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私が憧れの職場に入れたのは、賢者のお祖父様のごり押しでした  作者: うる浬 るに
私が憧れの職場に入れたのは、賢者のお祖父様のごり押しでした
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24 新人演習会 魔法防衛部

 三人で魔防部の黒いローブを羽織り、闘技場の広場に降り立ちました。


 二人の足を引っ張らないように、魔法は完璧に仕上げてきたつもりです。



 屈伸したりしながら待っていると、私たちとは逆側の扉から闘技場の広場に男性が連行されてきます。男がひとりその場に放置されると金属ドアがバタンと閉まる大きな音がしました。


 あれは私に壁ドンしたセクハラ男。

 トラウマにもなっているので忘れるわけがありません。


 そのあとすぐに、ちょうど真ん中に位置するドアから魔獣が解き放たれました。今は演習に集中しなければ。


 闘技場に姿を現したのは三頭の魔狼。体高が一メートル半にもなる大型獣です。敏捷性では魔獣の中でも一二を誇ります。こちらも早い対応が必要になり、魔法陣を描くのに時間がかかる魔法は使っている余裕がありません。


 難易度の高い魔獣ですが、ありがたいことに三人で想定していた中にありました。そして三人とも討伐した経験があったので問題はないはずです。


 私たちに向かって唸り声や威嚇の鳴き声をあげる魔狼たち。


 闘技場に放置された男は壁に張り付いて、なんとか広場から出ようと試みているみたいですが、ここは魔狼でも逃げられない場所なのであの人では無理でしょう。


 魔狼が男には興味を示していないのであちら側には何かしらの魔法をかけているのかもしれません。


 まあ、いまそれはどうでも良いことです。




「プランDでいくぞ」

「はい」

「わかった」


 ジル様の掛け声とともに私たちはロッドを掲げ、各々魔法陣を描いていきます。


「おおう」

 観覧席からどよめきが上がりました。


 人々の視線はジル様が両手を上げた先、その上空で浮かんでいる真っ赤な炎に釘付けです。炎の周りには橙や、黄色の小さな炎が生き物のように飛び交っています。


 これだけの魔法を使うには正確さが必要。ジル様は魔狼にはまったく気を払わず魔法陣に集中していました。


 そんなジル様に魔狼が飛びかかろうとします。


「危ない!」「大丈夫?」

 見学している人たちの声がざわざわと聞こえてきました。


 魔狼はジル様に牙を向けます。その刹那。

「ギャウン」


 二ヶ所同時に魔狼の悲鳴が轟きました。


 ジル様を狙った魔狼は、私が放った防御壁に当たり跳ね返ったのです。


 魔狼とぶつかった防御壁ですが、見ている人たちの目を引くため、まずは派手で大きなな魔法陣を浮かび上がらせ、その上で光を煌びやかに散らして消すという演出をしています。


「やるじゃん、イリー。その魔法キラキラが前より増したんじゃない?」

「すごく練習しましたから」 


 それで倒れたんですけどね。でもこれ、小説を読んでいる人にはわかってしまうかも。


「じゃあ、あたしも頑張るかな」


 魔法陣を描き終わったのか、ムームの持っているロッドから青白い光の線が一直線に浮かびました。

 ムームは杖を持っている手首を回します。ムームの動きに合わせてその線は渦状に変化し、風を起こしながら前方に流れ出します。渦の勢いは増していき、そこに倒れていた二頭の魔狼を巻き込み、最後には壁際まで吹っ飛ばしました。


 ちょうど魔狼がぶち当たった壁の近くでは、地面にへなへなと崩れ落ちる人影があります。


 まあ、あれはもうどうでもいいです。



 様子を見ていた一頭だけはムームの魔法を避けたので無傷でその場に立っています。


 私はもう一度魔法陣を描き、魔狼が逃げないように小さな結界の中に閉じ込めました。もちろん今度も目に見えるようにキラキラ付きですよ。


 用意ができたジル様が目で合図をしてきたので、それに合わせて魔法を解く準備をします。


 ジル様がロッドを振り下ろしました。それと同時に真っ赤な炎の塊は、残る魔狼の頭上へと落下。


「解除っと」 


 私が結界を消したので、魔狼にジル様の魔法が命中し、ドオウンという大きな音とともに魔狼は真っ赤な炎に包まれました。目の前で焼き尽くされています。


 一瞬の静けさの後、ジル様に対する歓声の声が闘技場に響き渡りました。


 それはそれは大きな波を錯覚させるほど。人々の熱気が伝わってきます。


 これだけ称賛の声が聞こえるのですから私たちの演習も成功したと思っていいですよね。


 最後の火の鳥が飛び立ってから炎が消えるところなんて、練習中には見たこともありませんでした。ジル様もこっそり自主練習していたんじゃないですかね?


 さすがに私のように倒れたりすることはなかったんでしょうが。




 闘技場の扉から観覧席側へ戻ると、そこで待っていたのはロウディア部長たち。


「三人ともよくやった。ここ最近では一番いい演出だったぞ」

「あれだけのものを見せつければ文句を言う奴も減るだろう」

「大きな魔法を使っても、闘技場がまったく壊れていないのは君たちの腕がいいからだね。これからが楽しみだよ」

「本当にすごく綺麗だったわ」


 ロウディア部長たちが褒めてくれました。



 魔獣との戦いを演出って言っちゃうところが何とも。


 でも、魔法少女の真似をした私が言うことでもありませんし、たしかにショーみたいなものでしたからね。素直に喜んでおきます。


 それに魔狼三頭くらいで怯えているようでは魔防部の仕事なんて務まりませんから。


 人間の方が手を出せないぶん厄介ですよ。


 え? あの人ですか? 失神して運ばれていったそうですよ。まあ、ジル様の魔法を特等席で見ていましたから仕方ありませんよね。


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