第十三節 開戦 前編
「――見えてきたねい」
朧気に浮かび上がる島影――。幹部と『救世の英雄』たちが揃い踏んだ船上で、リアは目を細める。鍵を集めたことにより明らかとなった封印の地が、今目の前に現われつつあるのだ。
「さてはて、果たしてまずはどのような運びでありましょうか……」
呟くのはバーティン。先着しているだろう『アポカリプスの眼』がどのような防衛線を引いているか。まずはそれを見極める必要がある。
「――確かめるまでもないようだな」
「そのようですな」
緋神、続くヨハンの台詞に注目を集める一同。
「見えるのかい?」
「ああ。確認できるだけで巨大な人型の怪物が七体、それにあれは――」
執行者特有の超視力。一瞬言葉を選ぶように言い淀んだ緋神を、リアは注視する。
「……竜か? 実物を見ることになるとは信じられんな」
信じられない、とは言いつつも、その言葉の裏には目にした光景を早くも現実のものとして受け止めているだろう冷静さがある。……流石と言うべきか。
「そいつは多分、こっちの離反者の仕業だねい」
――島を守る異形の存在。聞いた情報を元にリアは推測を立てる。……所属時代の零からでは分からない。しかし協会で確認した残留魔力、それに緋神の発言からして、恐らくは鬼神、それに竜種が一体。秋光も厄介な敵を育てたものだと、今更ながらに小さく嘆息する。当然その溜め息は表には出さなかったが……。
「それにどうやら、敷地一帯を要塞化してもいるようです」
同様に目を凝らしていたヨハンの台詞が耳に届く。
「複数の岩壁のようなものと、地面を覆い尽くさんばかりの鬼の群れが見えます。あの地形なら罠を仕掛けるにも最適でしょう」
「……他には何か見えるか?」
「奥の高台に何人かの人影が見える。恐らくあの付近に封印の場所へ繋がる入口があると見ていいだろう」
「そこで幻術使いが張っていると考えるべきでしょうな。その点は――」
「予定通り私が請け負いましょう。始末は任せましたぞ、緋神殿」
「ああ」
フェイディアスの声に答えるのは緋神。――幻術使いは執行機関を襲撃した内の一人。借りを返すと言う意味でも適当な人選だと、改めながらにリアは思う。
「となればまずは、あの怪物たちをどうするかですか」
ヨハンが腕組みをして見せる。
「鬼どもはともかく、巨大な化け物の方は中々に手強いだろう。殺す手段は限られる」
「……元はと言えば、そいつは協会の不始末さね」
応えるのはリア。
「そいつらの駆除はあたしらがやる。――バーティン」
「然り! このバーティン、早速用意を整えますぞ!」
「了解した。地面を覆う鬼たちは――」
「私が引き受けましょう」
――ヨハネ。船内でも殆んど発言をしてこなかった彼女の言葉に注目が集まるのは、この際致し方のない事だと言えただろう。
「貴方たちが竜と化け物を駆逐するのと同じタイミングで、私も鬼たちを一掃します」
「それはそれは! 《黙示のヨハネ》殿の技の冴え、是非ともお目に掛かりたい!」
「止めなバーティン。失礼だよ」
「おっと、これは申し訳ない」
「……構いません」
頭を下げたバーティンにヨハネは表情の読めぬ顔で答える。――まあそこまで気分を害してはいないだろう。実際に顔を合わせたことは数度とは言え、長い付き合いであるリアにはある程度それが分かるように思われた。
「――あー……話をぶった切るようで悪いんだが」
組織の幹部たちの背後から。割って入る声は、東。
「俺らはある程度好きに動いていいんだろ? 特にやらされることとかないよな?」
「……その方が互いの身の為だろう」
緋神の視線の先。自らに向けられたそれに答え、レイルは言う。
「物分かりのいい対応に感謝するよ、№1」
「一人以上削ってくれれば問題はない。刺し違えてくれても一向に構わん」
「それはしませんが……その点は、私たちに任せておいてもらうとしますか」
「ああそうだ。……念のためもう一回言っとくが――」
咳払いする東。――その瞳に宿る、先ほどまでとは別人のような覇気。
「蔭水冥希には手え出すなよ。あいつは、俺が片を付ける」
「……勝手にしな。ただ――」
口にされた言葉もまた同じような覇気を纏っていた。……条件の念押し。東とコンタクトを取った組織の代表として、リアがその言葉に答える。視線と声に込められた覇気にも一切動じることなく、平然と。
「あんたが死んだ後のことは知らない。私らは私らの勝利の為に動く。良いね?」
「ああ。それでいい」
「……」
その横でどこか微妙な表情をしているエアリーの肩に、レイルが軽く手を置いた。
「レイル」
「……エアリー」
振り向いた先。真剣な面持ちのレイルは零すように笑みを浮かべ。
「悩み顔が似合わないことこの上ないな」
「――」
満面の笑顔で繰り出した裏拳。当たれば鼻の骨くらいは砕けたろうそれを予測していたような所作で躱され、エアリーは息を吐く。
「……ま、この期に及んで不安がっても仕方ありませんね」
「傍から見ている身としては、エアリーはいつもあと一押しと言うところで果敢さが足りないようだからな」
無理矢理に気を取り直したようなエアリーに対し、含みのある視線を向けるレイル。
「最期に後悔だけはしないように生きるべきだと、私からは言っておこう」
「……その助言こそ、今更ですね」
軽く肩を竦めてエアリーは向きを変える。ごく近くを見ているはずなのに、どこか遠くを目にしているようなその瞳。
「私は、もう――」
海へと消え入りそうなその背中に――。
「おいお前ら」
聞き慣れた、声が掛かった。
「何ぼうっとしてんだ。もう直ぐ着くぞ」
「……分かっていますよ」
振り替えるエアリー。穏やかな表情は、それまで表にしていた全ての感情をそっと背中に隠したかのようで。
「――やれやれ。東は相変わらず空気が読めないと言うか、頭の回転が鈍いと言うか……」
「ほお? 剣の腕まで鈍いかどうか、試してみるか?」
「それは興味深い。決戦の前の前座としてはまずまずになることを期待するよ」
「馬鹿なことやってないで行きますよ。二人とも」
構えを取った二人をエアリーが窘める。へいへい、と言いつつ爪先の方角を変える背中に。
「……東」
「あ、何だよ?」
「頑張りましょう」
掛けられた声。柔らかな笑みと共に掛けられた言葉に、東は一瞬驚いたような表情を見せ。
「――当たり前だぜ」
一言そう言って、甲板へと歩き出す――。
「いやはや……」
方針を定めて散った甲板の先。自らの魔術の調整を続けながら、バーティンは呟く。
「こうして見ると壮観ですなぁ……」
「何だい。今更怖気付きでもしたのかい、アル」
応えるのはリア。……彼らの目の前に広がる光景。岸辺に並び立つ七体の鬼神と、その上で滞空を保っている黒き竜。
「いえいえまさか」
笑いながらバーティンは調整を終えたと思しき魔術を隣に立たせる。
「それで、吾輩はどちらを担当すればいいのでしょうな?」
「ドラゴンはあたしが殺る。あんたには鬼神の処理を頼みたい」
「了承しました」
七柱の鬼神を目標として些かも躊躇することなく、バーティンは返答する。普段は飄々とした態度を取るバーティンではあるが、このような事態では四賢者相応の自負を覗かせること、リアは概ね好意的に捉えていた。
「……しっかし、前から気になってたけど……」
その上で、長らく疑問に思っていたことを口にする。
「それ、あんたの趣味かい?」
「……」
いつもと変わらぬ様子でバーティンの脇に佇んでいるメイド姿の少女。決戦を前にしているというのにその出で立ちには普段と特に変わる様子がない。敢えて装備を変えないのであれば、それは戦術以外の理由に依るものかと憶測したリア。
「ははは。ここに来て冗談とは、流石のリア殿も多少緊張されていると見えますな」
「……まあ、あんたが良いんならあたしゃ別に構わないんだがね」
返事になっていないバーティンの返しを軽く受け止め、リアはもう一人の方へと振り返る。
「――あんたの方も準備は良いのかい?」
「勿論です」
「そうかい。各々用意もできてるみたいだし……」
ヨハネの言葉を受け止め、リアが島の布陣を見据えた。
「――行くよ」
昂ぶりのない一言と共に、見えない手に掬われたかの如く持ち上がるリアの体躯。そのまま高速で飛翔し、空の彼方――竜が待つ場所へ姿を消す。
「鬼神は任せますよ。バーティン殿」
「無論です! 吾輩の秘術にお任せあれ!」
そう言ってバーティンは、目の前に佇んでいるそれの肩をもう一度叩く。――作製時に設定した【起動】の合図。
「さあ、出番ですぞ――!」
「――」
声なき声。魔術として主の声に答えたそれは、ゆっくりと視界を上げ――。
「――‼」
標的たる鬼神たちを視界に捉えた瞬間、猛烈な勢いで水上を一直線に駆け抜けて行く。バーティンたちが乗る船の速度を大幅に超え。ものの数秒で陸地へ辿り着いたそれを、鬼神たちは特別な感情の籠らない目で見遣る。……小さい。
一般的な成人男性と変わらないほどの大きさは、鬼神たちからすれば正しく豆粒のようなもの。それがその手に武器のようなものを持っているのを見止めた時も、鬼神たちに焦りは無かった。降ろされた腕は静かに、しかし死地へと乗り込んできた無謀なそれに終わりを与える目的で以て迷いなく振り下ろされ――。
「……⁉」
衝撃と共に感じるはずの手ごたえが無かったことに驚愕させられる。代わりに覚えたのは違和感。自身を支えているはずの脚。その一方が、何か痛みと共に大きな衝撃を受け――。
「オオオオオオオオオオオッ‼」
猛るような雄叫びを耳に、鬼神の一柱が地に倒れ伏した。
「……ゴーレム、ですか」
「おっと! 流石は『黙示のヨハネ』殿。慧眼ですな!」
感情の読めぬヨハネの呟きにも、バーティンは笑顔を以て返す。――ゴーレム。土から生み出される魔導人形。
だが今鬼神たちを薙ぎ倒しているその造形は、見るからに無骨な土の人形などとは程遠い。荒々しい挙動、人間には到底不可能と思える膂力で棍棒を振るっているとはいえ、その姿形は紛れもなく人間のそれ。見た目だけで判断するのならヨハネにも普通の人間と区別は付けられなかっただろうと思えるほど精巧な作りをしている。伝承で聞かされるそれとは大きな違いだ。
「……」
更に今ヨハネが思案しているのは、あのゴーレムが前以て用意されていたものではないらしいと言うこと。
バーティンはヨハネの見る前で自らの鞄から材料と思える土を取り出し、それにその場で術式を吹き込んであの人形を作り上げていた。仮初めとはいえ土の人形に命を吹き込むその魔術は協会式の分類で言えば間違いなく高位以上の位階に匹敵する。常識的な基準では例え一体を作るだけでも数か月以上の時間を要するはずだったが。
「吾輩、どういう訳か昔から手先が器用でしてな」
ヨハネの内心を知ってか知らずか、説明を付け加えるバーティン。
「あのクラスのゴレムなら最短で数十秒もあれば仕上げられます。まあ、代わりに数時間程度しか持たぬお粗末なものですが……」
展開される自らの作品の出来栄えを確かめるようにしつつ、顎髭を撫でた。
「この戦いで使い捨てる分には充分な戦力でしょう。鬼神どもを全滅させるのにもそう時間は掛かりませんぞ。――果たしてあの数の鬼どもをどれだけの速さで駆逐できるのか」
そこで視線を移し、にっかりと笑った。
「『黙示のヨハネ』殿の妙技、しっかりとこの目で拝ませていただきたいものですな」
「……なるほど」
含むところを受けてヨハネは前を見据える。どこまでも泰然とした、深い海のような瞳で。
「ではリア・ファレルが竜を落とすのと同時に、私も鬼たちを消し去りましょう」
「おお! それは楽しみですな!」
子どもの様に率直な喜びを見せるバーティン。その無邪気な反応を尻目に、ヨハネはリアが飛び立った空を見上げた。
「――こりゃあまた」
意識に届く声。躍動する大きな力を眼下に感じていた竜は、その気配に反応して目線を上げる。
「中々の大物だねい。協会きっての不肖者も、研鑽だけは真面目に積んでたと見える」
捉えた姿。……自らの視界に浮かぶ、枯れ木のような老婆。彼我の大きさからすれば障害とすら映らぬような矮小な存在を、魔竜は明確な敵意と警戒を以て睨み付ける。老婆がその身に纏う魔力の残り香は、先日の体験も相俟って魔竜がその相手を危険視するのに充分過ぎる要因となっていた。
「使われてる身のあんたに罪はないんだが――」
老婆の言葉。意味の解せぬそれを意識に。
「これも何かの縁だろ。不幸だったと思って諦めておくれ」
いつ奇襲を仕掛けるかと機を窺っていた魔竜は、戦慄する。……自らからすれば石ころにも似ているはずの存在。
「――【ラストステージ】」
目の前のその脆弱な肉体から、自らの身を引き裂くほどの巨大な魔力の流れを感じたからだ。呟くのはただ一言。それだけで巨大なその魔力が更に勢いを増し――!
魔力の変化に気を取られていたこと。元より竜にとっては微細すぎる変化だったために魔竜は気付けなかったが、それ以外にその姿を目にする者があれば間違いなく言葉を失っただろう変化。
「……ふう。やっぱ、若いってのは良いもんさね」
魔術の工程を終えたリアは大きく伸びをする。その姿は、既に数秒前の萎びた枯れ木のような老人の姿ではない。
――瑞々しい若さを持つ艶やかな肉体。伸びた背筋の良さは先ほどとさして変わらないが、それでも背丈は幾許か伸びているように感じられる。老いてなお若々しさを保っていた瞳は更に澄み切り、今紛れもない若者のそれへと変貌。靡く髪にも往年の艶やかさが戻っている。……幻影ではなく。
「普段は見せないんだが、こんな時くらいは良いだろ」
全盛期の姿を取り戻したリアが――その生気に溢れた瞳を魔竜へと向ける。身構える魔竜の反応を前に、嫋やかな指先を一度弾き鳴らす。
「――グルオオオオオオオオッッ⁉」
瞬時。自らを振り落としに掛かる乱気流と暴風に、魔竜は動かす翼で以て全力で抗い体勢を保つ。――動けない。
「――‼」
随所で断続的に、しかし全体として絶え間なく引き起こされている烈風旋風。それらが魔竜の肉体を的確に揺さ振り、体勢の維持に力を注ぐことを余儀なくさせているのだ。強大なその膂力を発揮する余地もなく、高度と向きを保つことだけで精一杯という、およそ身動きの取れない状態にある魔竜の前で。
「それじゃ、あばよ――」
収束されていく魔力。届く声、魔竜は明確に直感する。迫る自らの死から逃れようと死に物狂いで足掻くものの、それにすら応じるように勢いを増す突風から魔竜の身体は逃れる術を持たず――。
刹那に放たれた直線状の竜巻が、もがく魔竜の肉体を中心から撃ち貫いた。
「――」
末期に声にならない叫びを上げ、僅かな痙攣を見せた後に絶命する魔竜。命の灯火を喪った抜け殻も数秒後には光に包まれ、微かな発光を残し霧散する。
「……やはりそれを使いましたか」
その光景に古い記憶を呼び覚まし、ヨハネは暫し感慨に浸っていた。……リアが用いた魔術。
ハリケーンもかくやと言うほどの風圧を一点に集中させて解き放つそれは、大賢者リアの得意技として【風神の指】の名を以て知られていた術法。その威力は見ての通り。天才的な独創性を以て描かれた術式の上に構築された独自魔術は、決して低くはない格の竜種さえ一撃で屠ることを可能にする。
「であれば私も、それなりのものを見せなければなりませんね」
視線を空から地平へと戻した――ヨハネが蠢く鬼たちを見遣る。
「〝我が右手は罪を行う者たちを赦さず、剣は、地上で罪無き人々の血を流した者たちを逃しはしない〟――」
聖節の詠唱。脈動する魔力の波が、対象となる島全体を覆うように広がっていく。
「これは――」
息を呑むバーティンの声が届く。……その目で確かめるまでもない。島の上空に無数と言える数の魔力が発生し、それに気付いた鬼たちがざわめきを放っている。
「――貴方たちの犯した罪の数だけ、主の怒りが降り注ぐ」
誰に聞かせるでもなく、静かに呟かれた言葉。
「贖罪と懺悔の中で――身に宿る罪を数えなさい」
清廉な声が空中に溶ける。その残響を合図としてか、停滞する空中から一斉に鬼たちに向けて射出されたのは、輝くほどに白い炎の剣。
「「――‼」」
のべつ幕無しに突き立てられていくその刃が――地上を埋め尽くしていたはずの鬼たちを凄まじい勢いで駆逐していく。避けようとする者、防ごうとする者、陣地である岩陰に隠れる者……その一切の抵抗を無にするかの如く振り続ける剣の雨。躱したその身を真上から突き刺し、防ごうとしたその腕を敢えなく貫き、大地を同じ純白の炎で埋め尽くして、それでもなお止まずに豪雨の如く降り頻る。
僅か十秒ほどの間隔が空いた後――炎が嘗め切った島の大地に、動いている鬼の影はただ一つも見当たらなかった。
「――」
「さて……露払いは終えました」
言葉もないバーティンの脇。覆いを取り払い、車椅子から立ち上がるその影に、ヨハネは言葉を掛ける。粛々と。
「頼みましたよ。ユダ」
「――お任せ下さい」
溌剌とした声。先ほどまで全身を包帯で巻かれていた人物とは思えない力強さ。
「執行機関の№0と共にこの島の深部へ行き、『永久の魔』の復活を阻止すること。それが貴女の使命です」
「存じております」
その頭に乗せられた冠に構わぬよう、深く拝礼した。
「この身体も命も、全ては教皇様の為に――」
「――圧巻ですな」
孤島を覆う異形たちの殲滅。船室の真上。最も見晴らしのいい位置からそれらの様子を眺めていたのは、ヨハン。
「……まるで舞台仕掛けのマジックショーだな」
「そうですな。ですが、これで主たる障害は消えました」
「ああ」
上からの声を受けて、緋神は自らの傍らに立つそれに目を遣る。機械仕掛けの箱の中にて幾つもの制御装置に繋がれた体躯。――幼い。常人から見ればただの少女であるとも思えるような外見。しかしその内に見た目とは比較にならぬほどの凶悪な性能が秘められていることを、№1として緋神は良く知っている。
「――№0」
「……ワンちゃん?」
それらの制御装置が取り外されると共に。箱の内から答えるのは、容姿に違うことなき幼い声。
「情報は端末に送った通りだ。――『永久の魔』の封印を解こうとしている輩を殺せ」
「……犯罪者なの?」
「ああ」
「……なら、好きにしても良いんだね」
未だ夢現のような。しかして送られた薬剤により急速に意識を取り戻しつつあるその狂気に、緋神は重ねて声を放つ。
「……標的の殺害を最優先しろ。同行者には手を出すな」
「はぁい。――今度もまた、楽しいと良いなぁ」




