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※旧版につき閲覧非推奨 彼方を見るものたちへ  作者: 二立三析
第四章 魔術協会での生活
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第三十.五節 次なる確認

 

 ――暗がりの中。


「……」


 四人の列席者を前にして、男――永仙は何かを考えていた。


「――王二人を同行させておきながら、結局何の口約束も果たせないとは……」


 呆れ果てたといった嫌味たっぷりの口調。追及の手を少しも緩めようとはせず、賢王は永仙に向けてそう言ってくる。


「一度襲撃してしくじったとなれば、協会は更に防備を固めてくるでしょう。……恐らく、彼らが協会の外に出ることは最早二度とない」


 つらつらと並べ立てられる言の葉。


「そんな状況で、どう貴方の目的とやらを達成するつもりなのか、是非聞かせて戴きたいものですね」

「……」


 言葉を受けた永仙は黙ったままだ。弁明も、反論もせず、ただ何かを考えている。


「……調査は芳しくない」


 そのままでは埒が明かないと見て取ったのか、紅い眼の少女――魔王がそう口を挟む。


「部下を始めとして情報の収集に当たらせてはいるが、まるで足取りが掴めない。本当にそんな集団が存在するのかどうか、怪しむほどにな」

「……三大組織が何れも被害を受けていることは、確認できたのだろう?」

「ああ」

「ならばそれで充分なはずだ」

「だがお前の仮説が正しいとしても、何時までかは分からない。それが分からない中で今回のような下手を打つようでは、我々もお前への信頼を落とさざるを得ない」

「この輩に端から信頼などあるものですか」

「……」


 永仙は暫し黙り、漸くその口を開いた。


「大凡の見当はついている。それからすればまだ多少の猶予はあるはずだ」

「――具体的には?」

「――次、組織の幹部たちが会合を開く頃だろう」


 静かな確信に満ちた台詞。


「ああまで見事に襲撃をやってのけたということは、間違いなく敵方には組織内部の情勢に詳しい者がいる。そして三組織が同時に幾許かでも手薄になり、かつ事前に予測が付けられるのはその時を置いて他にない」

「……なるほどな」

「だから、その猶予とやらにかまけて本命を逃すようでは意味がないと、そう言っているのでしょう」


 魔王の頷きに対し、賢王はやや苛立ちを込めているようにして己が主張を通そうと試みる。


「一刻も早く器の処理を――」

「……その前に、確かめたいことがある」

「確かめたいこと?」

「そうだ」


 あの少女が生み出した、魔術――。


 あれは確かに、九鬼永仙と黄泉示との間にのみその効力を発揮していた。……即ち、少女自身の身を守ることはしていなかった。


 何より問題なのはあのときに生まれた力の感触。仮にそうなのだとすれば、あのときすぐにでも殺さなければならないほど事態は急を要しているが。


「……」


 恐らくあの力はそれとは違う。少なくともその様に永仙には感じられた。――だとすれば、あれは果たして何を意味しているのか。


「その為なら機を逃しても良かったと? 話になりませんね」

「機は、過ぎたわけではない」


 ――そろそろか。圧を増してきた賢王の非難に対し、永仙は特効薬となる言葉を口にする。面を上げ。


「魔術協会の長であったのは私だ。その強みも、弱所も、全てを知り抜いている」

「――何を――」

「大結界の一部に設けておいた抜け穴がある」


 告げた一言に、賢王だけではない。その場の全員が息を呑んだのが分かる。


「そこを突けば本山への侵入は十二分に可能だろう。警戒されている今でもな」

「……大賢者だった頃から、こうなることを見越していたと言うのか?」

「一つの可能性としてだ。奴らの存在がより確かなものとなってからは、考えられるだけの手立ては既に打ってある。それに――」


 そこからはどこか自嘲気に。


「いずれどの道片付けなければならんことだ。今のままそのときを迎えたのでは、思わぬ失策を招く恐れがあるからな」

「――失策ですか。私としては別段、どうなろうと構わないのですがね」

「そのツケがお前たちにまで回ってくるようなことになれば、それはお前としても甚だ不服だろう」

「……」

「――分かった」


 賢王の沈黙を受け。永仙の務めた役回りに判定を下すのは魔王。


「今一度お前の言葉を信じよう。器を壊すか否かの判断も、お前に任せる」

「魔王! 何を――!」

「だがお前の判断でもし我々が不利益を被るようなことがあれば、そのときはどうなるか」


 切られた言葉。それがある種の勧告であることを、永仙は重々に理解している。


「分かっているな?」

「ああ」

「ならばいい。――事は我々の全体に及ぶ」


 永仙とのやり取りを終えた魔王が、その場の凶王たち全員へ告げる。


「だとすれば多少の不満はあれど、我々が取るべき道は一つしかない。その理解で充分だ」

「……確かめることなどせず、殺せばそれだけで片が付くことでしょうに」

「確かにな。だが殺すことが我々の本懐であるわけでもない」

「温いですね。魔王」

「甘さも必要だ。特に、強者を取り纏める段にあってはな」


 どこまでも冷厳な声音でそう言って。魔王は合議の終わりを告げた。



この節で四章は最後です。次節から第五章に移ります。

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