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私が憧れの職場に入れたのは、賢者のお祖父様のごり押しでした  作者: うる浬 るに
私が憧れの職場に入れたのは、賢者のお祖父様のごり押しでした
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04 引っ越し

 入団式があと三日と迫ってきました。


 私が寮に持っていく私物は少なく、最低限の生活用品と服以外はお爺様に買ってもらった小説が数冊ほどなので、荷物は旅行カバンひとつです。もともと王都に住んでいて、それほど距離がある訳でもないので歩いて魔法師団の寮まで行くことにしました。


 相変わらず私に甘いお爺様は、馬車で送ると言ってきましたが賢者に送迎させるなんて、間違いなく目立つから絶対に嫌です。それに私たちの関係はできるだけ伏せておいた方がいいようなので、魔法師団では赤の他人を装うようにお願いしました。お爺様がいじけないよう、それはそれは丁重に。




「一年は寮生活なんだってな。休みの日には帰ってくるのかよ」

「そんなこと、仕事を初めてみないとわかんないよ」


 家を出たところで私が唯一ため口で話をしている、幼馴染のユアンから声をかけられました。見送りに来てくれたようです。


「本当に行くんだな」

「お父さんみたいなこと言わないでよ。私の夢がかなったんだから、一緒に喜んでくれてもいいんじゃない」

「魔法防衛部だろ。親父さんも心配なんだよ。おまえ魔法はすごくても、うっかりしてるところがあるからさ」

「今さら心配なんて無用ですよーだ。誘ったのに試験受けなかったのユアンでしょ」

「俺にだって夢があるんだよ」

「だったらお互い自分の夢のために頑張ろうよ。それにそれを応援するのが友達ってものだよ」

「――――そうだな。まあ、頑張って行ってこい。何かあったら相談にこいよ」

「うん。わかってる。行ってくるね」


 ユアンもお爺様の教え子でした。だから魔法の腕は優秀なんです。だけどユアンの夢は町の魔道具修理工だから、魔法師団の試験は受けませんでした。


 私は一人っ子でしたが、ユアンとは姉弟みたいに育ったので、本当は一緒に魔法師団に入ってくれたら嬉しいなって思っていました。だけど、押し付けるわけにはいきません。


 昔から何かと面倒を見ていたので、逆にこっちの方が心配なんですけど。


 まあ、すぐそこですから時間ができたら顔を見に来ようと思っています。




 この街は四層構造で出来ています。

 中央にそびえ立つ白石造りの荘厳で美しいお城は、『煌く王冠』と名がついており、王族の皆様の居住地です。その周りに貴族街が輪のように形成されていて、そしてその貴族街の外側を取り囲む形で行政府地区があります。行政府地区は西側に騎士団の施設、東側には魔法師団の庁舎が連なっています。 

 そのあと一番外側に平民街と続き、上空から見ればほぼ円形状に王都は広がっているそうです。


 王都はそれぞれの町の間に町同士を隔てる壁が存在します。安全性の確保のため許可証がなければ中へ入ることができないのです。私はお爺様の馬車で貴族街にある図書館までは何度か来たことがあるのですが、この地区は通り過ぎただけでした。


 実技試験の時は馬車で運ばれただけですし、一人で平民街より内側に足を踏み入れるのは今日が初めて。

 魔法師団から送られてきた自分の許可証兼身分証を出す時はとてもドキドキしました。


 ありがたいことに魔法師団の身分証があれば図書館にも入ることができます。

 しかし図書館に行くのであれば、貴族街に入る必要があるんです。もうひとつ壁を通り抜けなければいけないのですが、大通り以外を歩き回ったり、あまりひどい身なりだと通報されてしまうそうなので、気をつけなければいけません。


 いま身につけている挨拶回り用の服以外、平民の服しか持ち合わせがないので、どんな時でもマナー違反にならないと言われている魔法師団専用のローブが早く欲しいです。


 大通りは王都の外壁から一直線にお城まで続いているので迷うことはありませんでした。案内書の地図を見ながら、大通りから路地を入って、魔法師団の寮を発見。


 魔法師団の寮はレンガ造りで王都ではよくある物ですが、大人数を収容するためか、三階建てのとても大きな建物でした。


 今日からここが我が家ですね。一人前の魔法師になれるよう一生懸命頑張りたいと思います。


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