帝王な二人
6月19日に改稿完了しました。
か「ふわぁ~っ、おまたせ~」
美「は…はあ…」
扉から出てきたのはなんとはるかさんとそっくりの女の子だった。
彼女は妹なのか?どう見ても小学生が着ていそうな私服を着ていて、眠そうで、何より頭が悪そうだ。
は「なーんで私服で来たのよーっ!!あなたって人はーっ!!」
か「だって面倒だもん。こっちの方が楽ちんじゃん」
は「如月!お客さんが来ているって言わなかったの!?」
か「んあ?お客さん?」
こ「いやぁ…」
は「全くもう!着替えてきなさい!!」
か「え~っ、めんどくさいからやだぁ~っ」
は「めんどくさいじゃありません!お客様が来ておりますのよ!!」
か「ね~え~っきさらぎ~、チェスやろ~よ~」
如「お嬢様、流石に今は駄目ですぞ」
か「え~っ、いいじゃ~ん。お~ね~が~い~っ」
如「ですが…」
なんて奴だ。
私たちの誰よりもこいつは頭のネジがぶっ飛んでやがる。
は「…わかったわ」
何がわかったのか、はるかさんが立ち上がる。
は「代わりに私が勝負してあげようじゃないの!私が勝ったらかなたは着替えること!これでどうかしら?」
ええ…緩い…。
か「ええ~ど~しよっかなぁ~。はるか弱いし~」
は「なっ…」
なるほど。はるかさんはチェスが弱いのか。
私はチェスなんてやったことすらないし、一生使うことのない知識だけど覚えておこう。
は「何言ってるの!私あの日以来毎日3時間は練習してるんだからね!!」
か「暇人だな」
は「むっ…かなたにだけは言われたくないわよーっ!!!」
か「しょうがないなぁ~相手してあげるよ~。で?わたしが勝ったらはるかは何するの~?」
は「え、えっと…」
か「じゃあわたしが勝ったら~今日一日はわたしの下僕~はいけって~い」
は「…わかったわ!望むところよ!!」
そして姉妹のチェス大会が始まった。
私が言えた立場ではないことはわかるがここで私から一つ言わせていただきたい。
――なんだこいつら。
――――――――
は「ま…負けた…」
か「やっぱりはるか弱いな~あはは~」
チェスは全く激闘ではなく、かなたがあっさり勝ってしまった。
チェスの結果なんかはっきり言ってどうでもいいんだけど。
ち「茜先輩!」
茜「ん?どうした」
ち「ミネストローネ本当においしいですよね!!」
茜「あ、ああ。そうだな」
ちさが目を輝かせて言う。
ミネストローネなんてとっくに食い終わってるんだけど…。
茜「てかいつまで食ってんだ?美味いのはわかったけどちびちび過ぎんだろ」
ち「これ17杯目です!!!」
茜「食いすぎだろ!!!」
というかおかわりなんてあったのか…。
この先いつ食事にありつけるかわからないから私もおかわりもらっておけばよかった。
か「はい下僕ぅ~!あはは~」
は「くーっ!」
そう言ってかなたははるかさんに首輪をつける。
しかもリード付きだ。
はるかさんの耳が真っ赤に染まる。
か「ささ、これも付けて~」
今度は犬の耳付きのカチューシャを付ける。
さらに尻尾も付けた。
か「ほらほら、わんわん鳴いてよ~下僕ぅ~」
は「わ…わお~ん…」
かなたの指示ではるかさんは恥ずかしそうに犬のまねをする。
はるかさんの目は涙で満ちていた。
か「ほら~聞こえないよ~。わお~ん」
は「わ!わお~ん!!」
やけくそではるかさんが叫ぶ。
私たちどころか執事さんすら手も足も出ない状態である。
こ「ねえ」
茜「なんだよ」
こ「私たち何しにここに来たんだっけ?」
茜「…さあ」
ち「ミネストローネ食べに来たんですよ!!」
こ「それか!すいませーん!私にもミネストローネのおかわりくださーい!」
だめだ。あのバカ姉妹とちさのミネストローネ中毒のせいでこっちまでおかしくなりそう。
卯「え?おかわりあるの!?」
美「私にもくださーい!」
舞「同じく」
雪「私も私も!」
ち「ください!」
なんてことだ…。皆完全に正気を失っている。
…でもミネストローネは私も食べたいかな。
茜「わ、私にもください」
そう小声で言った。
――――――――
ふぅ。食った食った。
結局あの後3杯も食べてしまった。
ちさはなんと40杯近く平らげ、今は私の膝枕の上ですやすや眠っている。
こんなに小さい体なのにどんだけ入るんだ…。
今は拠点の時とは違い幸せそうな表情をしている。
余程うれしかったんだろうな。
さて、この後どうしようかな。
…じゃなかった。このカオス空間を何とかしないと。
自分までカオス空間に脳を犯されそうだ。
茜「あの…」
如「何でしょう」
茜「私たちはどうしたら…」
如「はるか様から話をしてもらうべきなのでしょうが…なんせそのはるか様があの状態ですので…」
か「ほらはるか~もっとはやく~」
は「キャインキャイン!」
か「うお~はやいはやい~」
茜「あ、あはは…」
如「大変申し訳ございません…」
卯「あの人いつもあんな感じなの?」
如「いえそんな事は…。とくにはるか様は」
こ「私たち舐められてるの?」
雪「というかこんな奴にこの国支配されてるの??」
如「…止めた方がよろしいでしょうか?」
美「頼みます」
終わってるな。この国。
なんで私たちが転移してきたところはよりによってこんな国なの?
一刻も早く帰らないと正気を保てなくなりそうだ。
――――――――
は「ホントにすみませんでした!!!」
はるかさんが深々と頭を下げる。
一国を担う帝王がこんな形で頭を下げるなんてまずないだろう。
は「こら!かなたも謝りなさい!」
か「ああ~ごめんね~。うちの妹がやらかしてしまってね~ほんと」
は「あなたのせいでしょ!!」
かなたが気だるそうに謝る。
そして責任を押し付けられたはるかさんはツッコミを入れる。
……って妹??え??
茜「はるかさんって妹なんですか!?」
は「え、ええ。あ、紹介が遅れましたね。こちらが私の双子の姉のかなたです」
か「ど~もど~もよろしく~」
双子だったのか。通りで瓜二つなわけだ。
というかなんでかなたの方が姉なんだよ。誰がどう見たって逆だろ。
か「ねえ~私部屋に戻っていい~?」
は「駄目に決まってるでしょ?ほら、ここに座りなさい。」
か「…下僕」
は「わ、わかったわよ!!部屋戻っていいわよ!!」
か「わ~い」
そう言ってかなたは部屋に戻る。
完全に弱みを握られたはるかさんは真っ赤になった顔を手で押さえる。
確かにあれは帝王としても女性としても失態であろう。
は「は、話を続けます…あの…本当にごめんなさい…」
茜「はぁ…」
は「コホン。では本題に入りましょうか」
はるかさんが元のキリッとした表情に戻る。
にもかかわらず全く緊張感を感じないのはなぜだろうか。