06 チームメイト
「これから配る用紙には、十八チームのどこかに君たちの名前が記載されています。それを確認して、それぞれのチームカラーのリボンを職員から受け取り、チームごとに集まってください」
早速私たちは、受け取った用紙に目を通しました。
「残念だね。みんなバラバラだよ」
「わたくしは知らな人ばかりよ」
「私は……」
言葉に詰まったのは、同じチームにジルさんとメルンローゼ様の名前が載っていたからです。
二人の実力は新人演習会で知っていますから、チームメイトとしては文句のつけようがありません。
しかし、サメア様と仲良くしてもらっている私のことをメルンローゼ様が実際にはどう思っているのかわからないので、かなり不安です。
寮で初めて会ったときは、平民だと鼻で笑われて相手にもされませんでしたけど、これから一週間近く仲間としてやっていかなければいけません。他のチームメイトは名前からして男子なので、女子二人の私たちが、お互い存在を無視しあうわけにもいかないと思います。
もう一人女の子がいれば、お任せもできたのにと、どうにもならないことを、ふと、思ってしまいました……。
「ジルは面倒見がいいし、メルンも……」
「ムーム……そこで口ごもらないでくださいよ」
「ごめん、メルンはいい子なんだけど、今はあたしともあまり話をしてくれないからさ……」
「メルンが相手でも、イリーならきっと大丈夫よ。貴女を嫌う人はいないと思うの」
サメア様、ありがとうございます。でも買い被りすぎですよ。
二人にいらぬ心配を掛けさせてはダメですね。
「たぶんですね、このチームでブネーゼ魔山に入るんですから、チーム分けをした職員の方たちも何か考えがあるんだと思うんです。だから、大丈夫だと思っています」
始めから苦手だって決めつけてしまったら、メルンローゼ様にも失礼ですしね。
「なにかあったら、あたしに相談して。力になるから」
「はい。その時はお願いします」
「では、リボンを貰いに行きましょうか」
カンナさんに声を掛けられて、私たちは自分のチームカラーのリボンを配っている職員のところへ分かれて行くことにしました。
話がわからないカンナさんには申し訳なかったです。
「なぜおまえと一緒なのだろうな」
「ですよね……」
ジルさんも疑問に思っているようです。
ざっと名簿を見たところ、衛生部以外は、基本的に同じ部署の人が、同じチームにならないようなので、魔防部の私たちが一緒なのは腑に落ちません。
ただ、得意魔法がジルさんは炎系で私は防御系なので、魔防部とはいえ、能力が全く違うから、出来ることがかぶっているわけではないんですよね。
「あら、あなた……」
メルンローゼ様もリボンを取りにきたので、チームカラーのリボンを手にしている私に気が付いたようです。
顔を見て眉間にしわを寄せたから名前だけではわからなかったんでしょう。この方が私になんて興味を持つわけありませんからね。
「このたびチームメイトになりました魔防部のイリーです。よろしくお願いします」
「そう……」
メルンローゼ様はプイっと横を向いてしまいました。同じチームで本当にすみません。
「一、二、三、四。俺で五。これで赤縞チームは全員集まってるな」
やって来た男子が人数を数えて確認しています。
私がメルンローゼ様に集中していたせいで、いつの間にか後ろに二人もいたことに気が付きませんでした。
赤縞チームとは私たちのチームカラーのことなんです。今手に持っているリボンも赤と白の縞々模様。どこのチームか一目でわかるように、数日間これを目立つ場所につけて生活します。
たいてい、首か腕に縛り付けるみたいですけど、髪に括り付けても構わないと配っていた人が言っていました。
私はふつうに首に巻こうと思っています。
「各チーム、メンバーはそろいましたか? 名簿に丸印が付いている者がその班のチームリーダーです。全員の確認が出来たら、リーダーは職員から予定表を受け取ってください」
どうやら、チームごとにやることが違うようですね。さっきチーム分けの表を見て、衛生部だけは同じ部署の方が一緒になっているなと思っていたんですけど、その方たちは救護班と炊き出し係りになるようです。
隣にいた水色チームがその人たちで、早速今夜の食事作りのために、皆さんで厨房の方へ移動していきました。
「俺たちの課題はブネーゼ魔山でチームカラーのボールを集めることらしい。それは五個あって、山で魔獣の討伐をこなしながら、どこかに置いてあるものを探しだす必要があるようだ。
「魔獣の討伐数は多い方がいいのか?」
「いや、それは課題として指定はされていないな。出会った魔獣を狩ればいいだけのようだ。ボールの在りかは一日ごとにひとつのヒントをもらえるようだが、いち早く集め終わったチームにはボーナスとして金一封が出るそうだぞ」
私にとってボーナスはとても有難いんですけど、上流貴族のジルさんとかメルンローゼ様にはあまり魅力的な話ではないかもしれません。
「もちろん一番を目指す」
「私も誰かに負けるのは嫌だわ」
心配しなくても、二人は負けず嫌いのようでした。
「君は大丈夫?」
リーダーであるオルガさん(名簿に書いてありました)が私に確認してきました。
「あ、はい。私はボーナスが欲しいので」
「あはは、僕もだよ」
思わず本音を言ってしまいましたが、もう一人のチームメイトの建設部のダニエルさんが笑いながら同意してくれました。
「よし、とりあえず目標は全部集めきるのは絶対で、それも一番を目指すってことで、これから計画を立てるぞ」
「異議なしだ」
「私もよ」
「僕はみんなにあわせるよ」
「頑張ります」
そうして、私たちの研修が始まりました。




