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第二十八.五節 無残な死

 

「――漸く死んだか。爺が」


 血に染まり、倒れ伏した身体――。レイガス・カシア・ネグロポンテの遺骸を目に、ガイゲはそう吐き捨てる。


「あら。前の二つよりは楽しめたんじゃないかと思いましたけど、違ったんですか?」

「戦闘はな。だが、こいつの態度が気に入らねえ」


 姿を現したあとも、老魔術師は異常と言えるほどの粘りを見せた。魔術にて自らの身体を誤魔化し、致命傷を幾度となく負ってなお。


「先のねえ老いぼれのくせして、やたら食って掛かるような目付きをしてやがった。今更どうできるもんでもないのによ」


 執拗に食い下がって来たのだ。攻め手がない以上、ほぼ無駄な抵抗であるにも拘らず。……結局のところ骨まで達する斬撃を七回、左脚と右腕の切断、内臓の幾つかを潰し、左目を抉り。割いた喉首を更に捻じ圧し折ったところで漸く完全に動きを止めた。


「全く苛つくぜ……。事のついでだ。残ってる奴らも殺しとくか?」

「今回の標的は幹部だけってヴェイグも言ってたじゃないですか。余計な殺しは厳禁」


 ね、と。からかっているのか、半ばあやすように窘める死神。


「それに、弱い相手を幾ら殺したところで気なんて晴れないんじゃないですか? 高潔な騎士サマは」

「……ま、そりゃそうだ」

「……」


 移した視線に留める動き。――死体となった老魔術師に、ヤマトがグサグサと剣身を突き立てている。


「なにやってんだよお前は」

「……ウゴイタラヤダ」

「動かねえよ。さっきのはタネのある仕掛けだ。絶命してることくらい分かんだろ?」


 黒騎士の言葉に少女は首を縦に振る。死体から引き抜き、腰元に収めた剣――。


「――そいじゃ行くか」


 振り向きざまに放った一閃。放たれた衝撃波が広間の壁、天井を裂断し、破砕音と共に振動を響かせた。


「子どもっぽいんですねガイゲ。分かってましたけど」

「憂さ晴らしだよ憂さ晴らし。他人の仕事を引き受けてやってんだから、構わねえだろ、こんくらいは」



この節で七章は最後です。次節から第八章に移ります。

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