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私が憧れの職場に入れたのは、賢者のお祖父様のごり押しでした  作者: うる浬 るに
私の能力が試されているのは、賢者の孫馬鹿のせいらしい
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40 気になっていたこと

 ダニエルさんが教えてくれると言うなら、ものすごーく気になっていることがあるんです。

 忘れようと思っていても、どうしても頭の片隅から離れないほど。


「あの」

「何? そんな真剣な顔して」


 聞いてしまったら、もっと気になってしまうかもしれない。それでも、悩んでいるよりはいいかもしれません。諦めがつくかも。


「あの、黒紋虎の双子はどこにいるんですか? できたら会いに行きたいんですけど」

「子虎のこと?」

「騎士団に渡すって言ってましたよね。王都で育てているんじゃないんですか?」

「ごめん、それはわからないや。ヴェルリッタで騎士団には渡したんだけど、騎乗の訓練はこっちですると思うから、もしかしたら、もう獣舎にいるかもしれない。でも、小さかったから、誰かが人に慣れるまで預かって育てている可能性もあるんだよね。どうなんだろう」


 できることなら、その()()()()()に私がなりたかったです。


「騎士団の獣舎って一般人は入れないんですか?」

「それは無理。一般人はもちろんだけど、魔法師団の、しかも新人の君が騎士団の立ち入り禁止区域に入るのは、ちゃんとした理由がない限り不可能だよ」

「あの子たちのいるところって、立ち入りできない場所なんですか?」

「あれでも魔獣だからね。騎獣として手懐けたっていっても、万が一のことを考えて何重もの柵と檻で厳重に管理しているみたいだよ。だから、入れる可能性があるとしたら、仕事で呼ばれるのを待つしかないんじゃないかな。イリーはちょうど、おあつらえ向きな魔法を使えるんだから、まったくないとは思わないけど」


 結界魔法が必要な機会を待てと? 

 それはすなわち魔獣の脱走ということで、騎士団の不祥事を魔法師団に頼むとなったら、そうとうな状況ですよね。

 その依頼が新人の私に来るなんて考えられないんですが。


「あり得ませんよ」

「そう思うんだったら、コネを使うとかね。上に無理を言わせれば何とかなるかもよ」

「コネ……」


 一瞬、お祖父様の顔が浮かびましたが、急いで頭から追い出しました。その切り札は何があろうと使うことはできません。


「コネなんてありません」

「そう? あとは、騎獣隊の隊士とお近づきになるとかだね」


 立ち入り禁止区域に入れてもらえるほど、誰かと仲良くなれってことですよね。それもそれができる偉い人と。


「それこそ無理ですよ」

「そうかな。頑張れば一人くらいは釣れると思うけど?」

「いえ、もういいです。気にはなりますけど、そういうことならすっぱり諦めます」


 あの子たちが騎士団で健やかに育つことを祈ることにしましょう。そう自分に言いきかせて我慢してますが、やっぱり黒紋虎の背には乗ってみたかったです……。


「他には? 聞きたいことが山ほどあるんだよね?」


 ダニエルさんがそう言うので、お言葉に甘えてもうひとつ疑問に思っていることを、聞いてみることにします。


「あとはコードネームのことです」

「はい?」

「ダニエルさんみたいな特殊任務をしている人だけがコードネームを使うんですか? それともブネーゼ魔山にいったら全員でしょうか? もし、私も必要なら、それは自分でつけることが出来るんですか?」

「ちょっと待って、コードネームって何のこと?」

「ダニエルさんのコードネームはマーガレットじゃないんですか。ブネーゼ魔山でヴェルリッタ領の方たちにそう挨拶していましたよね」


 自分でつけたのなら、なぜマーガレットなんだろうって思ったんですよね。花が好きだからとか、理由があるとは思うんですけど。


「ああ、あれか。あれはコードネームじゃなくて合言葉だよ。山には他国の諜報員とか、犯罪者が紛れ込んでる時もあるからだけど。今は、女性名を名乗って、それに返事をする者は頭の文字を揃えて返すって決まっているからなんだ」

「だからダニエルさんが()ーガレットって名乗って、相手の方が()リアって応えたんですか」

「その通りだよ」

「なるほど、それで謎が解けました」


 ヴェルリッタ領の方のマリアも、あんな筋骨たくましい方が、何故にそのコードネームなのって不思議でしたから。


 実は、コードネームが必要だったら、自分は何にしようかなって考えていたんですけど、恥ずかしいので内緒にしておきます。


「その合言葉を使っているのは今だけだから、次にイリーがブネーゼ魔山に行った時は変わっているかもしれないからね」

「わかりました」


「あとは?」

「山ブドウはすっぱいんですか? それとも渋いんですか」

「山ブドウ!? さっきから思ってたのと違うことばかり聞かれるんだけど……」

「すみません、それも気になっていたので……誰も食べていないので美味しくないのかなって」

「渋いよ。後味が悪いから、知ってる人は手を出さないんだよね」


 ということは、ダニエルさんも気になって食べたんですね。

 私もあの時オルガさんがやってこなかったら、口に入れていたかもしれません。

 美味しくないなら、助かりました。


「山にあんなになっているんですから、美味しかったらよかったのに。残念ですね」

「そうだね。っと、話の途中だけど呼ばれてるみたいだ。ごめん、また今度ね」


 私が背中を向けていた解体現場の方を見ると、ダニエルさんに向かって手を振っている人がいます。


「はい。ありがとうございました」


 ダニエルさんを見送った後、マグニーズ副部長がやってくるまで私はその場で、建設部の方たちの作業をぼーっと見ていました。


 もっと突っ込んだことを質問したとても、ダニエルさんは答えてくれたかもしれません。

 でも、誰が監視官だったかとか、ダニエルさんの素性とか、別に知らなくても困ることでもないし、いいかなって。


「イリー、官舎にもどるよ」

「はい、マグニーズ副部長」




 それから数日後のことです。ダニエルさんに黒紋虎の双子の話をしたからでしょうか。たまたま偶然ということもありますが。


「命名権ですか?」

「候補のひとつとしてな。実際に使われるかは魔獣次第だそうだが、黒紋虎を捕まえたジルとイリーには資格があるそうだ。どうする?」

「私はそういったことが得意ではないので辞退します」

「そうか。イリーはどうだ」

「私が名前をつけてもいいなら、是非」


 魔獣に名前をつける時は、呼んでみて反応がいいものにするそうです。

 あの双子はいまだに良い名前が決まっていないそうで、私にも話が回ってきました。


 自分用のコードネームを考えていたので、いくつか候補はあります。


 私が挙げた名前に、どちらかが反応してくれるといいんですけど。


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