

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