第二十七節 覚醒
「――ッ」
――ここは。
咄嗟に身構える。俺の目に飛び込んできたのは深い緑。月明かりの射し込む、森林の只中――。
「……」
警戒しつつ周囲に視線を配る。……手には『終月』。服装も変わらない。ただフィアたちがどこにもいないだけだ。一瞬にして別の場所へ飛ばされた――? 注意深く周囲を見回しながら、どうにか状況に理解を得ようとしたとき。
「――!」
一挙に。ヌラリと立ち現われたのは無数の影。……顔も無い。表情も無い。真暗色の影たちが俺を見つめている。……無言の恐怖。それに耐え切れず――。
「――ッ‼」
闇雲に走り出した俺の背を追いかけてくる足音。木の葉を踏む音、枝を折る音がそこかしこから聞こえてくる。訳の分からない光景に全力で走りながら――。
「くっ……!」
俺はどこかで既視感を覚えていた。記憶の坩堝から掘り起こされてくるのは協会、レイガスに見せられたあの光景。
追ってその認識を肯定する。……これは幻術だ。心を抉り、二度と立ち上がれないように弱らせる毒。協会で受けた時も、結局レイガスが解くまで抜け出すことができなかった。――レジスト。
「――」
その語句が頭に浮かぶ。……突破しなければ。この間にも現実では何が起こっているか分からない。
〝その呪具は、キミのしたいことを叶えてくれる〟
囁くようなシンシアさんのあの言葉が思い起こされる。この呪具が、俺の望む力を引き出してくれるというのなら。
「――ッ!」
望む。この幻術を撃ち破るだけの集中力、虚像を穿てるだけの精神力を。仮初めの景色の中で、次第に熱を帯びたように感じられてくる頭。その熱が一定の熱さまで達した時――。
「――」
「――水」
視界が。――いや、景色が歪む。今の今まで現実に見えていたはずの光景が捻じ曲げられ、歪な模造品のような形を顕にしている。同時に頭の奥に届いた掛け声。――本能的な直感。その声の聞こえた方角が、目指す現実であるとの――!
「――蔭水ッ‼」
そう断じて一際強く意識を集中させた俺の耳に。はっきりと、俺の名を呼ぶ声が聞こえた――。
「――ッ」
歪んでいた視界が一瞬にして砕け散る。……急激な景色の変化に連れて舞い戻ってくる現実感。怒涛の如きそれらに思わず蹌踉めくものの、直ぐに地面を踏みしめて気を確かにする。正面にはジェイン。
「――気が付いたか⁉」
「ッああ! 俺は――」
「あの女の幻術に当てられていたんだ」
声を掛け続けていたのか、その目は真っ直ぐ俺に向けられている。視線の先に立っているセイレス。姿は遠く、魔術を放つその姿は俺たちを見てはいない。戦いの真っただ中であることを思い出して慌てて終月を引き寄せる。……大丈夫だ。放してはいない。円環の副作用のせいか僅かに頭痛がしたが、この程度なら支障はなかった。
それよりも――。
「――ッ!」
――轟音。重々しい音と激しい魔力の波動に、戦闘の繰り広げられているその場所に目を凝らす。
「――粘るな。やはり幻術とは中々に鬱陶しい……」
鉄塊を諸手に下がるのは、バロン。頬には擦り傷。服も先程より汚れている。大した動きを見せていなかった先ほどとは違い、一転して攻勢に出て来たようだ。
「動きを止めた者から狙う卑怯者に、そんなことを言われたくはないですね」
「へっ。そっちこそやりやがるじゃねえか」
それに今一噛み合っていない調子で応じる郭とリゲル。やや後方に引いている郭に対してリゲルは前。僅かな隙も逃さぬよう努めているのか、バロンから付かず離れずといったギリギリの距離で対峙している。……二人とも消耗してはいるようだが、目立った傷は特に見られない。そのことにまず安堵させられた――。
「君とカタストさんが落ちてから男が猛攻を仕掛けてきたが、二人が今のところ食い止めてくれている。……郭がいなければ串刺しだったな」
「――」
言われて気付く。そうだ。フィアは――。
「――!」
移した視界の端に映るのは、動きを止めたフィアの姿。……リゲルや郭のお蔭か、傷は負っていない。しかし目の前で行われている攻防にまるで反応せず、立ったまま微動だにしないその様子から異変が続いていることを察知する。……フィアはまだ。
「カタストさんはまだ幻術が解けていない。男への対応で手一杯だったんだが、君が戻って来れたなら今度は女の方を――」
「――そんなに悠長にしている暇があるのかしら?」
ジェインの説明を遮る形で声が届く。対峙する三者を置いてこちらに瞳を向けている魔術師。――セイレス。
「これで四人目。そこの賢者見習いはともかくとして――」
一瞬郭へと流されたその視線が、俺たちを向く。
「私の幻術からこの僅かな間で逃れるなんて。――驚いたわ。相当な訓練を積んだようね。敵ながらその点は褒めてあげる」
手を叩く。まばらな拍手の音が、緊張感に満ちた空間に広がっていき……。
「でも、あのお嬢ちゃんはそうもいかないのかしら?」
再び向けられたセイレスの目は、確かに俺を捉えていた。
「僅かでも囚われていたなら知っているでしょうけど、私の【存在幻術】は今、対象の精神を蝕む負の情景を展開している」
「――何?」
「あのか弱そうなお嬢ちゃんが助けもなしに、一人でどこまで耐えられるのか――」
聞き捨てならないと言った風に訊き返したジェインに、薄く嗤いを零し。
「大いに疑問だとは思わない?」
「――っ!」
――マズイ。
「蔭水」
「ああ」
先ほどまでの感覚が急速に蘇ってくる。あれと同質のものを今なお延々と体感させられているのだとすれば、最早一刻の猶予も無い。半ば強引にでもフィアをあの幻術から解放する必要があると、そう決意して振り返った――。
「――躱せッ!」
――瞬時。ジェインの叫びに【魔力解放】を発動させて足元から飛び込んできた杭を避ける。……眼前を横切る鋭利な棘先。直撃していれば文字通り串刺しにされていただろう。
「【時の加速――二倍速】!」
続け様に織り為される詠唱。上空で渦巻く魔力に気が付いて上を向いた首。セイレスの放った魔術が、俺たち目掛けて降り注ごうとしている!
「させるかッ‼」
同時に生まれる別種の魔力。――郭が形成した水流の屋根。頭上に貼られたそれが降り注ぐ雷撃全てを受け止め、別の方角へ逸らしていく。張られた障壁の向こう。歪んだ情景の中で、リゲルとバロンが猛攻を繰り広げているのが見えた――!
「行けッ! 蔭水ッ‼」
「ッ――‼」
ジェインの声援を背に走り出す。――皆が力を掛けて俺を浮いた状態にしてくれている。仲間の協力で作り出されたこの機会を、逃すわけにはいかない‼
思いに連れて力が漲る。意気込みと共にフィアへと向かい。
「……っ⁉」
だが。中途で止められる足。……視界の中心に捉えたフィアの姿。その様子が、おかしい。
「……」
焦点の定まらない、虚ろな瞳。身体は冷気に晒されているかの如く小刻みに震え、微かに開いた口からはか細く途切れがちな呟きが漏れている。目にしたその様は明らかに健常とは言い難く――。
「フィ、フィア――」
「――あら。もう限界かしら」
掛けようとした声を追うように軽やかな響きが届く。互いに互いの魔術を術で撃ち落とす争い――。見れば郭との間で壮絶な魔術戦を繰り広げながらも、悪辣な笑みを浮かべたセイレスが俺の方へと視線を投げかけていた。
「壊れてしまったみたいね。愉しめなくて残念なこと――」
続くのは押し殺したような含み笑い。まさか、そんな――‼
「――フィアッ‼」
――嫌でも思い描いてしまう可能性。
それを理解することを拒絶する為に。俺がただ全力で駆け出した――。
――その、瞬間だった。
「ッ――⁉」
足が止まる。……事態としては先ほどと同様に、しかし先ほどよりも更に強い、強制力を以て。
「……」
幻覚に打ちのめされていたはずのフィア。現実には無い、何処でもない場所を見つめていたその視線が今、此方側を向いている。
一瞬意識を取り戻したのかと錯覚するが――ぼんやりとしたその視線はとても正常には思えない。なにより、その目を見た瞬間にはっきりと感じたのだ。
――衝動的に駆け出した身が思わず立ち竦むような。今までにない、強烈な悪寒を。
「――」
俺だけではない。その気配を感じたこの場にいる全員が、気付けば静止した一コマのように動きを止めている。この場に舞い降りた異様に、釘づけにされているように。
「……」
「……フィア?」
弱く呼び掛ける。未だ幻術から抜け切っていないらしい能面のような面持ち。だがその目は確かに俺の方を見て――。
――いや。
直後の判断。――違う。フィアの目は確かに此方を向いてはいるが、俺を捉えてはいない。……その視線の先にあるのは。
――背後にいる、セイレス――?
「……なっ……」
判断を追認する音。――セイレスが後ずさる。微かに動くその唇は見据えられながらも何かを言おうとしているようだったが、フィアの異様な雰囲気に気圧されてか、言葉になっていない。
「……止めて下さい」
耳を疑う。鼓膜に響いたのはいつものフィアからは想像もできないような、冷たく無機質な声。暖かみなど欠片も無く、聞く者を凍らせるような音。
「……私の、大切な人を」
焦点が合わされる。……恐らくはセイレスへ。続けて紡がれたその言葉は、前より少しだけ力強いものになっていて――。
「――傷付けないで」
「ッ⁉」
――宣告と同時。恐らくこの場にいる全員が、息を呑まされた。
佇むフィアから伝わってくるのは……量り切れないほど強大な、力の脈動。今俺たちの敵として相対しているセイレス、バロンの二人を優に凌駕している。賢王や九鬼永仙から感じたそれにも似た――。
「――この――ッ!」
そんなフィアを脅威と見て取ったのか。今の今まで射竦められていたようなセイレスが堰を切るように一時に魔術を紡ぎ出す。炎、雷、氷、水、風、土、岩――。郭と撃ち合っていた時から比べてもより強大で更に多様な、遊びのない全力の攻撃。――幾属性にも渡る無数の魔術群が、フィアを襲う――!
「しまッ――!」
「――フィアッ!」
叫ぶ。変化に気を取られていたためか、郭の相殺が間に合っていない。――直撃する。数秒後に訪れる不可避の惨劇。それを思い描いて恐怖した俺の目に、映し出されたものは。
「……」
空虚な瞳。置かれた状況にまるで動じることなく、フィアは悠然とその場に佇んでいる。自らに迫る魔術の群れを、ただ無感情に一瞥して。
「――⁉」
目にした誰もが驚愕するような光景が、次の瞬間に広げられていた。――静かに伸ばされた腕。
翳された掌から音もなく放たれたのは障壁でも治癒でもなく、光そのもの。俺にもヒシヒシと感じ取れるほどの膨大な魔力を含むそれが放たれた魔術を全て消滅させ、セイレスに続く空間全体を包み込んでいく。――炎も雷も氷も風も。全てを飲み込み埋め尽くすほどの、凄まじい光――‼
「なっ――!」
「セイレスッ‼」
響く声。――驚愕と焦り。その叫びでフィアの一撃が完全に敵の予測を超えていたことを理解させられる。俺の目に映ったのは、今正に光に飲み込まれようとするセイレスの姿――。
――好機。
「【王家の書庫】ッ!」
全身を貫く確信に押されるようにして――駆けた俺の視界。光波を劈くように上げられた叫びと共に、光の中へと埋没し掛けていたセイレスの姿が再び顕に浮かび上がる。自らを飲み込まんとする波動に抗う力。周囲に飛び廻るのは幾冊もの古びた本。一冊一冊が纏い放っている並みならぬ魔力の鼓動。――無数の魔導書。
――流石だ。加速する時の中でそう思う。隠していただろう奥の手。その力を躊躇いなく守りに費やしたからこそ、あれだけの力の奔流を防ぎ切ることができている。不意を突く攻撃を受けながらの判断は紛れも無く術者としての優秀さを示すものだが。
そちらに意識を割いているせいか、此方に気付く様子は皆無。行ける――!
「――」
――セイレスの強固な抵抗を受けたせいか、フィアの放った光の輝きが次第に消えていく。残されたのは魔導書の半数ほどを吹き飛ばされ、それでもなお無傷を保ったセイレス。目に映るその体躯へ目掛けて――。
「――ッ‼」
渾身の力で、大地を蹴り進んだ‼
「――っ⁉」
セイレスの目線が俺を過る。間髪入れずに撃ち放たれたのは視界を覆うほどの魔術弾幕。――あの攻撃を凌いだ後でまだこれだけの力があるのか。驚愕の内で迫り来る雨霰とでも形容すべき魔術の群れ。ただ苦し紛れに撃ち放ったわけではなく、その一つ一つが喰らえば確実にこちらを死に体にするだけの威力を備えている。行く先は正に死地にして。
――だが。
「ッ!」
一瞬の集中。それにより『破滅舞う破滅者の円環』を稼働させる。視覚を始めとした全感覚、並びに身体性能の強化――。
鋭敏化した知覚で各々の魔術の軌道と到達時間を予測。網の目を擦り抜けるが如く描いた不規則な軌道で身体を前へと押し進めていく。……大事なく引き出せるギリギリの出力。足首と膝が軋みを上げるが、手の平に爪を喰い込ませて耐え切った――‼
――俺のその挙動が想定を超えていたのか。
「――」
魔術の洗礼を抜けて眼前に立った俺に対し、表情を歪ませるセイレス。声なき詠唱が新たな魔術を紡ぎ出すよりも速く。
「――ッ‼」
――放つ。整え終えていた構えから、【一刀一閃】を。――刹那の時間内で俺の目に映しだされるのは走る刃の軌跡と僅かずつ展開されていく障壁。やはり事前に予防策を張っていた。黒衣の刃が障壁を食み進むその間にも新たに二枚の障壁がセイレスとの間に形成される。――紛れもなく一流と呼べる魔術の腕。讃嘆と同時に直感する。……だがこの一閃は止まらないと。
「――」
幾重もの障壁に阻まれながらも全力を乗せた終月は勢いを弱めない。防ぎ切れないことを相手もまた理解している。それでも打てる手立てはない。ただ戦慄の面持ちを以て自らに迫る刀身を見つめるのみだ。――勝った。
確信に転じる予感。刀身が遂に無防備なセイレスの身体へと届く、その直前に。
「――っ――」
雷光のように脳裏を駆け廻る、一つの気付きがあった。……今の俺の【一刀一閃】はかなりの威力だ。
賢王からも墨付きをもらっている。例え相手が相応に鍛え上げていようと、直撃したならばタダで済むことはないと。――目の前のセイレスは魔術師だ。動きを見ても術に特化した純然たる術師であり、立慧さんのように肉体面で何かしらの鍛錬を積んでいるわけでもない。……耐久は並。女性であることも考えれば、更に脆いものであるかもしれない。
ならば、仮にこのままこの一撃をぶち当てれば。
「――ッ」
自身の一撃が何をもたらすか。それを意識してしまった瞬間――。
「避けろッ‼」
――背後から。弾くように届いた叫びが、俺の全意識を遮った。
「ッ――!」
全身の毛が逆立つような感覚。直感的な脅威の理解と共に不格好な姿勢のまま飛び込むようにしてセイレスの脇を擦り抜ける。――背後を薙いでいく風。握り込んだ拳を突いて体勢を立て直し、正体を確かめるべく振り返った――。
「――」
目に映り込むのは巨大な鉄塊。……バロンが、セイレスを守るようにして立ちはだかっている。二メートル近くと思しき巨体。手にされた鉄塊の威圧感は間近で見れば思ったより大きく、その暴威が薙ぎ払われる様を思い浮かべれば嫌でも湧く恐怖を抑えきれないほど。――こんな相手とさっきまで渡り合っていたのか? 郭の援護があったとはいえ、素手でリゲルは……‼
「――セイレス」
「……大丈夫よ」
バロンの声にセイレスが姿勢を正す。――完全に体勢を立て直された。そのことに歯噛みしつつ目の前の光景を分析する。……無傷ではない。立ちはだかるバロンの腕には裂傷が刻まれており、そこから鮮血が鉄塊を伝って地面に滴り落ちている。無理をして仲間の危機に駆け付けたのか、僅かに目線を遣れば、相手をしていたはずのリゲル、郭が俺と挟み撃ちをするような立ち位置へ移動してきている。見たところ二人に重傷はないが。
「……」
身体の複数箇所に走り出す痛みを押し込める。――円環の副作用。突貫の反動が既に表れ始めている。……この状態で後どれだけ、円環の力を使えるか。万が一にも気取られないよう、意志の力で平然とした顔を作り上げておく。……大丈夫だ。
胸に湧く不安を抑え込むように心の内で言い聞かせる。この二人は強敵だが、俺たちの力も充分に通用している。気を抜くわけにはいかない。だがこの間に少しでも体力を回復できるよう、構えを崩さぬまま静かに呼吸を整え……。
「――」
そう思った最中に動いたバロンの視線。黒々とした瞳が一瞬だけ、俺とフィアの方へ向けられた気がした。
「――退くぞ」
「ええ」
「――⁉」
衝撃的なバロンの声に、分かっていたように応じるセイレス。ブラフかと戸惑った俺の視界、流れるような所作でその指先が何かを描いた――。
「ッ‼」
「危ないっ⁉」
――郭の警告とほぼ同時。二人を取り囲むようにして巨大な暴風が沸き起こる。渦巻く烈風に砂礫を纏わせた羅旋風。触れれば身を刻まれるその勢いに本能的な危機を感じ、思わず後ずさった俺の前で。
「――逃がすかよッ!」
リゲルが一歩前へと踏み入れる。――暴風の圏内へ。固く握り締められた右拳に、大気を震わせる力が集束し――!
「【覇者の――剛拳】ッ‼」
数瞬の溜めの後、気合いと共に放たれたのは右ストレート。収束した重力を一時に解放する一撃――繰り出された衝撃波が回転する風と砂礫の勢いに打ち勝り、その胴体に風穴をぶち開けた‼
「――っ!」
千切れ飛ぶ衝撃の余波で倒れそうになり、更に後方へと引き下がる。――何て威力だ。予想だにしない破壊力に愕然とするしかない。……これがリゲルの必殺技。
あの時は話半分にしか聞いていなかったが。小規模な竜巻と言って遜色ないセイレスの魔術を、正面から貫くとは――。
「――ちっ」
驚愕の残る最中で耳に届いてきた微かな音。晴れた視界の中で顕にされた、舌を打つリゲルの見る先には。
「……」
僅かな痕跡もなく。……誰一人いない空間が、ぽっかりと口を開けているだけだった。――逃げられた。
「……っ」
それを理解しても心のどこかで安堵している自分がいる。……どうにかなったのだ。郭と俺たちだけで『アポカリプスの眼』のメンバーを退けた。どうにか……。
「――二人とも――!」
駆け寄ってくる郭の姿を視界に捉えつつ。今更ながらにドッと湧いてきた疲労感に、足をふらつかせた。




