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ヴァンパイアを殲滅せよ  作者: 金糸雀
第2章 伯爵編
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ACT100 ハーフってマジ?【如月 魁人】

 危機一髪、俺は持ち前の反射神経って奴で石柱の急襲を逃れた。柱ぁグワーーンつって石の階段と地面に激突。それを尻目に俺達ぁ普段は開かねぇ正面のエントランスに飛び込んだ。

 アブねぇアブねぇ。そういやガキん頃、爺ちゃんがカーンカーンっつって斧振って、わざと俺に向けて倒した木をヒョイと避ける。んな遊びに夢中になったっけな。ありゃこん時の為だったんかな。


「魁人さん!!」


 拓斗の焦りまくった声。広間ん中ぁ……実は真っ暗なうえに硝煙やらホコリやらのせいでな~んも見えねぇ。まるで忍者が煙幕でも張ったみてぇに。その煙幕から機材ガチャガチャ言わせて飛び出して来る奴らが居たもんだ。またもやそいつらをヒョイヒョイっとかわす俺。そういやドッジボールのボールけんのも得意だもんよ。


 っておいっ!


 俺ぁ黙って通り過ぎようとしたスーツの男を捕まえた。そいつぁまるで悪戯でも見つかった子供みてぇな反応してよ?


「ボス、何処行くんだ? 状況はどうなってんだ?」

「伍長! ちょうど良かった! あの田中が地下からあの広間に!」

「やっぱ奴だったわけだ。何匹連れて来た?」

「50ほどだ。あの兵器の効き目は抜群だな! じき彼らが片付けるだろう」

「そりゃ良かった。伯爵にも効いてっか?」

「伯爵も戦闘不能だ。むしろ他の個体よりダメージを受けているようだ」

「それを聞いて安心したぜ」

「私もだ。流石の伯爵もあれには敵わんようだな」

「いや、そこじゃなくて」

「は?」


 きょとんと眼を瞬かせる沢口が俺を見る。その眼ぁいつもの沢口の眼だ。


「伯爵からサマ(・・)が取れたってな」

「何のことだ?」


 自覚がねぇってのもたち悪ぃぜ。結果オーライだがな。


「……何でもねぇ。それより田中だ。奴はピンピンしてんだろ?」

「そうだが、何故わかった!?」

「空気の盾で弾丸弾く奴だぜ? 音ぐれぇ防げんだろ」

「なるほど。どう対処する?」

「解んねぇが、気ぃ逸らすとか何とかすりゃ何とかなんじゃね?」

「いい加減だな。それでもハイランクか?」

「前もってコマけぇ計画練んのは性に合わねぇんだよ。そういう奴ほどポシャッた時にガックリ来るもんだぜ?」


 沢口が一瞬ムッとした顔しやがった。別にあんたの事言ってんじゃねぇよ?


 2本目の柱が倒れる音がした。ユサユサ来る振動と、濛々と渦巻く埃がハンパねぇ。天井と壁に稲妻みてぇな亀裂が走ってら。この議事堂本体も無事じゃあ済まねぇかもな。


「そういやあの女医どうなった? 総理は一応無事なんだろな?」


 そしたら奴ぁ、気味悪ぃうす笑い顔になってよ?

「無事を祈る必要などない。むしろ消えてもらうと助かる」なんて不気味なこと言いやがる。

「あ? 女医はともかく、総理が何だっつんだ?」

 したら沢口、俺の肩ひっつかんでぐいっと耳元に口を近づけてよ。

「良く聞け。両者ともに『ハーフ』だ」

「はぁ!?」


 ハーフ。俺達協会の人間が言う「ハーフ」たぁ、普通のそれじゃねぇぜ、人間とヴァンプとのハーフのこった。文献によりゃあ昔はそのハーフって奴がたんまり居てな? 何かしらの能力に秀で、人に比べてずる賢いだの人様に暴力振るうだの。しかもヴァンプを匿うっつー理由で見つけ次第処刑したって話だ。

 だが俺ら、んな記録眉唾物んだと思ってた。奴らはバケモンだ。俺らみてぇな血の通った生きもんじゃねぇんだ。んな奴らとの間に子供なんか作れてたまるかってな。大方、邪魔な人間を始末する根拠にでもしてたんじゃねぇの? 中世の魔女狩りみてぇに。ってのが協会の見解だったわけなんだが……沢口の野郎、大マジな顔しやがって、さっきより声のトーン落としてよ?


「気を付けろ。まだ総理付きのSPと私、及び柏木局長だけが共有する情報だ」

「待てよ……! ハーフなんて、マジで居んのか……?」

「ああ。総理は田中の実子、佐井朝香も田中の娘だそうだ」

「何だとぉ!!? 確かなのかよ!?」


 つい出しちまった大声に沢口の顔がヒクついたが、拓斗以外俺ら気にしてるもんも無ぇからよ。


「3日前に投降した柏木局長から得た情報だ。田中本人から聞いたそうだ」

「田中ぁ? おいおい……その田中が嘘ついてたらどうすんよ?」

「いや、真実だ。その頭で総理と佐井の身辺を洗った際に――」


 沢口が何かしら説明しようとし出したんで、俺をそれを手で遮った。こいつのこった。情報の網かき集めて掴んだ結果なんだろ。それをガセと決めつける資格も権利も俺には無ぇ。


「わかったぜボス。俺もその頭で動く。結弦は見たか?」

「確認出来ていないが、死亡したという情報も入っていない」

「OK。ボスは外で待ってる兵どもの指揮を頼む。俺がやられたそん時ぁ……」

「プランBだな。了解だ」


 頷く沢口に俺もニヤリと笑って見せたが……ホントはどうにかナリそうなのを必死で抑え込んでたんだぜ。

 だってそうだろ? んな身近にハーフが二人も。ってこたぁ……世間にゃマジでわんさか(・・・・)居るって事だ。あの文献は嘘なんかついてねぇ。「出来る」奴ほどヴァンプの血ぃ引いてんじゃね? って疑わなきゃなんねぇって事だ。

 ややもすりゃあ……結弦も? つか自分でも気づかねぇだけで、俺も……とか?


 地面の揺れは続いてら。星だけは満点ですっげぇ綺麗だが、庭木の枯れ枝のざわつきが尋常じゃねぇ。コルトを2丁、腰だめにして壁に寄る。あったけぇグリップの感触を確かめながら、俺ぁひとつ息吐いて、拓斗を顎で促した。グッと頷く拓斗の顔が強張ってやがる。全部聞こえてたのかもな。

 はあ……。ペロッと舐めて色が変わる試験紙でもありゃいんだがな。

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