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私が憧れの職場に入れたのは、賢者のお祖父様のごり押しでした  作者: うる浬 るに
私の能力が試されているのは、賢者の孫馬鹿のせいらしい
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29 貴族

 新人研修会二日目の今日。

 あまりにもいろいろありすぎて、思考が追い付いていかないというのに、最後の最後で、なんとメルンローゼ様と二人っきりになってしまいました。


 私はいったいどんなスタンスで接したらいいのでしょうか。

 チームメイトとして親しくする……のは馴れ馴れしいと思われてしまうかもしれません。

 ここで公爵令嬢のお世話をする侍女として接するのも、魔法師団の仲間としてはどうかと思います。


 三メートル四方の狭い空間の中で、万が一メルンローゼ様の機嫌を損ねてしまったら、嫌な雰囲気の中、お互い朝まで我慢することになってしまいますよね。


 かと言って私だけ勝手に別の場所で寝るわけにもいかず……。


 どちらにしても朝までは二人っきりで過ごさなければいけないので、とりあえず、彼女の反応を見ながら当たり障りのないのようにしようと思っていました。


「疲れたから、私はもう休むわ」

「はい。でしたら私も」


 与えられた部屋へと移動したあと、メルンローゼ様はすぐに自分でマットにシーツをセットしてブランケットを頭からすっぽりかぶってしまいました。


 それを見て私は、魔道具の明かりをひとつだけ残して、あとは全部消しました。

 部屋の中は、ほんのり明かりが灯る状態になったので薄暗いです。


 このまま何もすることはないし、私も用意した寝具の上に静かに転がりました。


 このマットは直接床に敷いているというのに、ふかふかしていて寝心地は悪くありません。ブネーゼ魔山から帰って来た魔法師団の方たちの疲れがしっかりとれるように、こういった備品も充実しているのかもしれませんね。


 私は満足しています。

 ですが、たとえふかふかだとしても、あのメルンローゼ様が私の隣で同じように床に寝ていると思うと、正直落ち着きません。


 初対面の時は鼻で笑われましたから、選民意識と気位が高い方だと思っていたので、ベッドではなく、床に直に敷いたマットに、文句も言わず寝てしまうなんて、ちょっと驚きしました。


 今は仕事中だからでしょうか、公爵令嬢だと言うのに、偉ぶることもなく、魔法師団の規律はちゃんと守る真面目な方のようですね。


 方向感覚の能力のすごさも相まって私の中で好感度が上昇中です。寮とは感じが違いますから、取り巻きの方たちの手前、上からものを言う態度はわざとなんでしょうか。


 そもそも、なぜサメア様やメルンローゼ様のような上流階級のご令嬢が魔法師団なんかに入ってこんなことをしているのかというと、我が国は、近年血統よりも能力が重視されているからなんです。


 貴族とは言えども、国に何の利益をもたらさない家は立場が弱くなるだけではなく、社交界からの風当たりが酷く、爪弾きにされるんですって。


 魔法師団も騎士団も実力主義なので平民でも出世できますし、組織の中核に食い込んで、一番重要な地位を担うことも増えているそうです。


 そのため、身分にこだわる貴族家には焦りがあって、国の防衛部分を平民に握られないように、司令部を貴族だけで独占しようという思惑があるようですよ。


 だから、貴族家の子どもたちは、魔法使いや騎士として団で上層部に入ることが何よりも誉であると教育されているんだそうです。


 そのことは、サメア様のような方が魔法師団に入団したことが不思議で、疑問に思っていた私に、ムームが説明してくれました。


 サメア様のような家族に大事に育てられたお嬢様でも、魔法師団にいたら危ない仕事をすることもあり得るんですもの。


 今は、貴族内はもちろん、国の中枢で発言力を持つためにも、子息令嬢は、国家の要として重要な組織の、魔法師団、騎士団で力をつけることが必須みたいですよ。


 そう言っても、サメア様の場合は、お兄様方から反対されていたらしいので、ご自分の意思で入団をされたみたいですけど……。

 ムームの場合は若い世代の人脈作りだと言ってました。


 結局その夜、メルンローゼ様と二人っきりになってからは、ほとんど言葉を交わしませんでした。

 私はそのまま眠りについたのですが、もしかしたら、メルンローゼ様が空気を読んであえて口を利かなかったのかもしれません。

 サメア様と仲良くしている私と、必要以上に絡むのは彼女も望んではいないでしょうから。


 ふかふかマットのおかげか、思いの外ぐっすりと眠ることができた私は、次の朝、すっきりとした気分で目覚めることができました。


 メルンローゼ様が起きてから、一緒にオルガさんたちがいる四階に移動して、今日は午前中はここで計画の練り直しをすることに決まったので、割とのんびりとしています。


 現在はダニエルさんが離脱しているため、私たちのチームは四人になってしまいました。しかし、昨日が異常事態だっただけで、ジルさんの実力を確認した先輩たちは納得できたでしょうから、もうあんな無茶なことは仕掛けてこないと思います。あとはもともとの課題だったカラーボールを探すだけ。


 結局、闇雲に山の中を歩き回っても時間の無駄だということで、今日は入山せずに、研修施設に向かうことになりました。戻れば昨日の分もあわせてヒントが二つ貰えますからね。

 それを頼りに残りのカラーボールを探す予定です。


 ダニエルさんの話では、私たちが一番過酷な研修を受けているそうですが、他のチームがどうなっているのか興味もあります。

 だから、戻ったらさっそく情報収集しようと思います。


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