第十二節 破れ
「――ッ‼」
「――⁉」
刹那の間を置いて黒と黒金の斬撃が激突する。……断ち切れない。まず初めに感じた手応えが示すのはそのこと。
――競り合っている。次の驚愕はその事実。金色の輝きを放つ刀身は、邪気で塗り固められた黒紫の剣身に対し一歩も引かず。
「――」
あり得ないその光景に永久の魔は瞠目する。……膂力で押しているのは自らの方だ。それは事前の予測の通り、当然の如くに疑い様がない。
だが。自身の目の捉える光景が間違いでなければ。その剣身へ、僅かずつ刃を喰い込ませてきているのは――。
「――っ」
咄嗟に遊んでいた左腕を差し加える。――止まらない。全霊の膂力を以てしても止まらないその軌跡に、あらぬ予感を覚えて退こうとした瞬間。
「――」
視界を覆う光に邪気が一瞬で取り払われる。――これは。
少女の神聖――。
「――どこ行くんだよ?」
背後から突き付けられた声。諸手を用いてなお食み来ている攻防の最中に、永久の魔に応える余地などあるはずもなく。
「遠慮しないで喰らってけよ。折角、もう一発あんだからよ」
膨れ上げられるその闘気を。ただ、背越しに看過するしかなかった。
「【覇者の――剛拳】――ッッッ‼‼」
大きく引き絞る気配。一毫の間を置いて、超重を秘めた拳が尋常ではあり得ない速度で背面を撃ち殴る。固めた邪気を貫き、衣服を穿ち、永久の魔の体躯にまで届かせて。
「オオオオオオオオオオオオオオオオッッ‼‼」
「アアアアアアアアアアアアアアアアッッ‼‼」
「――っ」
下がれない。我が身を揺らすのは魂まで擲つような二重の絶唱。……向き合わされている。光の中をなお貫き進んでいる、この輝きに――。
……そして不意に。
「――……ッ」
消え失せる手応え。目の前に訪れたその光景を、信じられないような目線で追っている自らを永久の魔は自覚する。
……馬鹿な。
全ての罪を断ち切る、『断罪の剣』が。
――折られるなど――……。
凝視した時の中でゆっくりと宙を舞う剣身。訪れた千年来の驚愕を抱えたまま。
その身に断裂を深く刻み。永久の魔は、背中から地へ倒れ落ちた。




