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私が憧れの職場に入れたのは、賢者のお祖父様のごり押しでした  作者: うる浬 るに
私の能力が試されているのは、賢者の孫馬鹿のせいらしい
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15 子虎の保護

「あっちもけりは付きそうだ」


 ジルさんが言うように、黒紋虎と銀狼の戦いも相討ちで終わりそうな気配です。傷だらけの黒紋虎は立つのもやっとのような雰囲気ですが、それでも最後の一頭になった銀狼の首筋に噛みつきとどめを刺しました。


「黒紋虎が勝ったの?」

「いや、そうでもなさそうだ」


 私たちが見ていると、二頭の大型魔獣が同時にドスンと倒れ、戦いは終わりました。周囲には何頭もの銀狼が倒れています。

 肉食獣同士が争うこともなくはありませんが、割りと珍しいことのようです。今回のように黒紋虎を餌として群で襲っていた銀狼自身が全滅するなんてこともあるわけで、わざわざ危険を冒してまで強敵を相手に選ぶなんて、本当なら本能で避けると思うんですよね。だから、黒紋虎がもともと怪我か病気で、弱っていたところを狙われてたのかと思っていました。


「あ、子ども?」

「黒紋虎だね」


 力尽きた黒紋虎の元に二頭の子虎が草むらから走り出してきました。どうやら子どもたちを銀狼に狙われて、親虎は守るために戦っていたようです。

 倒れたまま動かなくなった母虎に向かって、子虎たちはクークー言いながら、頭を擦り付けてたり、顔をなめたりしています。


 親を失った双子の子虎が、これからブネーゼ魔山で生きていけるとは思えません。可愛そうだとは思ってもあの子たちも魔獣です。そう思って気持ちを切り替えようとしていたその時。親子の元に、再び銀狼が姿を現したのです。

 この一頭は今までどこかに隠れていたのでしょうか。


「あ、ダメッ」

「ギャンッ?」


 子虎たちを狙って牙をむいたその銀狼に向かって、私は思わず結界の魔法を使ってしまいました。閉じ込められた銀狼は、飛びついた姿のまま、その場で動けなくなっています。


「ちょっと待ってろ」

「オルガさん?」


 私が魔法を使ってしまったので、あの銀狼は絶対に討伐しなければいけません。たとえそれが攻撃魔法ではないとしても、その掟だけは絶対です。


 オルガさんは枝にロープをかけて、ぶら下がりながら穴の向こう側へスーッと簡単に渡っていきました。

 さっき穴に落ちたのは、銀狼を誘い込むためにわざとだったみたいですね。


 その後、オルガさんはロープを金属製の鎖に持ち替えて黒紋虎たちの元へと歩いていきました。子虎たちがウーウーと威嚇していますがそれは無視して、銀狼が入っている私が掛けた結界のにぐるぐると鎖を巻き付け始めました。


「イリー。せーので結界を解除してくれ」

「わかりました。オルガさんは危なくないですか?」

「大丈夫だ。じゃあ行くぞ。せーの」


 オルガさんの掛け声で私は結界魔法を解除しました。すると、オルガさんが用意していた鎖がグッと締まり、そこにいた銀狼へと巻きつき、あっという間に拘束が完了。


「ジル、俺ではとどめはさせない。頼む」

「それはいいんだが、銀狼相手では私でもそれなりの魔法を使わないと無理だ。山火事のことを考えるとさっきの方法が一番いいんだが……」

「また、僕が穴を掘るよ。イリー、悪いけど向こう側に行くために橋を作ってくれないか?」

「はい、どうぞ」


 私が防御壁を橋のように穴の向こう側まで掛けると、ダニエルさんは強度も確めていないのに、怖がりもせずその上を歩いて銀狼のそばに行ってしまいました。

 ジルさんとメルンローゼ様と私もそのあとを追います。


「ねえ、この子虎たちって連れて帰ったら騎獣にできるんじゃないの? メルンどう?」


 ダニエルさんの言葉で、さっき騎士団が大狐を捕獲しようとしていたことを思い出しました。

 黒紋虎も騎獣にできるんでしょうか?

 もし可能なら、すごく強くて格好ですよね。

 私も乗ってみたいです。


「そうね。この子たちは幼獣だし、たぶんまだ大丈夫だと思うわ」

「だったら、捕まえてもいいよね。オルガたちはどう思う?」

「こんな機会はなかなかないんだろう?」

「ええ、黒紋虎の幼獣なんて私も初めて見たわ」

「とりあえず捕獲しておくか、邪魔になったらその時に置いていけばいいしな」

「そいつらが危険じゃないなら私も構わないぞ」


 オルガさんとジルさんも特に反対ではないようなので、子虎たちの保護が決まりました。


まずは、銀狼を先程と同じ流れで退治して、ダニエルさんは子虎たちに近づきました。


「はい、捕まえた」


 ダニエルさんが、親の身体から離れずに、それでも身体の下に隠れようとしていた子虎たちをそっと抱き上げて、私とメルンローゼ様に一頭づつ渡してきました。


 ウーウー言っていて少し抵抗はしていますが、この子たちはまだ生まれたばかりなのか、牙も爪も武器にはほど遠く、凶器にはなりません。その姿は大きな子猫のようでとても可愛いです。


「ふわふわで暖かい……」


 このままこの双子を置いていけば、未来はわかりきっています。魔獣の子どもではありますが、皆さんが連れて帰ることを賛成してくれて本当に良かったと思っています。


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