31 魔法の活用方法
予定通り私たち赤縞チームは食事中に次の予定を決めてました。
ちなみに本日の夕飯はゆでたジャガイモにバターと塩を掛けたもの、それとお肉と野菜を串にさして焼いたものが二本。それに少し辛味のあるたれが掛かっています。
「頼むなメルン」
「ええ、これから考えてみるわ」
結局、この前と同じように指導官から聞いたヒントを元にしてメルンローゼ様に探す場所を決めてもらうことになりました。
彼女に丸投げで申し訳なく思いますが、いきなりメルンローゼ様に頼らなくなったり、意見を聞かなかったら、こちらが疑っていることに気がつかれるとオルガさんが言っていたので、前回と同じ流れで話が進んでいます。
ダニエルさんのことがあったので、誰かが負傷した場合の対応方法なんかも話がでました。
「山中で戦力が欠けることは、危険性が増すことも十分わかったからな。俺たちはこの四人しかいないんだし、今後は相当な理由がない限り別れて行動することはやめた方がいいだろう」
「そうだな。もし誰かが怪我をしても、あの時のようにそこに留まることはやめたほうがいい。それについてだが、我々が担いで運べないほどだった場合は、イリーの負担にはなるが、防御壁を担架代わりに使えないだろうかと思っているんだが」
ジルさんの提案にみんなが驚きました。
私ですらそんな使い方を考えたこともなかったので。
「それなら、あとで試させてください」
「そうだな。イリーの魔力だけで運べるかはちゃんと確認しておいた方がいいな。誰かの補助が必要なら、その方法も調べておいた方がいいだろうし」
他にも効率のいい方法を各自考えることにして、話し合いは終わりました。
それはボールを探すための良いアイデアはもちろん、チームメイト同士の連携についてだけではなく、ジルさんが提案したような、今まで試したことがないことでもです。何かの役にたつかもしれませんし、有効な手段が思いつたら、ブネーゼ魔山での行動が楽になりますからね。
そのあと人のいない場所まで移動しました。
私の作った防御壁を担架として、人を運んでみることにしたのですが……。
「ダメです。私自信が持ち上げられない重さになるとびくともしません」
地面と平行にした防御壁の上にオルガさんが腰を掛けると、防御壁はその場から移動させることができなくなってしまいました。
代わりにその辺にあった小石を乗せてみると問題なく私の意思通りに動かせたので、重量によることが判明。
想像では簡単にできそうだったのに、実際には難しいことがわかりました。
「前後に二人で手を掛けて動かすこともできないのか……いい方法だと思ったんだが上手くいかないものだな」
「すみません」
「イリーが悪いわけじゃない。どの魔法も万能なわけではないからな。そのかわり別の使い方を思いついた」
「別の使い方?」
担架としてはダメでしたけど、他に何か役立つことがあれば嬉しいです。
「防御壁を足場にすれば、高い場所でも簡単に移動出来そうな気がするのだが?」
ジルさんの考えは、人ひとり乗れるくらいの防御壁を一枚出して、それを階段みたいに使うってことみたいです。
しかし、私には防御壁を一度に一枚しか出せません。上方に移動するということは乗る場所を発生させても、次の一枚を用意するために乗っている防御壁を消去することになります。
そして再び足が掛けられる場所を用意。ものすごいスピードでそれを何度も繰り返す必要がありますね。
私が短時間で魔法陣を描ければ、身体能力の優れた人なら何もない空間でも防御壁を使って移動ができるのではないか、ということらしいのですが。
「やってみますので、どなたか試してみてください」
「だったら俺がやる。万が一失敗して高い場所から落ちたとしても、俺ならどうにかできるからな」
ロープを片手にオルガさんが立候補しました。
「では、いきますね」
「こっちも準備はできてる」
私は魔法陣を描いて、一枚目の防御壁を地面から三十センチほど離し、平らにした状態でその場に出しました。
オルガさんがそれに乗ること出来たのですが、続けて出した二枚目には移動できませんでした。
「一枚目が消えてから二枚目が発生するまでのロスタイムが長すぎるな」
「防御壁をオルガさんが見えるように色をつけると、その分時間がかかってしまうんです」
今度は防御壁だけを発生させるやり方で試してみたのですが、そのたびに次はどこに現れるのかを私が正確に教えないと足を踏み外す恐れがあります。
こうやって時間に余裕がある時はそれでも問題ありませんが、ブネーゼ魔山で使用するとなると使える場所が限られてしまいそうです。
「可視化しないどこに足場があるのかわからないから危ないのか。でもそうすると二枚目が間に合わないから落下してしまう……思ったより簡単ではなかったな。てきとうなことを言ってすまなかった」
「確かに難しすぎる。でも、やり方次第だとは思うんだよな」
私の魔法の活用方法を皆さんで考えてくださって有り難い反面、結局役には立ちそうにないので申し訳ないです。
「これってイリー次第ではないかしら」
それまで黙って見ているだけだったメルンローゼ様が口を開きました。
「はい。私がもっと早く魔法陣を描ければいいんですし、なんだったら、二枚同時に防御壁を出すことができれば解決する話だとは思っているので、これから頑張ろうと思います」
「それもそうだけど、板に乗る方が足元を気にしすぎるから動けないんじゃないのかしら」
「メルン、それはどういう意味だ」
「イリーがオルガの動きに合わせて次の板を出せば解決する話ではなくて?」
「それはオルガさんの行動を先読みしろということですか?」
「その方が早く動けると思うのだけど」
「確かにそうだが……」
「それこそ難易度が高すぎるだろう。それに俺に限って言わせてもらえば、イリーの魔法で足場を出さなくても移動できる手段はあるからな」
ロープを使って縦横無尽に動けるオルガさんはそうですよね。
「イリー、悪いけど上空に細長い状態で見えるようにして防御壁を出してくれないか」
オルガさんが空を指さしながら私にそう言ったので、地上から五メートルほどの場所に細長く防御壁を出現させます。
すると彼はあっという間にそれにロープを掛けてぶら下がりました。
そして山の中で枝を使って移動していたように、ここでも空中を移動して見せました。
「ほらな。俺ならこれだけで十分機動力が上がる」
すとんと元居た場所に戻ってきたオルガさん。なるほど、使い勝手は人それぞれということですね。
「さっきメルンが言っていた方法だけど、それはジルとならできるんじゃないか」
「ジルさんと?」
私には、オルガさんがダメで、ジルさんなら可能な理由がわかりません。
「だって、二人は双子か兄妹……とは挨拶はされていないから、何かわけがあるんだろうけど、それでも近い血族なら他人よりは呼吸を合わせやすいんじゃないのか?」
今まで何も聞かれませんでしたけど、オルガさんもやっぱりそう思っていたんですか?
メルンローゼ様はジルさんが双子ではないことも、妹がいないことも知って入るでしょうから、どう思っているのかわかりませんが。
「今更だが、そんなに似ているのか私たちは?」
「そうだな。兄妹と言われても疑う必要がないくらい似てる」
また、ジルさんに渋い顔をされてしまうかと思ったんですが、意外にも彼は「そうか」と言っただけで嫌そうなそぶりはしませんでした。
「メルンローゼ様の言う通り、私が先読みして防御壁の魔法を使えるようになれば、誰かの補助はできるようになりますよね。それも頑張って練習してみます」
この方法、絶対に覚えて損はないです。
新人研修会に来てからまだ数日だというのに、魔法の活用方をいろいろ知ることができています。
ダニエルさん、メルンローゼ様、本当に有難うございました。




