ゴミスキルの使い方1
ここまで読んでいただきありがとうございます!
どうぞ続きをお楽しみ下さい。
詐欺師の凄さを実感した少年、お茶を飲みながらふと疑問に思ったことを聞いてみた。
「そう言えばあんたのスキルはなんなの?」
「それ聞いて素直に教えると思います?」
「だよなー」
「まぁ良いですけどね」
「え、いいの?なんで?」
「聞けば分かりますよ」
「じゃあさっそく教えてくれ」
「分かりました。私のスキルは《絶対契約履行(破れない約束)Ⅴ》です。名前の通りですが契約を交わした相手は契約を破りたくても破れなくなる。そんなスキルです」
「読み方がだせぇ」
「え?読み方?」
「いや、なんでも無い、続けてくれ」
「このスキルはまず発動条件があります」
「ほーほー」
「一つ目は、相手と結ぶ契約を紙に記すこと」
「まぁ契約だしな」
「二つ目は、その紙に直接、相手直筆サインを書いてもらい、更に血判を押してもらうこと」
「契約書っぽいな」
「三つ目は、相手にこのスキルの発動条件を伝えること」
「ハ◯ターハン◯ーのゲン◯ルーみたいなスキルだな」
「更にルールがあります。契約書に相手がサインした時に書かれている内容のみに、スキルは効果を示す。ですね、後から書き足しても効果は発動しません」
「はー成る程ね……」
「言うまでもないことですが、物理的に不可能なことを書いたらその文言は無効です」
「デス◯ートかよ」
「これが私のスキルです。聞いてみてどうでした?」
「…はっきり言ってゴミスキルじゃね?」
「おっしゃる通りです。通常ならこんなスキル無くても普通契約書を交わしたら遵守されます。破れば国家直属法管理者に罰されますからね」
「警察みたいな組織もあるんだな」
「まぁそれでも詐欺師の私には役立つのスキルですよ」
「そのスキルで?」
「勿論」
「使い方が全くわからん、騙す様な文言書いたらサインして貰えんだろ」
「ゴミにはゴミの良さがあるんですよ」
そう言って微笑む詐欺師を見て少年はそんなもんか、とゴミスキルの使い方について考えるのをやめた。
「ところでさ、そろそろ街に行きたいんだけど道教えてくんね?」
「良いですよ」
こうして少年は詐欺師に連れられ森の中を進む。
「そう言えばさ、前の転移者たちは借金漬けにしたのに俺はしないの?」
「あなたには出会い頭に詐欺師ってバレましたからね。それにあなたと話していると騙す気なんて無くなりますよ」
「嘘くせー」
「ほんとですよ、スキルなど関係なく出来ればあなたとコンビを組みたいぐらいですよ」
「まぁあんたとコンビ組んだら楽しそうではあるな、でも俺化け物倒す役目あるし」
「分かってますよ」
そんな事を話しながら数十分歩くと街の入り口が見えてきた。
「お、あれが街か」
「そうです、あれがこの国最南下の街、サイナ・ンカです」
「ネーミングセンスやばいぞこの世界」
「そうですか?」
入り口に着くと門番に声をかけられた。
「おぉ、これはこれは木こり殿、久方ぶりですな」
「お久しぶりです。今日は木を売りに来たんじゃ無いんですよ」
「ん?と、言う事はまたですかな?」
「はい、またです」
「分かりました。どうぞお通りください」
そう言って門番は門を開く。
街に入ると綺麗な石畳の美しい街だった。
「はーイタリアのイメージこんな感じだわ。行ったこと無いけど」
「さて、ギルドに行きましょうか」
「うわー急に異世界っぽい」
詐欺師に連れられて大通りを歩く。
最南下とは言うが消して田舎では無く、通りには沢山の出店が並び活気に溢れている。
「あまりキョロキョロするとスリにあいますよ」
「うわー外国っぽい…」
歩くこと5分、一際目立つ建物に辿り着いた。
「さぁ着きましたよ」
「でか!なんかアニメとかで見るザ・ギルドって感じ」
「さ、入りましょ」
中に入ると街とは違う熱気に溢れていた。
「ではあちらで冒険者登録してきてください。私はあっちの待合所に居ますから」
「はーい」
それだけ言うと詐欺師は待合所に向かい歩く。途中大きなボードの前を通る。このボードには依頼書やギルドからのお知らせが貼ってある。
ボードの前には人が異常なぐらい集まっていた。
「失礼、ボードに何かあるんでしょうか」
近くにいた冒険者に声をかける。
「あぁ、実は万年ブロンズクラスのガキがゴールドランクの怒りをかってな、ギルド公認の決闘をするんだとよ。それをネタに賭けしてんだよ」
「へぇ、ありがとうございます」
それだけ聞くと詐欺師は待合所へ向かった。
待合所で待つこと1時間、ようやく少年は帰ってきた。
「おまたせー」
「おや、おかえりなさい」
「ギルド登録って意外と長いのな」
「まぁ仕方ありませんね」
「じゃあ俺はとりあえずこれからの宿探しするけどあんたはもう帰るの?」
「いえ、折角街まで来たので仕事をして帰りますよ」
「え、それは詐欺ってこと?」
「もちろんじゃないですか。良いネタを見つけたのでね。止めますか?」
「いや、ぶっちゃけあんたが誰騙そうが興味無い。でも仕事内容は興味ある。だから見学していい?」
「あなた変わってますね。まぁ良いですよ」
こうして少年は詐欺師の仕事を見学する事になった。