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第十七.五節 外

 

「――ゲートはまだ開かんのかッッ‼」


 雷鳴もかくやと言う勢いで怒号を落とすレイガス。受け手となる支部の協会員は身を竦ませ、限界までその身体を縮ませながら答える。


「は、はい! 手を尽くしてはいるのですが、何分これまでに例のない事態でして、どうしても接続が回復せず――」


 答弁を耳にしつつレイガスは内心で舌を打つ。――例がない? 前例の残る事態にしか対処できないというのなら、そんな協会員は端から置いておく意味がない。何の為に日頃から人員を割いてゲートの管理役を設置していると思っているのか。


 現状の態度を見れば、目の前の人間たちが普段如何に備え付けの護りに寄り掛かって安楽な内容を仕事としてきたのかが浮き彫りとなる。……支部と本山とを繋ぐ結節点。誰の目から見ても要所と言えるだろうゲートの管理を任された術師がこれとは、レイガスの予想を上回る凋落振りである。


「はっはっは。まあまあレイガス殿。彼らも一生懸命やっていることですし、我々が焦っても仕方のないことでしょう」


 その間に言葉を以て割って入ったのは、アル。傍目から見ても安堵したように引き下がる協会員を尻目に、落ち着いた足取りでレイガスの前に立って見せる。


「幸い今本山には《救世の英雄》たちとリア殿、秋光殿もいます。彼らに任せるのであれば不安と言うこともないのでは?」

「……貴様、賢者の誇りというものが無いのか?」


 普段と変わらぬ顔つきでそんなことを言ってのける若き四賢者の態度に、レイガスは募らせた苛立ちを隠そうともせず言う。


「大結界の綻びを突かれてまんまと本山内に侵入を許した挙句、部外者を頼みにしろだと?」

「プライドだけで事が済むのなら、私としても是非そうしたいところですがな」


 レイガスの怒りに些かも動じることなく――あくまで平静にアルは言ってのける。


「生憎今の我々にできることは多くはありません。気負わず待つことが一番でしょう。レイガス殿も、そもそも彼らを戦力として扱うことに賛同していたではありませんか。今更何が不満なのです?」

「……」


 対応としてレイガスは沈黙する。それは目の前の弱卒に対し、弁論での不利を認めたが故ではない。


 確かにレイガスは夜月東以下三名、《救世の英雄》らを九鬼永仙、及び凶王打倒の為に戦力として活用することを提案した。その点から言えばアルの言うことに一抹の理がないわけでもない。


 ――但し、レイガスが是認したのはあくまで協会が主導的な立場に立って彼らを運用するという事例についてだ。力を借りるという行為自体が同じでも、利用するのと頼みにするのとではまるで内容が変わってくる。


 それを言わなくては分からないようでは、言っても理解を得ないと判断した故の事。


「復旧を急げ。――一秒たりとも遅らせるな」




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