情報屋1
ダンヤーが宿を探し始めて5分もしないうちに見るからに怪しい1人の人間が声をかけてきた。
「もし、そこの旦那。 情報屋をお探しでは?」
そう声をかけられダンヤーは驚きを隠せなかった。
「なぜそれを?」
「ええ、私がその情報屋なんですがねぇ、仲間に私たちの客を見つけるようなスキル持ちがいるんでさぁ」
「それは便利ですね。 ですが申し訳ありません、前からお世話になっている情報屋を利用しようと考えていましてね」
「それは残念でさぁ。 まぁ何か機会がありましたらよろしくお願いしますぜ」
「ええ、その時はぜひお願いしますよ」
その後、情報屋を名乗る男は人込みへと消えていった。
「さて、宿探しを再開しますか」
再び歩き始めて10分ほどたったころ、どこからともなく食欲を刺激するいい匂いがする。
「そういえば昼食がまだでしたね......」
時計を見るともう13時30分を回っていた。
匂いのする方を見るとそこには定食屋と思われる店があった。
人こそ並んではいないものの席は半数近く埋まっていた。
「ここで済ませてしまいますか……」
ダンヤーは店に入り注文をする。
隣の席に座っていたのは偶然にも馬車で一緒だった家族だった。
「ねーねー、テイシおばちゃん。 僕たちの部屋は上?」
「そうよ、二階の一番奥よ。 隣の部屋にはお客さんが泊まってるからあんまりうるさくしちゃダメよ」
「はーい」
食べ終わっていた子供は退屈していたのだろう。さっさっと二階に上がっていってしまった。
「すみません」
子供と店員の会話を聞いていたダンヤーは店員に声をかけた。
「はいはい、お会計ですか?」
「いえ、ここって宿もやってるんですか?」
「あぁ、やってますよ? 部屋なら空いてますけど宿泊ですか?」
「はい、ちょうど探していたのでよろしければお願いします」
「わかりました。 なら部屋は二階の奥から3番目の部屋を使ってください。 鍵はこれです」
店員は腰から下げていた鍵の束から一本の鍵を差し出した。
「ありがとうございます」
ダンヤーは食事代と部屋代を支払い借りた部屋へ向かった。
「とりあえず宿も見つかりましたし情報屋の所に行きますか」
必要な物だけを手に取り、ダンヤーは情報屋の元に向かった。
情報屋は宿から歩いて20分ほどの所にあった。
「失礼します。 ホウさんはいらっしゃいますか?」
ダンヤーは扉を開け中に向かって声をかける。
「はいよー、今いくよ」
そう言って奥から現れた男はダンヤーを見て笑いながら声をかけてきた。
「おお!ダンヤーじゃねぇか。 久しぶりだな。 今日はどした? 引っ越してからこっちに顔出すのはじめてじゃねぇか」
「ええ、実はこの世界に来てから初めての大仕事を頂きまして、情報を買いに来ました」
「大仕事ねぇ、で、ハッキリなんの情報がいるんだ?」
「私が引っ越した先、ヘンキョの前領主、現領主のありったけの情報を頂きたいです」
それを聞いてホウは首を横にふる。
「すまねぇ、その情報は扱ってないな。 ただの情報屋が扱って良いもんじゃねぇよ」
「そうですか」
「ただそういったヤバい情報なんかを扱ってる裏専門の情報屋もいる。 値段は高いがどうしてもなら使ってみるのも手だな。 かなり組織的なグループらしく大体の情報はあるって話だ」
それを聞いたダンヤーはこの街についてすぐに声をかけてきた人を思い出していた。
「……ありがとうこざいます。 それなら少しばかり心当たりがあるので行ってみます」
「気をつけてな」
「はい。 お気遣いありがとうこざいます」
ダンヤーはあの人が声をかけてきた場所に戻る事にした。