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好きになれない  作者: 大久保ひより
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小さなスパイ

母、昌子の色んな行動に脈絡が無いのが怖くて仕方がなかった。


こうすればこうなる、という正解や法則が子どものサヨ子にはどうしても発見できなかった。

サヨ子はひたすら行儀をよくし、学校に上がってからは良い成績を撮り続けるしか術がなかった。


サヨ子が小学2年の時昼休み、サヨ子は教室の片隅で独り学級文庫から選んだ一冊の本を読んでいた。

3歳くらいから昌子に怯えて成長したサヨ子は人と交わるのが本当に苦手な子どもに育っていた。


学校がある意味逃げ場所で、小学校に居る間は昌子の追求や奇行からのがれられるのだ。

昼休み、校庭から少し聞こえる歓声を聞きながらゆっくりと本を読む。

とても素敵な時間だ。


その日の授業が終わり、重い足取りで下校し、帰宅すると先に帰っていた千春がサヨ子を見つけると目を輝かせて昌子のそばに擦り寄り

「お母さん!おねえちゃんね、学校で昼休み校庭でみんなと遊ばんと教室で本読んどったんだよ」

と言いつけた。


なんと、千春は階数の違うサヨ子の教室までサヨ子に見つからないようにサヨ子の様子をうかがいに来、放課後昌子に言いつけたのだ。


小学一年生の千春のご注進に易々と昌子は乗っかりサヨ子を詰問しだした。

「なんでみんなと一緒に外で遊ばんの?!」

「あんたに本読ませるために学校にやっとるわけじゃないでね」

「みんなと仲良くできん子はウチの子じゃないでね」

そうやってサヨ子が責められると千春は目をクルクルさせて喜んでいる。

今から思えばある程度の爆発をサヨ子で発散すると昌子が「落ち着く」事を千春は知っていたのだろう。

「あんたみたいな子は恥ずかしくてウチに置いとくわけにはいかんでね」

サヨ子が声を上げ、突然右腕が引っ張られる。


右肩が外れそうに痛むと思った瞬間に一階のベランダから庭に放り出された。

内鍵を閉める音がする。


ああ、またか。

お父さんが帰ってくるのを待とう。

あちこち体が痛むのを感じながら砂利の上にしゃがんだ。


家の中から昌子と千春の話声が聞こえる。おやつでも食べているんだろう。

お腹すいたな。とサヨ子は独り思う。

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