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怪異探究行

一人共食い考

作者: 藤代京


 最近のなろうのエッセイジャンルを見ているとなかなかに共食い感があって楽しい。


 水槽のなかにザリガニ一杯放り込んで、水も換えず餌も与えず飼育したらこうなりましたって感じで面白い。


 恐らく外との循環が上手く行ってないせいで、自家中毒にも似た精神的共食い状態になっていると思われる。


 人ってアンデスの聖餐みたいな状況に放り込まない限りなかなか物理的な共食いって始めないけど、ちょっと外部との循環を阻害しただけで精神的な共食い始めるのな。


 と考えればかつてのあさま山荘事件、あれは孤絶した環境で皆が精神的な共食いをやらかした果てなのだなと解釈するとすっきりと納得できる。


 というかカルト宗教とか全部共食いしてないか?


 光と音を遮断すると人は簡単に厳格を見始めるように、普通に生活してる分にはサピエンスとして振る舞えるのだけど、ちょっと循環を遮断してやると脳の中のザリガニが騒ぎ出すのだろう。


であるならば、引きこもりってヤバくないか?


 外部との循環が途絶してるくせに共食いする相手がいないんだぜ。


 ネットで外とつながってるやんって意見もあるだろうけど、それではまったく足りてないってのはいちいち事例をあげるまでもないだろう。


 家に引き込もっていても親と顔を会わせるなら親を共食いするのだろうけど、部屋に籠って親とも顔を会わせないとなると循環が途絶して脳のなかのザリガニにフリーパス与えている状況なのに共食いする相手がいない。


 だから自分で自分を食うしかない。


 引きこもりの問題ってここよな。


 社会参画してないとか生産性ないとかそれはどうでもいいことで、ザリガニに自分を食い荒らされることこそが問題よな。


 さっきも言ったけど水槽にザリガニ入れて水も換えず餌もやらず1年放置したらどうなるか。

 

 それを水槽でなく自分の精神でやってるのが引きこもりなんだ。


 しかも水槽放置なら餌なくて死ぬけど、引きこもりの場合は彼ら自身が水槽であり餌なもんだから極限まで食い荒らされる。


 水は糞尿で汚れ苔だか菌だかもわからんもので不気味な色に濁り、引きこもりの体のあちこちに卵が産み付けられ小さいザリガニやら大きいザリガニやらが無数に彼らの集って肉を食んでいる。


それが引きこもりの心象風景だ。


 えー、そんなん社会復帰できる訳ないじゃん。


 無理無理ぜったい無理。


 メンタルがもうゾンビ以下にぼろぼろになってるじゃん。


 

 と同時に地獄ってのは地の果てや奈落の底ではなく、壁一枚隔てた隣にあるんだなと実感する。


 一人、部屋のなかで自分で自分を食ってるんだぜ。しかも自分では気づかないから何がどう致命的なのか当の本人はまったく分からないと言う。


 こんなえげつないの地獄絵巻の責め苦になかったぜ。


 そんなんが何万何十万といるんだから、現代日本ってなかなかのディストピアよな。


 

 何故かは知らぬがアウシュビッツのような絶滅収容所ってまた形を変えて歴史に現れるから、と根拠のない確信を前から持っていただけど、俺が気づかなかっただけでとっくの昔に日本に出現していたのだな。


 引きこもりの一人共食いと言う形で。


 引きこもりやニートの自立支援が上手くいかないのも道理よな。


 これはそういう問題ではない、本質が違う。


 民族浄化とかホロコーストとかジェノサイドに属する領域だわ、これは。


 しかもジェノサイドする相手がいないセルフジェノサイドだから終わりも果てもない。


 20年30年と積み重なったらポル・ポトのジェノサイドを軽く越えるだろう。


 


 現代日本ってなかなかに素敵なキリングフィールドだったのだな。


 

 

 最近引っ込んでいた世間へのいわれない悪意が首をもたげてくる。



 さあ、これを読んでいる貴方や貴女。


 ちょっと学校や会社行くの止めて、引き込もってみようか。


 なに、大丈夫、大したことはない。


 ちょっと脳の中でザリガニが蠢きだす、それだけだから。




 



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