詐欺師の秘密1
「飯屋ってどこ行くの?」
「いつも一仕事終えた後に行く、とっておきの行きつけのお店です」
「高いとこ?」
「ええ、高いです」
「どれぐらい?」
「一食で金貨10枚位飛びますよ」
「まじかよ」
そんなこんなで店に着く。詐欺師が扉を開くとそこは、今まで歩いてきた道とは完全に別世界、煌びやかでありながら静か……兎に角、とてつもなく高そうな店だった。
「扉を開けるとそこは別世界だった」
「いらっしゃいませ」
「(うわーボーイさんじゃん!まじで高そうな雰囲気だな、ってか事実高いのか)」
「先日、遠方通話機で予約したものですが」
「いつもありがとうございます。席の御用意出来ておりますので案内させていただきます」
「お願いします。キョロキョロしてないで、行きますよ」
「はーい」
2人が席に着くと、直ぐにドリンクが運ばれてきた。
「さぁ何食べます?こちらから選んでくださいね」
詐欺師は少年にメニューを渡す。
「あんたは?」
「私はいつも同じ物を食べてるのでメニュー要らないんです」
「ふーん」
少年はメニューを開く。
「え゛」
「どうしました?」
「いや、相変わらずのネーミングセンスだなと」
「ん?例えばなんです?」
「ニック・アゲ・ターヤツ(兎)とか、ギョ・ヤイタ(入荷次第)とかさぁ」
「そんなもんですよ」
「そんなもんか……」
「注文は決まりましたか?」
「んー、じゃあこの、リュウゼ・ツヤイタってので」
「奇遇ですね、私がいつも食べてるやつですよ、それ」
「あ、そうなの?ってか適当に選んだんだけど、何これ」
「ドラゴンの舌ですよ。この街ではここでしか食べられない高級品です」
「まさかとは思ったが、そのまさかだったわ」
「ご注意はお決まりですか?」
「ええ、いつものを2つで」
「かしこまりました。では、リョ・ウリメイカイ・タヤツを下げさせていただきます」
「楽しみだなー」
しばらくして料理は運ばれてきた。2人は料理に舌鼓をうち、会話を楽しんでいた。
「ところで、貴方は今後どうしますか?」
「んー、明日からはさすがに神様の言う化け物?倒す為に情報集めかなぁ」
「では、私が情報を持っているとしたらどうします?」
「教えてよ」
「まぁ、貴方ならそう言いますよね。では順序良くお話ししましょうか」
「まず化け物の話です」
「(コクコク)」
「化け物はこの国のサイホ・クタンの更に向こう。海に住んでいます」
「めっちゃ遠いな」
「まぁ端と端ですからね」
「それでそれで?」
「国は討伐に乗り出しています」
「でも勝てないよなぁ」
「ええ、だから転移者が呼ばれているわけですからね」
「それだけ?」
「いえ、それでですね。実は、国の討伐プランに私も一枚噛んでましてね」
「と、言うと?」
「貴方の現れた森、覚えてますか?」
「もちろん」
「そこを東へ向かうと、この国唯一の油田があります」
「え、化け物関係なくね?」
「いえいえ、武器、船の動力、それらの為に現在需要は跳ね上がっています」
「へーなるほど」
「けれども、一般生活の為に使うと討伐に回せるのは微量なんです」
「うん」
「そこで国は現在、新しい油田を探しています」
「化け物の情報が欲しいんだけど」
「ここからが大切なんですよ」
「はーい」
「私が噛んでいると言ったのは、国に労働力を提供している事です」
「ん?」
「私自身は何もせずに、彼らの給金一部が入ってくるんですよ」
「嫌な予感してきた」
「彼らが誰か分かりましたか?」
「……転移者か」
「正解です!」
「あんたやべぇわ」
「では、貴方も働いてきて下さいね」
「え?」
「分からないんですか?貴方はもう騙されてるんですよ」
詐欺師は笑ってそう言った。
ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。