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71話「ちょっと頑張って見ますかね」


 宿に戻る途中、背中に背負ったアルのデカい感触が俺の何かをガリガリ削っている中。

 ジュレが俺の隣に来て手を挙げた。


「ライさん。深刻な問題が発生しています」

「は? どうした?」


 普段の穏やかな表情とは違い、本人の言うように真剣な顔をしている。

 何だ? 何か問題があったのか?


「今ライさんはアルさんを背負っている訳なのですが、私たちは離れて歩いていますよね」

「まぁそうだな」

「サウレさんは普段からぴったりくっついてますよね?」

「それも確かにそうだな」

「ずるいです」


 思わず転びかけた。

 何だよ、ずるいって。


「私もライさんにくっつく権利はあると思うんです」

「……えぇ」


 意味が分からないんだが。

 どんな権利だよそれ。


「ですが今はライさんの両手が塞がっているのでイチャイチャ出来ません」

「する気もないけどな」

「なので宿に戻ったら存分にイチャります」

「じゃあボクもイチャる!」

「……うーん」


 イチャるって何だよ、というツッコミは置いといて。

 何とも言えない感じだなこれ。

 いや、さっきの詫びをしたい気持ちはあるんだよ。

 それに触れられるのも慣れてきたし、そのくらいは多分大丈夫だと思うんだけど。

 なんて言うか……ぶっちゃけ、照れる。

 見た目な美女と美少女だし。

 そういった経験はほとんど無いし。


「お前らさ、恥ずかしかったりはしないのか?」

「むしろそれはご褒美ですね」

「人目が無い所なら大丈夫!」


 おう。安定のジュレ(変態)だな。

 クレアは比較的常識があるけど。

 いやまぁ、比較対象がバグってる気はするが。


「……分かった。今回だけは受け入れよう」

「え? 良いのですか?」


 きょとんとした顔でジュレが尋ね返してくる。

 俺が断る前提で話してたんだろうけど、予想外の返事だったんだろうな。

 俺としても意外な心境だし。


「リハビリだと思えば、まぁ。お前らなら嫌じゃないし」

「嫌がるところを無理やり押し通したかったのですけれど」

「うっせぇわハイブリッド変態め」

「はぁんっ! ありがとうございます!」


 冷たい目で言うと、ジュレが自分を抱きしめて身悶えしだした。

 前から思ってたけど、そのポーズは胸が強調されるから辞めてくれないかな。

 ジュレのドレスは胸元が大きく空いてるし、背中と感触と合わさって理性ゲージが目減りして行くんだが。


「て言うかさ。ライ的にボクはアウトなの?」

「うーん。お前が一番微妙なんだよな」


 基本的には問題ないんだが、性的な事はこいつもNGだ。

 サウレに次いでマシな方ではあるけど。

 ちなみにその次はアルで、こうして密着しててもある程度大丈夫になってきている。

 ある程度、だけどな。

 確かにみんなとても魅力的ではあるんだけど、やはりルミィの変貌が頭から離れないところはある。

 なのでそういう行為は完全にアウトだ。


「じゃあさ! どこまで大丈夫か試してみよう!」

「いや、何でそうなる」

「どこまでセーフか分かってた方がお互いに得すると思うんだよね!」


 ……それはまぁ、そう、なのか?

 境界線がはっきりしてた方が俺も楽な気はする。

 それにやっぱ、負い目もあるしなぁ。


「やるなら一人ずつ試してみたら良いと思う!」

「んー。じゃあやってみるか」


 俺の言葉に二人が嬉しそうに笑う。


「クレアさん、グッジョブです」

「いえーい!」


 ジュレは控えめに、クレアは全力で。

 俺の目の前で二人は見事なハイタッチを決めていた。

 まぁ、楽しそうだからいいか。


 なんだか和んでいると、服の裾をくいっと引っ張られた。


「……ライ。私にも権利はあるはず」

「サウレもか。構わないけど、お前はいつもギリギリライン攻めてないか?」

「……ライと合法的にイチャつきたい」


 つまり普段は合法的じゃないんだな。

 自覚があるならやめてくれないかな。

 たまにライン踏み越えてくるし。


「……今日こそはちゃんとサキュバス的なご奉仕をしてみせる」

「それはアウトだろ」

「……大丈夫。未経験だけど本能的にヤれるはず」

「真昼間の往来で何をアピールしてんだよ」


 大きくため息。

 もちろん興味が無いわけでは無いが、色々とアウトすぎるだろ。

 あ、鳥肌立ってきた。


 んー。しかしアレだな。こいつらの対応にも随分と慣れてきたものだ。

 距離感バグってたりもするが、俺が嫌がることは基本的にして来ないし、一緒にいると心が安らぐ。

 それは仲間だからなのか。それともこいつらだからなのか。

 最近は自然と笑顔が増えてきた気もするし、良い傾向なんじゃないだろうか。

 とか考えていると。


「はわわっ⁉ なんですかこれっ⁉」


 不意に背中でアルが騒ぎ出した。

 良し、目が覚めたなら歩かせるか。


「おう、今宿に向かってるからとりあえず降りろ」

「全く意味がわかりませんけど降りません!」


 後ろからふにゃりと抱き着かれた。

 うわ、破壊力すげぇなこれ。

 背中で更に胸が押しつぶされてるし、何なら手で感じるもちっとした太ももの感触もヤバい。

 あ、いかん。意識したらめっちゃ恥ずかしくなってきた。

 てかアルもめっちゃ体温上がってんじ(ゃねぇか。

 恥ずかしいならやるなよ。


「いいから降りろって。そろそろ俺の心臓がヤバい」

「じゃあ後で傷心の私を慰めてくれますか?」


 傷心中なのかお前。そんな感じには見えなかったけど。


「あー……まぁ、今ちょうどそういう流れになってたな」

「え、どんな状況ですか?」

「ライさんと二人っきりでイチャイチャできるという話です」

「それは一大事ですね! 武器の手入れをしておかないと!」

「なんでだよ」


 相変わらずの調子に苦笑が漏れる。

 何があっても変わらないんだろうな、こいつ。


 何はともあれ、よく分からんが試験っぽい事をやるらしいし。

 ちょっと頑張って見ますかね。


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