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17話「さっさと飯を食いたいとこだな」


 のんびりと旅を続けること数日。

 ようやく次の目的地である港町エッガーに着いた。


 ぐるりとレンガの壁に覆われた町、その中で唯一のデカい入口には二人の門番が立っている。

 いやぁ、並んでる人多いわー。

 砂の都エッセルと同じくらい人がいるんじゃないかね。

 何せ南の大陸唯一の港だしなぁ。


 港町らしく、デカい建物と潮の香りが特徴的な町だ。

 やはり背の高い細い木が大通り沿いに等間隔に植えられていて、その下に露店がずらりと並んでいるのが遠目に見える。

 その手前。町に入るための行列は多種多様な人種が並んでいて、それを見ているだけでも面白い。


 ここから船に乗って北にある港町アスーラに行って、そこから更に北に行けば王都ユークリアだ。

 エッセルから考えたら大体半分の地点くらいじゃねぇかなー。

 なんにせよ、無事に到着出来て良かったわ。


 道中、アルが暴走して敵に突っ込んだり、サウレが暴走して俺に突っ込んだり、まぁいろいろあったけど……うん。結果良ければ全て良しって言うしな。

 細かいことは気にしない方向で行こう。

 受け流すのって大事なスキルだと思う。


「そういや二人とも船は乗ったことあんのか?」

「私は初めてですね!」

「……私は元々王都に居たから」

「お。んじゃ、アル用に船酔いの薬はあった方が良いかもなー」


 アルはそういうの強そうだけど……こればっかりは乗らなきゃ分からんからなー。

 いざ乗ってみて船酔いになったらキツいだろうし。

 ……いや、周りの安全面を考えるとアルは船酔いしてた方が良いのかもしれないけど。


「ライさん、すぐに船に乗るんですか?」

「あー。乗りたいんだけど……この時期だとすぐには難しいかもなー」


 確かこの時期はクラーケンが出るんじゃなかったかなー。

 となると上級の魔物避けが付与された船じゃないと厳しいだろうし、当然船賃も高くなる。

 護衛の依頼でもありゃ別だが、そっちはそこそこ名の売れた冒険者や専属のパーティーが優先して受けてしまうし、そう上手いことはいかないだろう。

 まぁ何にせよ、冒険者ギルドに行かなきゃ話にならねーか。


「うし。んじゃまず、飯食いに行くか。そんでギルドで討伐部位渡してから依頼見るぞー」

「私はお肉が食べたいです!」

「あいよ。分かったから落ち着け。その物騒な物仕舞わねぇと町に入れてもらえんからなー」

「その時は強行突破します!」

「するな。いいから大人しくしてろ……サウレ、こいつ見といてくれな」

「……任せて」


 両手剣に手をかけるアルを抑え、一先ず町門に足を向ける。

 門の前には旅人の行列。その一番後ろに並び、順番が来るのを待つことにした。

 あぁ、てかそろそろ玉の材料仕入れたいな。

 香辛料はここでも買えるだろうけど……火薬とか粘着玉の材料はどうかね。

 買えりゃいいが、無かったらしばらく節約だな。

 どうせ海の上じゃ大した効果もねぇけど。


 つーかよく考えたら、護衛の仕事とかサウレがいりゃ楽勝じゃねぇか?

 なんせ、海だし。雷の魔法と相性最高だからな。


 対してアルはと言うと、両手剣でぶった斬るしか攻撃手段ない以上、海の上だと俺と揃って役立たずでしかない。

 俺たちに出来るのはせいぜい海の上から石を投げつける程度だ。下手したら子どもより戦力が低いかもしれん。


「あーっと。サウレ、船旅中に何かあったら頼むな」

「……大丈夫。ライは私が守る」

「ついでにアルの事も頼むなー」

「……うん。アルは仲間だから」


 お、笑ってやがる。珍しいな。

 こいつも見た目はいいんだからもうちょい愛想良くすりゃいいのになー。

 いやまぁ、最近は笑顔も増えてきたけどな。良い傾向ではある。

 ちょっと前まではほとんど無表情だったし。

 最近だと十日に一回くらいは笑うし、見てて和むからなぁ。


 アルに関してはまぁ、最初から一貫して明るいのは良いんだが……うん。

 こいつはもう少し良識を持って欲しい。少なくとも話が通じる相手にいきなり斬り掛かるのはやめろ、マジで。

 サウレが止めなかったら大惨事だったからな、あれ。


「……おっと、そろそろ順番か。ほれ、冒険者タグ用意しとけよー」

「大丈夫です! ほら!」

「おい……お前、賞罰欄に『人類の脅威(弱)』って出てんだが」

「ねー。不思議ですよねー」

「不思議なのはお前の頭の中だよ……これ、通してもらえっかなー」


 このくらいならたぶん大丈夫だと思うんだが……最悪、夜に忍び込むしかねぇか。

 てかこいつ人類の脅威扱いなのか。納得いくけど。

 早いとこ矯正しねぇとな。


 さてさて。サウレも俺も問題はねぇし、上手くいくことを祈りますかねー。



「次のやつら、通れ!」


 しばらく待っていると、犬の亜人のおっさんに呼ばれた。

 基本的に人間と変わらないけど、頭のてっぺんに犬の耳。

 尻にはふさふさの尻尾が生えていて、顔が怖い分どことなくシュールだ。

 さてさて。行くとしますかね。


「はいよ。お疲れさんです」

「……ん? お前、どこかで会ったか?」

「え? いや、初対面だと思いますよ?」


 ……あー。たぶん、どっかで『龍の牙』見たことあんだろうなーこれ。

 さすがに俺単体だと分からないみたいだけど。

 地味だからなぁ、俺。昔と装備も違うし。


「そうか……あぁ、通っていいぞ」

「ありがとさんです。行くぞお前らー」


 俺に意識が向いたおかげでアルの冒険者タグは見られずに済んだようだ。

 よし。最難関突破。依頼受ける時は俺のタグかサウレのタグ見せれば良いし、大丈夫だろ。



 町の中に入ると、より一層騒がしくなった。

 大きな通りなのに、そこら中で人が行き来していて忙しない。

 それに色んな人種がいる。

 獣の特徴を持つ亜人やエルフ、ドワーフなんかも居る。

 あっちの青肌は魔族だし、ちっこくて羽が生えてんのはフェアリーだ。

 世界中の種族が入り交じってるのに違和感が無いのが港町ならではだな。


 さて、飯屋だが……お。大通りにオウカ食堂あんじゃん。

 今日はあそこで弁当買うか。


 この弁当屋、世界中に店舗があって、そのほとんどの店員が元孤児だったりする。

 中々に珍しい店で少し値段が高めではあるけど、その分味は美味い。

 そして店員が頑張っている姿を見ると、なんだか微笑ましくて心が和む。


 常に危険と共にある冒険者にとって、心の癒しはかなり重要だ。

 その為に生きて帰ろうと思えるからな。


「こんちはー。肉の弁当はあるか?」

「焼肉弁当と唐揚げ弁当ならありますよ。オークソテーは売り切れちゃいました」

「そりゃ残念だ。んじゃ唐揚げ一つと……お前らはどうする?」

「私は焼肉で!」

「……唐揚げ」

「だそうだ。頼むわ」

「はーい。少し待ってくださいねー。唐揚げ二つと焼肉一つ!」


 中に向かって注文を伝えるのを見ながら大銅貨を三枚渡す。

 宿や他の食堂ならそこそこの量を食える金額だが、折角だし美味いもん食いたいからなー。


「はい、お待たせです!」

「おう、あんがとさん」


 弁当を受け取り、そのままギルドに向かう。

 あそこなら座って食えるし、依頼も見れて一石二鳥だ。


 あーでも、さすがに腹へったなぁ。もう昼過ぎだし。

 さっさと飯を食いたいとこだな。


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