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私が憧れの職場に入れたのは、賢者のお祖父様のごり押しでした  作者: うる浬 るに
私の能力が試されているのは、賢者の孫馬鹿のせいらしい
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22 魔法の効率化

「木が邪魔……」


 倒れた樹木が行く手を塞いでいて、なかなか前に進めません。これは思った以上に大変です。


 自分でやったことなので、元凶の私が愚痴なんて吐いたらダメですね。オルガさんにとても申し訳ない。


 恐縮していたのですが、そんな私を無視して彼はロープと鎖を使って、こんな動きにくい場所でも、横倒しになった大木の上を容易にすいすいと移動していました。


 そんな器用なことができない私は、できるだけ木々が重なってできた隙間を選んで進んでいます。ですが、どこに魔物が潜んでいるかわからないので、周りを気にしながら慎重に歩いているため、時間のロスになっているのは間違いありません。


「イリーは魔法の才能はすごいけど、体力つけないとまずいかな。君がブネーゼ魔山に派遣されたらまずは身体づくりからになりそうだね」


 どうしても、大木を乗り越えないといけない場所で、息を切らしながら木にしがみついていた私を見て、ダニエルさんが話し掛けてきました。


「そうですね」


 言われた通り、今日一日で嫌って言うほど想像と現実の違いを思い知らされました。

 道がない山歩きは体力をごっそり奪います。蔓のような草に足は引っかかるし、水分の多い植物の上はすべるし、うっかりしていると枝がばしーんって顔に当たるんですよ……。


 チームの皆さんと歩いていた時は、あまり気にならなかったので、ちゃんと歩きやすい場所を選んでいたんだと思います。

 自分だけで行動しなければいけなくなってから、それがわかりました。


 私が憧れていて、いつか同じようになりたいと思っていた魔法少女だったら、この程度の障害物は簡単に消去していると思うんですよね。

 頑張れば真似ができるんじゃないかと自惚れていましたが、『結界魔法で範囲を固定して、炎魔法ですべて灰にして、念のため水魔法で鎮火させる』小説の中で魔法少女はその流れをサラッとやってましたから絶対に無理ですね。


 だって、実際それをやろうと思ったら魔法使いが三人必要じゃないですか。

 あ、お祖父様なら可能かもしれませんけど……。あと、ムームも?


「イリーがもっと機敏に動けるようになればすごい戦力になりそうだね。君ひとりの魔法だけで、数えきれないほどの魔獣を消したのを見た時は、さすが……だけあるって思ったよ」


 ダニエルさんが言葉を濁した部分は『顧問の孫』に聞こえましたけど? なぜそれを知っているのでしょうか?


「いいもの見せてもらったお礼に、僕もちょっとだけサービスしてあげるよ。イリーは向こうに進みたいんだよね? ちょっとそこで待ってて」


 大木によじ登ったあと、反対側にずり落ちた私にダニエルさんが確認してきました。そうですと肯定すると、彼は杖をその方向に向けて構えました。続けて魔法陣を描き始めましたけど、何をするつもりなんでしょうか?


「ほいっと」


 五秒ほどで魔法陣は完了したみたいです。ダニエルさんの声が聞こえたと思うと、私たちの行く手を阻んでいた、目の前にある大木の幹が突如砕けました。


「すごい……」

「まっすぐ進む道を作るために穴を開けただけだよ。イリーだって結界で同じことができるよね」

「私の場合、道を作っているうちにたぶん魔力が尽きてしまいます」

「そうか、それも改善しなきゃね」

「はい」


 話をしながらも、ダニエルさんはどんどん先へと道を作っていきます。


 ちなみに黒紋虎の双子は、オルガさんから網を借りて、それを袋状にして入れてから、ダニエルさんの背負い袋の上に乗せ彼が運んでいます。かなり窮屈だとは思いますが、子虎たちは怯えているのか二頭でくっついていて、暴れずにそこで大人しくしています。


 大木に穴を開けながらある程度進んだところでダニエルさんが足を止めました。そして私のことをじっと観察しています。


「イリーは魔法の使い方がもったいないんだよね。人より魔力が多いからかな、あまり節約とか考えたことがないのかもしれないけど、無駄遣いは良くないね。仕方ない。イリーのチームメイトとしてアドバイスしてあげるよ」

「アドバイスですか? ありがたいです。是非、お願いします」

「最初にあの結界を張った時、イリーは一番大きな魔獣まですっぽり入る大きさで高さ決めたでしょ?」

「はい、一頭も取りこぼしたくなかったのでそうしました」

「それって、すごく効率が悪い。魔獣の息の根を止めるだけなら全身を入れる必要なんてないよね。例えば一番大型の魔獣だとして高さを二メートルと考えたら、その半分で十分効果があるはずだよ」

「高さを半分にですか?」

「生き物が身体を半分を失ったら、生きていられるとは思えないからね」

「言われてみれば確かにそうです」

「そうしていたら、同じ魔力量を使って倍の広さを処理できたんだ。上手くやれば高さを三分の一や、四分の一にしても可能かもしれない。野生で生きている魔獣が四肢を失ったら即死ではなくても先は見えているでしょ」

「はい。そんなこと今まで思ってもみませんでした。ちゃんと考えれば効率的な方法があるんですね」


 ムームも、何が最適かちゃんと考えて魔法を使わなきゃいけないって言ってましたっけ。


「と言うことで、頑張って引き続き魔獣を倒してね。僕はイリーを応援しているから、後のことは考えずに力いっぱいやっちゃっていいから。皆が驚く姿を見るのが、もう、すごい楽しみだよ」

「楽しみ……ですか?」

「あ、えっと、有能な新人の確保はどこも課題になっているからね。魔法師団の先輩たちはすごく喜ぶんじゃないかなってこと……」


 私から目をそらしたダニエルさん。

 なんだか誤魔化しているっぽくて、怪しい感じがするんですが、今は魔獣の討伐に関して全力で頑張らなければいけないので、あえて突っ込みはしません。


 ダニエルさんからいただいたアドバイス通り、まずは地面から五十センチほどの高さで薄く、そしてできるだけ広い範囲に結界を張りました。


「待って待って、ストップ。それじゃ、ダメだよ」


 何故かダニエルさんに止められてしまいました。私はアドバイス通りにしたつもりだったんですけど?


「できるだけ広い範囲を一度に片付けたいのはわかるけど、そこに人間がいないって保証はないよね? 巻き込む可能性を考慮していなかったでしょ」

「あ、すみません。確かにそこまで考えていませんでした」


 私はもう一度、自分の目で見て把握できるサイズで結界を張りなおしました。


 確かに周りをしっかり確認しないといけませんね。オルガさんは……反対側にいるので大木が倒れても問題ないと思います。あとは私たちが避難する場所があればいいのですが……。


「言ったよね。僕が守るものについては責任を持つって」


 ダニエルさんはすぐに足元に穴を掘りました。それは私たちが座ればなんとか収まることができるほどのサイズです。


「万が一があるといけないから、ほら、結界を圧縮する前に穴に入っちゃって」


 私はダニエルさんと一緒に穴の中に移動して万全な態勢にしてから結界を圧縮して、さっきと同じようにその穴に防御壁で蓋をしました。


 再び大きな激突音と振動を身体に感じましたが、これはどうしようもありません……。

 でも、もしかしたら、私が知らないだけで良い方法があるかもしれませんから、あとで知恵を絞る必要がありそうですね。


 そうやって、何度となく結界、圧縮、穴で待機を繰り返し、私は魔獣を逃がさずに討伐するため、あたり一面の樹木をも切り倒していきました。


「もう、すごいと言うか、清々しいと言うか……山が禿げちゃった」


 破壊尽くした自然を見ながら、ダニエルさんは何故かとても楽しそうです。


 雰囲気からして、呆れている感じはしません。

 とりあえず、減点されたものが少しでも挽回できたらいいのですが。


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