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8話①  信じる

「殺された……?」


「……っ」


 驚嘆の声を上げる彩さんに、俺は静かに頷いた。


「い、今は関係ない話でしたね……すみません話を脱線させちゃって」


 しかし、さっきよりも重たい空気にしてしまったことに気づいた俺は、この話を早々に切り上げた。


「っ……」


 母さんが殺された日のことを思い出したからか、俺は胸がギュッと締め付けられるような感覚に襲われ、少し息が上がる。


(彩さんにも美奈さんが死んだことを思い出させているのに、話を聞きに来た俺がこんな調子じゃだめだな……)


「……そういえば彩ちゃん」


「なんですか?」


「さっき言ってた、えーっと……多重人格? ってどういうことなのかな?」


 胸を押さえる俺を見た翔さんは、今の俺が彩さんから話を聞きだせるような精神状態ではないと判断したのか、自ら彩さんに聞き取りを始めた。翔さんの気遣いが、とてもありがたい。


「そのままの意味ですよ。楓お姉ちゃんは解離性同一性障害……つまり自分の中に違う人格がいたんです」


 聞いたことはあるが、身近なものではない多重人格という症状……彩さんの呼び方的に、『楓さん』という人が主人格なんだろう。


「なるほど、人格は合わせて何人いるの?」


「2人です」


「それが幸人が会った美奈ちゃんってことか……美奈ちゃんの人格が出てくるのには何か条件とかがあったりするの?」


「それが……本人にも分からなかったので、なんとも言えません」


「なるほどね~」


「お姉ちゃんを診てくれていた先生が言っていたんですけど、多重人格の多くの人は入れ替わる原因が分からないらしいです」


 彩さんから話を聞けば聞くほど、多重人格は日常生活に支障が大きい病気なんだということが分かる。


「じゃあ、幸人と会った時に美奈ちゃんの人格が出ていたのには特に理由はないのか……」


「あ、あの」


 翔さんからの質問に淡々と答えていた彩さんだったが、翔さんが言ったことに何か気になることでもあったのか、話を(さえぎ)った。


「お姉ちゃんと会ったってどういうことですか……? さっきも言ったようにお姉ちゃんは……」


 神社で起きたことを知らない彩さんからすれば、既に亡くなっている美奈さんと俺が会ったなんて、訳が分からないはずだ。


「あー……そういえばなんで俺たちが彩ちゃんに話を聞きにきたか説明してなかったか……幸人話せそうか?」


「っ……だ、大丈夫です。僕が説明します」


 神社での出来事は流石に俺の口から話した方がいいと思ったんだろう、翔さんは話を俺に振りなおした。さっきよりは落ち着くことが出来た俺は、少し言葉を詰まらせながらも、神社で幽霊になった美奈さんと会ったこと、そして、美奈さんが俺とクロに助けを求めてきたことを、彩さんに説明した。

 俺の説明を聞いた彩さんの最初の反応は……


「え? 宗教勧誘でもしにきたの……?」


 めっちゃ怪しまれた。


「ごめん、私神様とかそういうの信じてないから」


「いやいやいや! そうじゃなくて!」


 その結果、彩さんが急にそっけなくなってしまった。さっきまでの親身な表情をしていた彩さんとは打って変わって、険しい顔をして、荷物をまとめて教室から出ていく準備を始めた。


「じゃあ何? 急に来た男の子が神様の使いで、6年前に死んだお姉ちゃんが幽霊になったとかいう、2つの意味わかんないことを信じろって……無理があるんじゃない?」


「うっ……」


(何も言い返せない……)


 科学が発達しまくっているこの現代で、超常現象的な神様と幽霊っていう単語を怪しむ彩さんは至極真っ当だ。さっきまでとは明らかに違う目で俺のことを見てくる。


「それじゃあさ、会いに行ってみる?」


 そんな彩さんを見て、翔さんが1つ提案をした。


「会いに行く……? 誰にですか?」


「神様だよ~」


「え?」


「幸人、遥ちゃん呼んできてくれ」


「分かりました」


「……え?」


 キョトンとする彩さんを置いて、俺は遥を迎えに教室を出た。


ーーーーーー




 説明するよりも見てもらった方が早いということで、俺たちは彩さんを連れて4人で神社にやってきた。

 さっきまで降っていた雨は学校を出るころには止んでいて、時刻も18時前だからか、空には薄っすらと白い月が見えた。


「というわけで、これが神様です。僕はクロ様って呼んでます」


「よろしくなのじゃ~」


「急展開すぎるでしょ!」

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