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私が憧れの職場に入れたのは、賢者のお祖父様のごり押しでした  作者: うる浬 るに
私の能力が試されているのは、賢者の孫馬鹿のせいらしい
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03 サメア様とメルンローゼ様

 とうとう旅立つ日がやってきました。


 早朝、わざわざお見送りに出てきてくれたフランさんに行ってきますと挨拶をしてから、私たちは迎えの馬車に乗り込みました。


 この馬車は乗合馬車と一緒で幌が付いていません。もちろん座席にはクッションもないので、乗り心地がいいとは言いがたいです。

 そのことは事前にムームから聞いていたので、小さめのブランケットを用意して、お尻の下に敷いています。

 それに、雨が降ってきたら、各自の雨具でしのがなければいけないし、貴族家の豪華な馬車しか乗ったことがないサメア様は大丈夫かと心配していましたが、風景を眺めながら楽しんでいます。案外平気みたいですね。


 中には貴族家のお嬢様で体調が悪くなったといって脱落した方もいらっしゃたみたいですが、そういった人は、遠征には不向きなので、場合によっては、部署を移動させられちゃうこともあるみたいですよ。


 馬車ではサメア様、ムーム、私の順で座っていて、ムームが要所々々で見所を教えてくれたので、狭い馬車の中でも私は観光気分で過ごせて良かったです。


 実はサメア様のことで、ムームに確認したいことがあった私は、休憩で下車した時にこっそり聞いてみることにしました。食事のあと、部署ごとに集められので、今ならサメア様に聞かれる心配はありません。


「私、気になることがあるんですけど」

「ん? 何?」

「ブネーゼ魔山のチーム分けで、サメア様とメルンローゼ様が一緒なることはあるんでしょうか」

「ああ、そのこと。たぶんそれは大丈夫だと思う。ブネーゼ魔山に入る以上、最初から問題のある同士を一緒にすることはないと思うんだよね。危険だし」

「だったらよかったです。サメア様はつらいでしょうし、メルンローゼ様も困るでしょうから」

「そのこと、サメアに聞いた?」

「はい。一応」

「あの事件のせいで、サメアは一時期魔法が使えなくなっちゃたんだ。でもさ、おかげって言ったら変だけど、そのあと、もっと高度な魔法が使えるようになったから、何が幸いするかわからないよね」

「あ、そうか。それで納得しました。昔はサメア様も攻撃魔法が使えたんですね」


 ショックで魔法が使えなくなるなんて。それほどつらいことがあったってことだけど、それって戦闘時とかだったら、すごくまずいですよね。もしブネーゼ魔山で私がそんな状態になったら、すべて結界魔法頼みなので、無事でいられる自信がありません。


「違うよ? もしかして詳しいことは聞いてない?」


 違う? サメア様は魔法のせいでって言ってましたけど。


「私が知っているのは結果だけです。でも意味がわからなくて……。それもサメア様がお話してくれるのを待った方がいいんですよね」

「うーん。あの件をサメアが喋ったなら、詳細はあたしが教えても大丈夫だと思うよ。あのね、サメアはもともと治癒魔法の特化型だったんだ」

「治癒魔法ですか? 今はご自分で時間魔法の特化型だって言ってましたよ」

「サメアの場合、言い方の問題なんだよね。別に今だって治癒魔法って名乗ってもいいんだけどさ」


 だから、公爵令嬢でありながら、お尻が痛くなるような馬車でも平気だったんですね。実はご自分で治療していたのかもしれません。


「サメアが使える魔法はね、時間を進めたり、巻き戻したりできるのは知っているよね。範囲は極わずかだけどさ」

「はい。骨格標本づくりに役立つってガドリー室長が言ってました」

「あの頃はまだ、早回ししか使えなかったんだけど、怪我をした部分に魔法をかけたら、通常なら一週間かかる症状でも一日で完治できちゃうからね。本当にすごいことなんだけど、サメアは不治の病を患っていたメルンのお兄さんに魔法を掛けちゃったんだよ、早回しのね」


「ああ、それは……」


「そう。死期を早めちゃったんだ。サメアは治そうと思っただけで、悪意なんてまったくなかったんだけど、家族にしてみたら複雑だよね」


 私はなんて言ったらいいのかわからず、言葉が出てきませんでした。


 メルンローゼ様も八つ当たりをしているわけではなかったんですね。サメア様に気持ちをぶつけてしまうのは、事の重大さでよくわかりました。サメア様がメルンローゼ様に何を言われても耐えていることも。

 どちらもつらいでしょうね。


「病気じゃなくても、怪我だって治らない場合もあるからね。だから、今は巻き戻しの魔法を頑張ってるんだ。それもまだまだ小さな範囲しか使えないみたいだけどね」


 私も、お祖父様にも魔法を使うときは慎重に使えと言われています。サメア様のように予期せぬ事態に発展してしまうこともあることも承知しています。

 実際に私は自分の魔法で閉じ込められたばかりですから。


「魔法って、ただ使えればいいだけじゃないんだよ。あたしたちみたいに何かを相手にする場合は特にね。どうやったら最適なのか考えて使わなきゃいけないし。それも簡単な話ではないからね。サメアが老けているのだって、時間魔法が変な風に作用しちゃったからなんだよ。まさか自分の身体が成長しちゃうなんて思わないよね普通は」


 サメア様が大人っぽかったのは、本当に身体だけが大人になっていたんですね……そんなこともあるなんてびっくりです。


「私も、自分が使える魔法のこと、もっと研究してみます」

「うちの領で勉強会を開いてるから、もし時間があったら連れてってあげるよ」

「ありがとうございます。是非お願いしたいです」


 サメア様とメルンローゼ様の件は、きっと誰にもどうすることもできません。顔を合わせるたびにつらい思いをするのであれば、お互い距離をとるのが一番ではないでしょうか。


 これから始まる新人研修会では、なるべく二人が会わないように、私が周りを見ながら行動しようと思います。


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