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私が憧れの職場に入れたのは、賢者のお祖父様のごり押しでした  作者: うる浬 るに
私の能力が試されているのは、賢者の孫馬鹿のせいらしい
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04 ヴェルリッタ領

 いったい何の騒ぎでしょう。

 この人の多さは。


 予定地に馬車が到着したのですが、ここは最寄りの町からかなり外れている土地柄だというのに、たくさんの人々が私たちの到着を待っていたのです。ざっと見ても百人以上はいると思われます。


 新人の研修程度にこんなに盛大なお出迎えがあるとは思っていなかったので少し驚きました。でも、皆さん顔つきが険しいから、歓迎って感じでもありませんし、集まっている人たちは魔法師団の方たちなのでしょうか?


「あれは、ヴェルリッタ領の方たちではないかしら。なんとなく見覚えがあるわ」

「馬鹿だよねえ。誰とは言えないけど……」


 ムームが含みのある言い方をしていますので、ヴェルリッタ領で何かあったのかもしれませんね。


「それは私が聞いてもいいことですか?」

「うん。サメアが言う通り、あれはうちの魔法使いと騎士団の連中なんだけどさ……」

「ムームに会いに来たんですか?」

「たぶん違うよ。他に目的があってここまできているんだと思うんだよね……イリーは知っていた方がいいのかな……うーん」


 さっきから、珍しくムームがはっきりものを言いません。地元ということもあって、何かあるんでしょうか。


「お嬢!」


 遠くからムームに声を掛けてきたのは父くらいの男性です。他の人と一緒にすごい勢いでこちらに向かって走ってくるんですが、やっぱりお目当てはムームだったみたいです。

 でも、いったいどうしたんでしょう。


 私たちはコテージに入る前に取り囲まれてしまいましたので、ここから動けそうにありません。

 ヴェルリッタ領の方たちの雰囲気からして緊急事態かもしれませんが、ムームだけを残していくわけにもいきませんよね。他の新人の方たちは続々と移動しています。どうしたらいいんでしょうか。


 でも、新人研修会の指導官の方たちも何も言ってこないんですが? なぜでしょう?


「好きにさせているのは、たぶん、面倒くさいんだよ。うちの連中は戦闘集団なんて呼ばれているから、関わりたくないんじゃないの。きっと、あたしがどうにかすると思ってんだよね」


 そんなことでいいんですか、魔法師団の先輩方?



「おい、爺の孫はどいつだ」


 爺の孫? 


「あたし、これでも仕事中だから」


 ムームが私の前に立ち、自分の背中で私を隠しました。それでぴんと来たのですが、『じじいのまご』それは、爺がお祖父様で、孫は私? ではなくたぶんジルさんのことでしょう。


「お嬢、教えてくれよ」

「だから、仕事中だってば」

「あれだけ自慢してたんだから、顔くらい見てみたいよなあ」

「おう、あの爺、俺らなんて足元にも及ばないって言ってたからな」

「あんたたちが、その子の顔を見るだけで済ますとは思えないから、絶対に教えないし、いい加減にしないと父と魔法師団の上層部に言いつけるよ」

「なんだよ、けちくせえな」


 ムームってヴェルリッタ領のお嬢様ですよね。なんだかすごい扱いされてませんか。うしろで驚いていると、こっちをのぞき込んでいた男性と目が合いました。


「ふーん。なるほどね」


 その言葉でムームがその男性の方を向きました。


「この子は違うから。賢者様と同じ色合いだからって勘違いしないで。いい機会だから、今皆に伝えておくけど、彼女は平民だからね。それに私の親友でもあるから、変はことをしたら絶対に許さないよ」

「おお、怖い怖い」

「俺たちはお嬢と敵対する気なんかねえよ」


 そう言いながらも、私を見るヴェルリッタ領の方たちの目は鋭すぎます。お祖父様、いったい何をしたんですか……。


「おい、あっちにもう一人水色の髪がいたのに、おまえらがお嬢に構っている間に、中に入っちまったじゃねえか」

「うそだろ!? そうなると、お嬢の方はおとりだったのか、やられた」

「だいたい、爺の孫は男だろうが」

「そうだった」


 ヴェルリッタ領の方たちは騒ぎながらそっちへ移動していきました。


「これからジルは大変だろうな……でもさ、もとはと言えば賢者様がいけないんだから、あたしはしーらないっと」


 話の内容からして、お祖父様がジルさんのことを自慢したんだと思いますけど、あの剣幕を見ると、その言い方がまずかったんでしょうね。


「あたしたちも中に入ろうよ」

「そうですね。行きましょうサメア様」

「ええ。ムームは相変わらず皆さんと仲がいいのね」

「え?」

「わたくしも始めは驚いたのだけど、あの方たち、ムームのことを認めていて、一目置いているから、同等に扱っているのですって。ただの令嬢だったら臣下としては振る舞うけれど、彼らは話なんてしないそうよ。ブネーゼ魔山で、ムームが指揮をとっているときは従順なんですって」

「それは大袈裟だよ」

「わたくしはムームのお兄様からそう聞いているわ」

「そうなんですか」

「まあ、うちは力が正義だと思ってる戦闘好きが多いからね」


 あの人達を従わすことができるなんてムームはやっぱりすごいです。



 やっと移動することができたので、私たちが一番大きな建物内に入ると、まず最初に部屋割りの表を渡されました。

 ひとつのコテージには二段ベッドのある小さな部屋が四室あり、八人で使うようです。

 建物自体はサメア様とムームが一緒だったので安心しました。個室の相手は教育部の方のようです。名前を見ても私には覚えがない方でした。ですが寮ではすれ違っているかも知れませんね。


 心配していたサメア様はムームと同室でした。たぶんこれは、他の方たちにも配慮した結果なのでしょう。

 サメア様やムームと一緒に狭い空間で過ごすなんて、二人のことをよく知らない人たちにとっては、緊張してしまって、休まるはずがありませんもんね。


 このあとすぐに夕食の準備に取り掛からなければいけないのですが、ここまでくる間に脱落した方がいるのでチーム分けの最終調整をしてからになるそうです。

 荷物を各自部屋に置いてきてから再度集合します。


 諸注意とこれからの予定を聞いた後で、私たちが大型棟の建物から外に出てみると、すでにヴェルリッタ領の方たちはいませんでした。


「やっと、追い払ったんだよ。きっと」


 ムームが皆さんに、私のことを平民だと説明してくれたので、お祖父様のことで絡まれることはないと思いますが、彼らのあの勢いだと、もしジルさんが会ってしまったら大変そうです。


 本当に、何をしたんでしょうか、お祖父様は?


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