第二十五.五節 外出準備
――執務室にて。
「段取りは以上だ」
話し終えた秋光。蔭水黄泉示たちの外出を翌日に控え、最後の確認をしている。
「万が一にも彼らの傍を離れることのないようにと、支部長たちに伝えてくれ」
「はい」
答えるのは櫻御門葵。自らの補佐官である彼女にも、秋光は蔭水黄泉示たちの護衛についてもらうこととしていた。葵は現協会において数少ない最上級魔導師の一人。相手が凶王派と雖も、彼女だけで大抵の技能者に後れを取ることはないが。
「あたしまで出張らせるとはね」
その隣。渡された予定表を眺めているのは、リア。
「……手を掛けさせることになって済まない。だが、彼らの安全のためには――」
「感心してんのさ。あんたが、ここまで思い切った判断を出してきたことにね」
落ちくぼんだ眼窩が秋光を見る。
「任せときな。いざとなりゃ、あたしが出てやるさ」
「……頼む」
〝……リア〟
〝何だい?〟
目の前の二人の様子を見つつ、秋光が思い起こすのは昨日の遣り取り。
〝頼めるか? 彼らの護衛を〟
〝支部長が三人出て、葵が出て〟
リアが数えるのは既に決定した人選。
〝あたしまで出張る必要があんのかい?〟
〝……今回の件では万全を期したい〟
秋光はその考えを口にする。
〝永仙はこちらの手の内を知っている。相手方の動機が分からない以上、最悪凶王が出てくる可能性も否定できない〟
〝……そこまでするかね?〟
あの子どもたちに、と。そう言いたげなリア。気持ちは秋光としても良く推察できる。
〝あくまで可能性の問題だ。……この状況下で、万が一にも主導権を握られるわけにはいかない〟
〝……分かったよ〟
最長老にして元は大賢者を務めた経験もあるリアならば、例え相手が凶王であっても渡り合える。支部長三人、最上級魔導師一人、実力はトップを誇る四賢者……。
注ぎ込める戦力としてはここが限界だろう。その他の状況を踏まえてもこれ以上の人員を割くことは、費用対効果の点からして現実的に見合わない。
「葵とあたしは隠れて見張るってことで良いんだね」
「ああ。そうしてくれ」
目的はあくまで彼らの息抜きだ。目に見える同行者を増やして、彼らが勝ち取った時間まで仰々しいものにすることはしたくない。突如として一変した環境にて彼らの見せた成長に対して、せめてその程度の心遣いはあっても良いはずだった。
「お手数おかけします。リア様」
「なに。たまにはいいさ。あんたとしてもいい経験になるだろうし、しっかり――」




