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私が憧れの職場に入れたのは、賢者のお祖父様のごり押しでした  作者: うる浬 るに
私が憧れの職場に入れたのは、賢者のお祖父様のごり押しでした
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07 魔法師団、初めてのお友達

 一日過ぎてだんだん寮にも人が増えてきました。現在たぶん男女あわせて八十人ほど見かけています。


 女子は私より後に誰も引っ越してこないし、いまだに同じ部署の人は見つかっていません。でも王都にお屋敷を持っている貴族の方は寮には入団式の前日入りする人が大半らしいのでこれから来る人の中にはいるかもしれませんね。


 日程で言うと明日が配属先への挨拶で、明後日が入団式です。午前中に挨拶に行きたいので、明日の朝、食堂で見つからなければ一人で行動することに決めました。


 同室の人もまだ来ていません。と言うか女子寮はほとんど空いています。入寮している女の子たちは何故か部屋にこもっていて出てこないのでお話もできません。


 お茶を飲もうと給湯室にお湯を取りに行ったら先客がいました。人に会うなんて珍しいですね。


「こんにちは」

「え、こんにちは、え、どなた?」


 赤い髪の女の子が、すごくびっくりしてます。


「私はイリディアナです。驚かしてごめんなさい。お茶を飲もうと思ってお湯を取りに来ました」

「ああ、そうですよね。ごめんなさい。女子寮で話掛けてくる子なんていないから」

「そうですね。みなさん部屋にこもっていて、見かけても何故か逃げられちゃいますよね?」

「あぁ、もしかして、あの騒ぎ知らないのかしら? ギャリアム伯爵家の令嬢が来て平民と同じ空気を吸いたくないから部屋から出るな、反抗したら制裁するって脅していったのよね」


「ええ? そんなことがあったんですか? 」

「三階一番奥の部屋に入居していた伯爵家の令嬢なんて、この部屋を使うから今すぐ出て行けって荷物を放り出されて可哀そうだったわ」

「同じ伯爵家なのに? それでどうなったんですか?」


「管理人さんに怒られて退散していったわ。私もそうだけど、寮に入ると今パン代が払えなくても、お給金をもらってから後払いで食べられるの。それ目当てで早く入寮してきた平民と貧乏貴族があの騒ぎで怯えているのよ。自己紹介まだだったわね、私はクローリ子爵家のフランシア、フランて呼んでね」


「私はイリーって呼んでください。あ、でも私は平民なので、馴れ馴れしくしたら、まずくないですか?」

「うーん、そうねえ、うるさい令嬢がいる時は気を付けた方がいいかもしれないわ。私は気にしないけど、イリーさんが目を付けられちゃうと寮で暮らしにくくなるものね。でも、同期なんだし仲良くしたいわ」


「はい。お願いします。ところでフラン様は部署はどちらですか?」

「魔道具部よ。貴族の間では知れていることだけど、家が貧乏子爵なのでお金を稼ぐために魔道具を作っていたの。魔法師団に入れれば結構いいお給金がもらえるでしょ、それで試験を受けてみたのよ。だから様付けされるような身分でもないからやめてね」

「そうなんですか」


 貴族と言ってもいろいろ事情があるんですね。


「イリーさんはどちら?」

「魔法防衛部です。」

「魔防部……すごいわね……今年の魔防部は大変かもしれないけれど応援するわ」

「はい、ありがとうございます」


 同じ新人同士、困ったことがあったらいつでも相談してと、フランさんはとてもいい人でした。同じ部署じゃないのは残念ですけど、仲良くしてもらえて嬉しいです。


 それにしても、男子も女子もすでに問題発生中ですね。気を引き締めていきましょう。




 魔防部へ挨拶に行く日の朝、朝食用のパンを買いに食堂へ行くと……。


「馬鹿馬鹿しい、どこに座ろうが私の自由だ」

「ですがジルコート様、平民と同じテーブルに着くのは権威が落ちるのではないでしょうか」

「私は知識を深めるために話がしたいんだ。魔法師団で働く者が、貴族だ、平民だ、そうした区別をすること自体、くだらない」


 何やら揉めているみたいですね。今日は部屋か談話室で食べることにします。と思いながら何気なく渦中の男の子を見た際、目が合ってしまいました。


 その男の子は一瞬目を見開いたかと思うと


「そこのお前、魔法防衛部だろう? 私もそうだ。午前中に挨拶にいくからお前もついてこい。私はスイルバー伯爵家のジルコートだ」


 その名前、どこかで聞いたことがあると思ったら、従兄弟のジルコート様でした。私たち、水色の髪と紫の瞳が同じですね。初めて会ったけどびっくりしました。お爺様も一緒なので伯爵家の血のせいですかね? ジルコート様も私のことは見た目で気づいたのかもしれません。


 ジルコート様はスイルバー伯爵家の三男です。お兄様のお一人は同じ魔法師団に、もう一人は騎士団にいらっしゃったと思いますけど、一生会うことはない人たちだと思っていたので、実はあまり伯爵家のことを知りません。


 それにしてもお爺様、ジルコート様には私が魔防部に入ることを話していて、私にはジルコート様のことを教えてくれないなんてひどいです。次にあったらお仕置きです。


 私が返事をしなかったので

「では二時間後に庁舎の前だ」と勝手に決められてしまいました。


 食堂にいた人たちはみんな唖然としています。さっきジルコート様とお話しされていた貴族の方には何もしていないのに睨まれてしまいましたし。


 一緒に挨拶に行く人を探していたけど、ジルコート様となら一人の方が気が楽でした。買ったパンの紙袋を握りしめながらトボトボ女子寮に戻っていくと階段でフランさんに会いました。


 今さっきあった出来事を従兄弟の部分は隠して話しました。私が魔防部だってのはバークさんたちが知っているし、寮に来てからジルコート様の耳に入ったってことにしてもおかしくないですよね。


「魂が抜けたようだったから何事かと思ったわ。ジルコート様、やっぱり魔防部だったのね。噂では聞いていたのだけど。イリーさんは可哀そうだけど、もう一人有名な方が魔防部だと思うわ。私は頑張ってとしか言えないのだけど」


「そうですね。頑張るしかないですよね」


 それにさっきのジルコート様の雰囲気だと、嫌がられてはいないようなので、もしかしたら仲良くやれるかもしれません。


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