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私が憧れの職場に入れたのは、賢者のお祖父様のごり押しでした  作者: うる浬 るに
私の能力が試されているのは、賢者の孫馬鹿のせいらしい
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20 私たちに課せられた試練

「冷静になったらいろいろ合点がいった。説明もほとんどなく俺たち新人がブネーゼ魔山に入ることになったのはチームの中に監視官がいるからなんだな」

「そこは勘違いされると困るけど、全部のチームにいるわけじゃないよ。って言うか赤縞チームが特別だと思ってもらっていい。他のチームはほとんどが南側にいるんだ。あっちは事前に魔法師団が周辺の魔獣の討伐をして安全を確保してある。だから対魔獣戦では問題が起こることは滅多にないはずだからね。新人研修のために、今は意図的に魔獣を追いやって、南側、中央部、北側の順で危険率が高くなってるよ。その中で北側にいるのは君たちだけだけどね」


「俺たちだけがこんな危険なことをやらされているって言うのか?」

「うん。でも、新人研修会の中ではだけど。今は関係ないことだけど、ブネーゼ魔山に駐在することになった団員、それは騎士団も含めてだけど、もっと酷い試練を顧問から受けている。だから、危険だって言ってもこんなの序の口だよ」


 そう言いながらダニエルさんが私の方に視線を向けました。


 顧問――それはお祖父様のことでしょう。ダニエルさんの意味ありげな態度。私がその顧問の孫だと知っているということでしょうか?


「その顧問が言ってたんだけど、団員の生存率を上げるためには実力に見合った研修を受けさせないと意味がないんだって。だから君たち新人もレベルに合わせて難易度を上げているんだ」

「そうだとすると、そのメンバーに自分が選ばれたことを本当は喜ぶところなんだろうな」


「そうだよ。実力があるって認められたってことだからね。まあ、今回は先輩たちが妙に張り切っていたから……見返すつもりで頑張ってみてよ。それで、何かいい方法は思いついた? 本当はこんな話をしている時間もないんじゃないのかな?」


 他人事のようなダニエルさん。彼はもう監視員としての役目だけを果たすつもりなのでしょうか。


「俺にはこれだけの頭数を仕留める手段がない。せいぜい一度に討伐できるのは多く見積もっても五頭が限界だ。ジルがいればどうにかなったかもしれないが……」

「あっちはあっちで苦戦していると思うよ。吹っ飛ばしていくなんて言っていたけど、魔法を当てたら、そのすべての魔獣のとどめを確実にしなきゃいけないんだからね。もし、そのまま強行突破をしていたら、向こうでも関係者の誰かが止めに入って僕と同じように説明していると思う。だから、君たちと同じで、後処理をしている最中かもしれない」


 私たちの周辺のように、意図的に集められた魔獣の中、魔法で吹き飛ばしたすべての生死確認をしながら進んでいるのであれば、ジルさんたちの帰還は望めそうにありません。


「もし、同じように指導されているとして、ジルさんとメルンローゼ様にはダニエルさんが無事だったことは伝わっているのでしょうか」

「僕だったら教えない。こっちの心配がなくなる分、余裕ができちゃうからね」


 だったら、この場を一刻も早く片付けて、二人と合流して心労を取り除かないと。


「オルガさん……聞いてほしいことがあるんですが」

「何かいい方法が見つかったのか?」

「いい方法かどうか……私にはなんとも言えません。間違いなくオルガさんに負担がかかることだと思いますから」

「俺に負担?」

「はい。それが可能か、オルガさんに判断してもらってもいいですか?」


 丸投げするみたいで心苦しいのですが、私の魔法が有効かどうかも重要ですが、その後の処理も含めてオルガさんに間違いなく迷惑が掛かることなので、彼の承諾がない限り私は動くことができません。


「わかった。ここから挽回するためには、どんな手段でも使いたいところだが、ダニエルが種明かしをした今、ここで危険を冒したり、一か八かの賭けに出るような真似は愚の骨頂だろうからな。慎重に、そして真剣に考える」

「お願いします。その前にダニエルさんに聞きたいことがあるんですけど」


「僕? 何かな?」

「ダニエルさんが手を出せない範囲は魔獣の討伐に関してだけですか? それとも、ブネーゼ魔山を下山するまで、いっさい力を貸してはもらえませんか?」

「どういう意味?」

「私が魔力の枯渇で動けなくなった場合、その後、申し訳ありませんが、身体を運んでいただくことは出来ませんか?」

「ああ、全力を出すってことか。まあ、チームとして僕一人分の戦力がなくなったことで君たちにはハンデがあるんだから、そのくらいは手を貸してもかまわないよ」

「ありがとうございます。では、私の魔法についてお話します」


 私は簡潔に魔法でできること、それによって起こる問題を二人に伝えました。


「それで、イリーの魔法で確実に仕留められる範囲はどのくらいだ?」

「ここから目に入るくらいは試したことがありますから、問題ないと思います。その後は、今、どれくらい魔獣が集まっているのかによります。私の魔力が枯渇するのが早いか、この魔獣の集団を消すことができるかは、すみませんが不明です」

「消すか……実際見てみないとわからないが、イリーの魔法で目に見える範囲の魔獣が全滅するのであれば、万が一、イリーが動けなくなったとしても俺一人で地道に討伐できる可能性は十分ありそうだ。もちろん、その時はダニエルがイリーの面倒をみてくれるんだよな?」

「うん。そのくらいはいいよ」

「この子たちもお願いしてもいいですか?」


 私は黒紋虎の双子を両手で抱き上げ、ダニエルさんの目の前に差し出しました。


「僕が守るものについては責任を持つよ。任せてもらってもいいから、君たちはこっちのことは気にせず存分に討伐したらいいからね」


 ダニエルさんは子虎たちを私から受け取ると左わきに一頭を抱え、もう一頭を左肩に乗せました。

 空いた右手には杖を持ち軽く振っています。それは、魔法陣を描いているわけではなく、素振りをしているだけのようです。


「イリー、おまえにとびかかりそうな魔獣は俺が討伐する。自分の魔法だけに集中していいからな」

「わかりました。では始めます。結界を解きますけど、大丈夫ですか?」

「ああ」

「平気だよ」


 私はより多くの魔獣を一度に巻き込める角度や範囲を確認してから、左手で自分たちを囲っていた結界を解き、そして素早く、目の前に新たな結界を出現させました。


 さあ、これからは時間との戦いです。

 より早く、より多く、魔獣を片付けることに集中しなければ。


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