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第十七.五節 接敵

 

「――今日は……」


 暖かい日差しの嬉しい昼過ぎ。学園からの帰り道、ジェインに予定を訊く。


「教会で子どもたちの相手だな。久々に近くの公園まで行くらしい」

「ちっ、またガキどもの相手かよ。疲れるぜ」

「大人気ですもんね、リゲルさん」

「……あれで勝ったと思うなよリゲル」

「いや、なんの話だよ」


 恨みがましい口ぶり。――前回俺たちと子どもたち全員でやった鬼ごっこで、リゲルは八面六臂の大活躍だったのだ。鬼ごっこが終わって我先にと子どもたちに群がられる姿がジェインのプライドにはダメージだったらしく、珍しく根に持った恨み節を紡がれている。


「んな情けねえ面してたんじゃ、あいつらにも愛想付かされちまうんじゃねえのか?」

「馬鹿な事を言うな。あの子たちと僕は、長年教会で――」

「らら~~らーーらら~~」


 ……なんだ?


 会話を遮る突然の歌い出し。巡らせた視線に移り込んだのは、一人の男。絶妙に音の外れた歌を口ずさみ、足取りでリズムを取りながらふらふらと歩いて来る。……酔っ払いか?


「……」


 手に持つ開け放しの酒瓶からアルコール独特の臭気が漂ってくる。その風体に周囲の通行人たちもやや顰め面だ。……まあ、下手に関わりたくはないことは確か。誰が示し合せたわけでもなく、しかし皆考えることは似たようなもののようで、俺たちは男を気にしないようにして、静かにその脇を通り過ぎ――。


「――いやあー、そこの若者たち!」


 ――ようとしたところで、不運にも声を掛けられてしまった。


「こんばんはぁ! 見たところ学生みたいだけど、何をしてるのかな? 花見にでも行くのかい?」

「これから四人で遊びに行くんですよ。暇な授業も終わりましたしね」

「へー、そいつはいいな。僕ももうちょい若けりゃ、ご一緒したかったよ」

「あ、あはははは……」


 余所行きの口調でサラリと嘘を吐いたジェインへの反応に、困ったような顔でフィアが笑う。――気分よく酔っているみたいだが、大分絡んでくるな。話を続けるのも面倒だが……。


「じゃあ、僕たち予定があるので――」

「いやー……それにしても、今日は良い~天気だね」


 ジェインがそう言ったところで男が空に目を細める。釣られて上げた視線。……確かに今日は良く晴れた日だ。視界いっぱいに広がる青空に、雲は僅かに視界の端の方に千切れて浮かんでいるだけ。稀に見る快晴と言ってもいい陽気で――。


「――こんな日にお仕事なんて、ついてないよ、ほんと」

「え?」


 男の言に視線を下ろした瞬間、目の前が、眩い閃光で埋め尽くされた。







「――」


 その現象を目の当たりにした瞬間、支部長は反射的に状況を看破する。……見る者が見れば明らかな異常。建物の間へと続く一本の道筋が、まるでないものかの如く人々から無視されている。認識阻害――。


「ち――」


 加えて人払いを兼ねた結界張り。怪しまれないよう一旦距離を離していたことが裏目に出た。真っ昼間という予想以上に強引なタイミングで仕掛けてきたことに歯噛みしつつ、魔力感知を深める。……周囲にそれらしい動きはない。


 感知を妨げる念入りな隠匿がされている。だとすれば敵は相応のレベル。あの四人が標的であることを考えれば場所はそう遠くないはずだと、ダミーである目の前の結界から視線を逸らして支部長は思惟を巡らせる。……持って五分。脳裏に下される厳しいタイムリミットを重々に意識しつつ。


「――【間接強化】」


 その場所の手掛かりを探すため、己にできる目一杯の速度で、支部長は駆けた。



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