02 魔法師団の試験
この国では年に一度、魔法が使える者にとっては最高峰で憧れの職場、魔法師団の入団試験があります。条件は『国民であること』と『十六歳以上』だけです。
何を隠そう私の夢も魔法師団へ入ることでした。お気に入りの魔法少女の英雄物語も魔法師団へ入団するところから始まります。
小さなころから試験が受けられる年齢になるのを心待ちにしていたので、最初で最後、一度きりを条件に少し高めの受験料を両親に用意してもらい試験に挑みました。
試験は何日もかけ、いろいろな場所で行われています。私のような平民は職業斡旋所の会館に集まるようです。
まずは魔力濃度のテストからです。
一人づつ列に並び、試験官に「次の方」と言われたら設置されたゲートの入口でまず魔力を送り込みます。その先に出口が二ヶ所あり、開いている方へ進むだけ。たったそれだけで次の試験を受けられるのか、わかるようになっているそうです。
魔力が基準値を超えていない人はそこから試験会場には進めません。
ドキドキしながらゲートを通り抜けます。開いていた出口の方へ歩いて行くと目の前に職員らしき人がいて『筆記試験会場→』の看板が目に留まりました。あっけなく第一テストを突破。
ちなみに、ここで引っ掛かると、試験会場の出口に強制的に案内されるので、自分では納得がいかなくても帰るしかないとのこと。
次は筆記試験です。
会場は会館の会議室。筆記試験は常識問題と歴史学、計算式、それと『突然、目の前に魔獣が現れました。貴方ならどう対処しますか』や『血だらけの男性が倒れています。まず初めに何をしますか』という、ちゃんとした答えがあるのかわからないような質問形式の問いがいくつも並んでいました。
たぶん『魔法で対応します』だけでは正解ではないのでしょう。一生懸命頭をひねって考えました。
筆記試験が終わり、お昼休みを挟んでから今度は実技試験です。
人によって試験会場が変わるそうなので、私は数人の受験生と一緒に、用意された馬車に乗り込み、魔法師団の庁舎へとやってきました。
実技試験は円形で観客席がついている闘技場のようです。その観客席には審査員だと思われる方が五十人近く座っていてこちらを注視しています。
広場には距離も大きさもバラバラに設置されている的が用意してありました。
そこに書いてある数字を1から30まで順に最も得意魔法を使って当てていく試験だそうです。正確さと早さが重要とのこと。
一番自信がある魔法は防御魔法です。試験官に聞いてみたら、的を結界で囲めばいいそうなので、それが目視できるように光魔法を重ねることにしました。魔法陣を空中に描いて魔法を発動させていきます。緊張しながらも魔法を不発することなく、ちゃんと数字の順に囲むことができたので、自分では満足のいく出来でした。
合否判定はすべての試験結果がでたあと後日連絡が来ることになっています。
ちなみに平民で受験料が払えない人は事前に申請し、能力検査で合格できれば無料で試験が受けられます。私が事前に能力検査を受けなかったのは、万が一、能力検査で落ちてしまえば、本番の入団試験が受けられなくなります。その可能性が怖かったので両親に無理を言って受験料を出してもらったんです。
お爺様は『儂がどうとでもしてやる』なんて伯爵家と賢者の威光を持ち出すので、絶対にやめてもらうよう念押ししておきました。
それなのに————。
「今年もコネ入団者が入ってて嫌になるな。みんな必死に試験勉強して頑張ったのにさ、ずるくねえ」
「受験料に上乗せして大金を納めれば能力に関係なく合格できるってやつか?」
「それもだけど、権力のある貴族は魔法師団のお偉方に頼むだけで試験で優遇だと。もともと受けてない奴もいるんだってさ。使えない奴を入れられて苦労するのは一緒に仕事する俺たちだっての」
「うわー、うちのお偉いさんも権力には敵わないのかよ、なさけねぇな」
「いやいや、そのトップが今年不正してるだろ」
「魔法学校、卒業してないって聞いたぞ」
「そうそう、不正で合格してんのにさ、よく恥ずかしくもなく魔法師団にいられるよな」
私は今、魔法師団の資料室にあるテーブルの下で絶体絶命の危機に陥っています。
ここに私がいることがばれたらどうなるかわかりません。その怖さで身体の震えが止まらないです。
十中八九、そこにいる職員さんたちが噂している人物は私なのです。
「試験で優遇」「トップが不正」「魔法学校出ていない」やっぱり私、コネ入団だったみたい。
あれほど言ったのにお爺様の大バカ。