ゴミスキルの使い方4
「さぁ着きましたよ」
「ん、ここってゲッスの控え室?」
「そうですよ。では行きましょう」
「ん」
詐欺師はノックをし、ゲッスの控え室に入る。
「失礼します」
「あ゛ぁ?誰だテメェ」
「初めまして、私は薬師のヤック・ウリーと申します」
「薬師が何の用だァ!」
「実はザッコーさんの事でお話がありまして」
「あ゛ぁ?」
「あなたはザッコーさんの事をどう思いますか?」
「ただの雑魚だろ!あんなやつ!今日はあいつをいたぶってゴールド冒険者を舐めたことを後悔させてやる!」
「そのザッコーさんが雑魚で無くなったとしたら、貴方はどうしますか?」
「んなことあるわけねぇだろ!」
「それがあるんです」
「どぉゆう事だぁ゛?」
「実は私、彼にドーピング剤を渡しました」
それを聞きゲッスは剣を詐欺師に突き付けた。
「なにやってくれてんだぁ゛ぁ゛??」
「いえ、私は貴方の味方ですよ」
「ふざけた事ぬかしてっと首ハネッぞ?」
「まずはお話をお聞き下さい。最後に気に入らなければ首を刎ねるなりご自由に。損はさせませんよ」
「いいだろう、話しは聞いてやる。ただし!気に入らなかったらこの場で首ハネッからな」
そう言ってゲッスは、剣を威嚇するように床に叩き立てる。
「ありがとうございます。まずはこちらをご覧ください。私とザッコーさんの間で取り交わした契約書です」
「契約書
この契約書にサイン及び血判を記す者(以下、甲とする)は下記の内容に同意したものとみなす
1.この契約書は乙から提供されるもの(以下、丙とする)に関する契約書である
2.甲が、この契約書を用いて甲と契約を結ぶ者(以下、乙とする)、の不利益になる事実を第3者に伝える事を禁ずる
3.甲が第3者に契約内容、及び丙の存在を伝えることを禁ずる。ただし、丙による身体への悪影響が認められた場合、医師に情報、及び丙の空ビンを提供すること
4.乙により提供された丙による体への悪影響が認められた場合、乙は甲が受けた不利益を補填するものとする
5.決闘中の甲を乙が観察し、そのデータを活用する事が出来るものとする
6.この契約における丙の受け渡しに金銭は発生しないものとする
7.乙が丙による甲のステータス変化2倍を保証するかわり、甲は勝利時の決闘賞金5割を乙への報酬とする
名前_ザッコー_๑」
契約書に目を通したゲッスは怒っていた。
「ザッコーのやろぉ゛ぉ゛ぉ゛!!!ふっざけんなよぉ゛!」
「見てお分かりでしょうが、彼は賞金の5割で薬を買っています」
「で、お前のどこが俺の味方だぁ゛?」
「こちらに薬を用意しました」
「そうじゃねぇ、なんであいつに薬を渡した!俺の味方だっつうならよ、俺だけに薬渡せばいいだろ!」
「私にも目的があるからです」
「あ゛ぁ?」
「私は新しい薬を開発しました。その薬はザッコーさんに渡したものではありません」
「で?」
「貴方に持ってきた薬、それが開発した物です」
「で?」
「ザッコーさんに渡した薬の効果は、徐々にステータスが上がり、最終的に2倍をお約束するものです」
「で?」
「貴方に渡した薬の効果は、相手のステータス変化に合わせて自分のステータスを変化させる薬です」
「あ゛?」
ここに来て初めてゲッスは薬に興味を持ったようだった
「つまり、相手のステータスが1.5倍になれば、こちらも1.5倍。2倍になればこちらも2倍にそんな薬です」
「いいじゃねぇか」
「なので、データを取るのに貴方だけに飲んでいただいても効果が出ないのです。ザッコーさんにステータスを上げていただかないとね。私の目的はデータですから」
「なるほどな、わかったぜ!」
「薬のお陰で、ザッコーさんは互角以上の戦いが出来ると思っているでしょう」
「楽しくなってきたぜぇ!いたぶりがいがあるなぁ゛!」
「お気に召したなら何よりです」
「早速薬くれよ!」
「その前に契約書に記名と血判いただけますか?」
「あ゛ぁ?なんでだ」
「実は…」
詐欺師はスキルの説明を行う。
「めんどくせぇなぁ゛」
「説明したようにスキルの効果は絶対です。もし薬の悪影響がでた時、私が逃げたら困りますよね?」
「…チィッ!わかった、書いてやるよ!」
「ありがとうございます。ではこちらをよく読んでお書き下さい」
「契約書
この契約書にサイン及び血判を記す者(以下、甲とする)は下記の内容に同意したものとみなす
1.この契約書は乙から提供されるもの(以下、丙とする)に関する契約書である
2.甲が、この契約書を用いて甲と契約を結ぶ者(以下、乙とする)、の不利益になる事実を第3者に伝える事を禁ずる
3.甲が第3者に契約内容、及び丙の存在を伝えることを禁ずる。ただし、丙による身体への悪影響が認められた場合、医師に情報、及び丙の空ビンを提供すること
4.乙により提供された丙による体への悪影響が認められた場合、乙は甲が受けた不利益を補填するものとする
5.決闘中の甲を乙が観察し、そのデータを活用する事が出来るものとする
6.この契約における丙の受け渡しに金銭は発生しないものとする
7.この決闘時において、乙が丙による甲のステータスへの影響を保証するかわり、甲は勝利時の決闘賞金5割を乙への報酬とする
8.乙は丙が完成した場合、甲へ永続的に丙を無償で提供するものとする
名前______印」
「勝ったら金取られんのか!?」
「よく読んでください。いただいたお金は薬の開発費に回します。結果、薬が完全に完成したら貴方は永久にこの薬を手にできますよ」
「へぇ、悪くねぇなぁ」
「でしょう?」
「この契約乗った!!」
「ありがとうございます」
こうしてゲッスは契約書にサイン、血判を印した。
「では、こちらが薬です。試合開始直前にお飲みください。勝利時、また報酬をいただきに参りますね」
こうして詐欺師と少年はゲッスの控え室を後にした。
「さて、我々は結果が出るのを待ちましょうかね」
「大したもんだ」
「お褒めに預かり光栄です」
「でもよ、大した額の儲けにならないんじゃ無いか?」
「私の下調べによるとザッコーはその性格的にかなりの嫌われ者です」
「ん、だろうな」
「そんな奴がボコボコにされる、さらに相手に賭ければ少額とはいえ、99.99%勝てるギャンブル。沢山賭ける人いそうじゃ無いですか?」
「…理解したよ」
「分かっていただけて何よりです」
その後、ゲッスが勝利した事は言うまでもない。
「さてゲッスさん、賞金をいただきに来ましたよ」
「おう、待ってたぜ。ほら半額の金貨100枚だ」
「(昨日街を見て回ってなんとなくだけど、金貨1枚で約1万円って感じだったよな?って事は約100万円!?)」
「ありがとうございます。では私はこれで失礼しますね」
こうして、詐欺師はあっさりとジュース2本を金貨100枚へ変えてしまった。
「さて、お金も入りましたし、少し贅沢な晩御飯にしましょうか。奢りますよ」
「まじで?やったー」
こうして2人は店へと向かった。