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日本帝国

6月19日に改稿完了しました。


今回も誤字修正しました。

 私たちは森を離れ、さっきの屋台への道のりを思い出しながら歩いた。

すると、ある一つの大きな建物が見えてきた。


こ「あれか?」

ち「ミネストロ~ネぇ~」

雪「どうしたのこの子」

茜「好物のミネストローネ買えないと知ってからこの調子なんだ」

雪「へぇ」


先ほどのミネストローネの屋台が見えた。恐らくあの建物で間違いないだろう。

建物がもうすぐというところで雫が言う。


卯「てか思ったんだけどさ」

こ「なんだ?」

卯「誰一人スマホいじってないね」

こ「当たり前だろ!無線使えないスマホなんか使い物にならねぇよ」

卯「あんたの話じゃなくて。ここの住民の話よ」

美「電波届かないから私たちのように誰も使わないんじゃない?」

卯「でもこんなに栄えてるのよ。おかしいと思わない?」


確かにそうだ。

私たちの世界では余程の山奥とかでなければ大体電波は届く。

東名阪の繁華街なんか電波ビンビンだ。

そしてここはそれなりの繁華街。電波が無いなんておかしい。


こ「そういえば車も電車も飛行機も無いな」

美「馬車はあるけどね…」

舞「イヤホンしている人も、カメラで写真を撮る人も見当たらないわね」

茜「ということはもしかして…」

美「技術がダメダメなのかな」

卯「そうかもね」


その辺りも気になる所だ。

異世界転移の事やこの世界の事。色々と謎ばかりだ。

全て市役所(ここ)で解ければいいんだが。


茜「じゃあ、入るよ」


――――――――


 建物の中は天井が吹き抜けになっていて、無機質ではあるものの、開放的な空間になっていた。

人はほとんどおらず、いるのは受付嬢と緑っぽい鎧を着た男と全身鎧の人だけだった。

そしてその緑色の鎧の男…面倒だから緑でいいか。

で、その緑がこちらに気づくやいなや、笑顔でこちらに向かってきた。


 「いや~待ってたよ!」


待っていた。私たちをか?

これはご都合主義とかいう奴か。

…本当にご都合主義ならお金も"円"にしてくれて、電波も飛ばしてくれればいいのに。


 「新しい冒険者がこないかと待ちわびていたよ!いやぁ~よかったよかった」


…え?冒険者?


 「って君たち武具持ってないのかい?」

雫「持ってないも何も私たち冒険者じゃな…」

 「まあいいか。武具なら倉庫に少しはあるしな。おい、取ってこい」

 「了解」


全身鎧の野郎は一人どこかへ行ってしまった。話の通りだと倉庫だろうけど。

それにしてもなぜこいつは人の話を聞かないんだ。

幼稚園児でも朝飯前の事がこいつにはできないのか。


 「まあ少なくとも人数分はあるだろう。好きなのを持っていけ。」

美「あの…私たち冒険者になりに来たわけじゃないんですけど…」

 「なっ…!?」


緑の鎧のあん畜生は目を丸くした。

どうやら冗談とかじゃなくてガチで思っていたらしい。


緑「ま、まあ落ち着いて」


それはこちらのセリフなんですが。


緑「そうだ!帝王様の話を聞けば気が変わるかもしれん。な、どうだ?」


そうだでもどうだでも無い。とでも言うような表情を私たちは向けた。

こいつは休みの日に来るしぶといセールスマンより厄介だ。

…ただここの帝王に会うというのは悪くはないと思う。

とりあえず聞くだけ聞いてやるか。


茜「…分かりました。聞くだけなら構いません」

雫美こ卯雪舞「「「「「「ちょっ!!」」」」」」


すぐさまツッコミが入る。そりゃそうだよな。この後何されるかわからないしな。

でもインターネットが使えない今の状況ではここをよく知る人物と話ができるというのがやはり大きな得な気がした。

ましてや"帝王"という権力保持者だ。恐らく今回を逃したら二度と会う機会はないだろう。


緑「おお!よかったよかった。ささ、こちらへ」


その後、緑の鎧のあん畜生は受付横の階段の方へ上るよう言った。

フロアは13階。そこまでエレベーターがあるはずもなく階段をひたすら上った。


――――――――


美「疲れた…」

雪「休憩じゃぁ…」


みんな疲れたいるようだ。

しかし私は人一倍疲れたに決まっている。

だって放心状態の女子高生背負いながらだったもん。


緑「はるか様、今客をお呼びしました。」

 「そうか、どうぞ。お入りなさい」


中から帝王と思わしき人物の声が聞こえた。

その声は女性…というより私たちと同い年くらいの少女の声だった。


緑「さ、どうぞ」

茜「失礼します」

美「お邪魔します」

こ「遊びに来たぞー!」

卯「おい」


――――――――


 扉の先は大広間になっていた。

そしてその先には先ほどの声の主と思わしき少女が座っていた。

少女のとは別にもう一つ豪華な椅子が横に置いてある。

もしかしてもう結婚しているのか…!?

私たちなんて彼氏すらいないのに。


は「どうも。私が帝王のはるかです」

茜「はぁ、どうも」


町の風景やお金の単位がヨーロッパっぽかったから"アリス"とか"ルーシー"みたいな名前かと思ったが日本名のようだ。

というか統治しているのが見た感じ私たちとほぼ同い年って…

もうこれわかんねぇな。


美「えっと…失礼ですがお年は…」


直球すぎないか?


は「ええ、この前331歳になりました」


え?331歳??

え?え??どういうこと???

てかなんで普通に答えた??


 「はるか様方は不死の薬を飲まれましてね、外的要因でしかお亡くなりにならない体になったんですよ。病気にかからないし、最近ではこの辺りで争いもなく外的の攻撃がないので、おかげで長生きされてますよ」


横に立っている執事らしき人が言った。

"不死の薬"だって。なんでこういうものはあるんだろう。


ってさっきはるか様(.)って言った?

って事は他にも誰か飲んだってこと?


まあいいや。それより私は他に聞きたいことがある。


茜「あの、ここってどこですか?」


って直球すぎたか。

いや、変に遠回しに聞いてよくわからないこと言われるよりいいだろう。


は「…え?」


やっぱりか。流石にこうなるだろうなと少しは思っていた。


茜「えっと、申し上げにくいのですが、私たち知らない間にここに着いていたんです。つまり異世界転移してしまった可能性があるんです。それでここの知識が全く無くて…」

は「はぁ…。世の中突如変なことが起こるものですねぇ…」


は「コホン。まあいいでしょう、教えます」


はるかさんは呆れ顔からつつましやかな笑顔に戻り話をした。


は「ここは"日本帝国"。そしてこここそ中心地の"ドエ"です」


日本帝国…ドエ…。なんか聞いたことがありそうで聞いたことがない名前だ。

「ねえ」とこはるに小声で話しかけられる。


こ「日本の旧名ってこんな感じのじゃなかった?」

茜「いやそれ大日本帝国だろ」

こ「もしかして私たちタイムスリップしちゃったんじゃない?」

茜「タイムスリップねぇ…」


「こらそこ!」


雫に怒られてしまった。

私とこはるは黙って雫に頭を下げる。


は「それにしても初めてですねぇ…。異世界転移した人がいるとか聞くのは」

美「他にはいなかったんですか?」

は「はい」


てっきりこの世界は異世界転移とか異世界転生で来た人が多いのかと思っていた。

転生はまだしも、転移でドエ(ここ)に降り立ったのは私たちが初めてらしい。


は「ちょっと如月(きさらぎ)

如「はい、なんでしょう」

は「さっきから思っていたのだけど、かなたが起きてこないけどどうなっているのかしら」


ちょっと怒りのこもった声で言う。

かなた――誰だろう。お手伝いさんかな。

それにしてもいきなりすぎる。なんで今なんだろう。


如「今お呼びします」


そう言って執事は私たちが入ってきた扉とは別の扉から部屋を出る。

恐らくあの先は一般の人は入れないのだろう。

この際正直に言おう。どうせ異世界に来るのなら姫とか権力者になりたかった。


――――――――


 かれこれ30分近く経っただろうか。流石に退屈だ。

というか私はいつまでちさを背負っていればいいのだろうか。

足が限界に近づいていた。


は「そこの者。重くないのか?」

茜「あっ、私…ですか?」

は「そうです」

茜「ああ、はい、重いです」

は「その方は具合が悪いのですか?」

茜「いや…先ほど屋台でミネストローネを見つけたのですが、お金がなくて…。それで食べれなくてこうなってしまったんです」

は「ほう…」


………


は「ちょっと!何をぼーっと突っ立っているのですか!早くこの者たちにミネストローネを振る舞いなさいな!」

緑「は、はい!申し訳ございませんでした!!」


そして緑の鎧のあん畜生らは階段を降りていった。


――――――――


緑「お待たせしました」


私たちの前にミネストローネが置かれる。記念すべき第一回目の異世界での食事である。

…第一回目なのは私だけね。


美「やっとこの時が…!」

舞「どんぐり以来の食事ね」

卯「バンザーイ!」

こ「おいしそう…」

雫「温かい…」

雪「いただきます!」


食事を目の前に私たちは興奮を隠しきれなかった。


茜「ほら、起きて。ミネストローネ来たわよ」

ち「…ふ、ふえっ?みねすとろーね…?」

茜「そうよ」


ちさが目を覚ました。目に光が戻っていく。


ち「はわわ…」


うん、いい笑顔だ。

それにしてもいい人だな。はるかさん。


如「はるか様、遅くなりました。かなた様をお呼びしました」

は「むぅ。遅いぞ。今まで何があったのです」

如「はぁ…それが…」


執事の背後から人が現れた。

かなた様…?どういうことなのだろう。


その姿は私たちの想像を絶するものだった。

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