プロローグ2
タイトルの詐欺師がついに出ますよー
良く晴れた昼下がり、男が1人森の中を歩いている。
森周辺の集落には、この森に関するとある話があった。
晴天時にもかかわらず、一切の前兆無く特大の落雷が落ちると。
これは噂や都市伝説などでは無く事実であった。
この落雷はこの10年で12回、不定期に起きており、集落の人間は巻き込まれては堪らん、と森の中に入る事は無かった。
「前回の時期からするとそろそろですかね」
男は森の中心に空いた大きなクレーターを眺めてそう呟いた。
「まぁ来るまで待ちますか」
そう言って彼はクレーター横に建てられている家に入っていった。
その直後であった。
爆音と共に強い光がクレーターの中心から放たれた。
「あぁ、ちょうど来ましたね」
男は踵を返しクレーターの中心に向かって話しかけた。
「もしもし、どなたかいらっしゃいますか?」
「あ、はーい。こっちー」
「すごい音しましたけど大丈夫ですか?」
「大丈夫ー生きてるー」
そんな話をしていると徐々に光は薄れてきた。
「え?俺服消えてるじゃん。神さまそこは用意しといてよー。裸で転移ってターミ◯ーターじゃん」
「えーと、あなたは??」
「あ、俺は別の世界から神さまに連れられて来た転移者だな。あ、金入った袋はあるや」
「へー!別の世界から、凄いですね。詳しく話し聞いても良いですか?」
「いいよー、その前に服貸してくんない?」
男はすぐ横の家に少年をあげ、服を貸した。
着替えた少年は男に促されるままテーブルに着き男の入れたお茶を飲んでいた。
神さまから貰ったであろう金貨の入った袋は少年の後ろ、壁に掛けて置いておいた。
「まずは自己紹介からさせていただきますね。私はこの森で木こりをしています。名前をーー」
「え?木こり?」
「え?何かおかしなことでも?」
「うん。だってあんた詐欺師でしょ?」
「なんでそう思うんですか?」
「いや、ふつーにスキルで見た」
「……今回は嫌なスキルを持った転移者ですね」
「あ、隠すのやめたの?」
「チートスキルで確認されたら嘘ついてもダメでしょ?」
「確かに!ってえ?今回のって事は他にも転移者いるの?」
「ええ、居ますよ。私が知る限りあなたで13人目ですね」
「まじかーなら俺いらんくね?」
「いやいや、あなたは必要ですよ」
「他の転移者は?戦ってないの?」
「戦えないんですよ」
「ふーん、それで俺が呼ばれたのか」
「おそらくそうでしょう」
「にしてもあんた、やけに転移者に詳しいね」
「…あなたのスキルは何が見えるのですか?」
「ん?今見えてるのはあんたの情報だな」
「内容は?」
「名前と職業、なんか色んなステータス、身長体重、あとはレベルだな」
「そこまで見えるんですね、普通相手の情報見るタイプのスキルは職業や名前、ステータスを無条件に見れたりはしないんですよ」
「さすがチートスキル」
「まぁいいでしょう。それがチートスキルです」
「で、なんで転移者に詳しいの?」
「転移者に聞いたんですよ」
「??」
「最初はたまたまでした。ただ街で転移者に合い話を聞きました」
「(コクコク)」
「それで思ったんです。あぁこの世界の事を知らない転移者は格好のカモだなと」
「(コクコク)」
「で、まず彼を騙して借金漬けにしました。その後、彼がこの世界に来たと言う場所にヤマをはっていました。そしたら2人目が来たんです。あとは情報を聞く、借金漬けにするの繰り返しですよ」
「転移者はチートスキル持ちだろ?良く騙せたな」
「転移者は勇者の様な未来を想像するんですかね?過去12人は皆戦闘スキルでしたよ」
「なら良く生きてるな」
「転移者がいくらチートスキルを持っていてもレベル1ならたかが知れてますよ。レベルが上がる前に借金漬けにしてしまえばモンスターと戦ってレベル上げする暇も無く労働ですからね」
「あんた初対面の俺に良くそこまで話せるな」
「ええ、あなたを私の仲間に勧誘しようと思いましてね。仲間になりませんか?」
「えーなんで俺なわけ?」
「あなたのスキルは詐欺師の私としては喉から手が出るほど欲しいんですよ」
「さすがに今の話し聞いてうんとは言わんでしょ」
「ですよね(笑)」
「でも今あんたと会話してそんな詐欺師感無いな。なんか詐欺師っぽいの見せてよ」
「あなた無茶苦茶言いますね……」
「はーやーくー」
「なら詐欺師について話しましょうか」
「おけー」
「あなたは詐欺師をどんな風に思っていますか?」
「嘘ついて騙す人?」
「残念、違います。詐欺師は相手の動きをコントロールする人です。嘘はその一部でしかありません。結果相手が損をし、詐欺師は徳をする。これで詐欺の成立です」
「例えば?」
「では今から貴方の動きをコントロールしましょう」
「それ聞いてコントロールされたら俺はただのバカだな」
「今貴方は騙されない様になっている状態ですね」
「もちろん」
「では、貴方を振り向かせて見せましょう。できれば私の勝ちってことで」
「やってみろ!」
「ではさっそく。あ、後ろの金貨袋無くなってますよ?」
「いや、さすがにそれで後ろは向かんだろ」
「ふふっ、貴方が振り向かない事は分かってましたよ?振り向かない様に動きをコントロールしたんですよ」
「そんなのいくらでも言える後出しじゃん」
「いえいえ、詐欺は成立しましたよ?貴方を振り向かせない。このお陰で私の仲間が貴方の金貨袋を容易に盗み出したのですから」
詐欺師の言葉を聞き少年は慌て金貨袋を確認した、いや、後ろを振り向かされた。
壁にはしっかりと金貨袋がぶら下がっていた。
「はい、貴方後ろ向きましたね。私の勝ちです」
「はぁぁ、つい後ろ向いちゃったわ。すげーわ、詐欺師」
少年は感嘆のため息をつき、詐欺師の入れたお茶をゆっくりと啜った。