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これから…

――――――――



茜「おーい!舞香菜どこだー?」


私たちは舞香菜の叫び声が聞こえた方に向かって歩いていた。

しかし、叫び声は最初以来聞こえず、ひたすら歩いて探すしかなくなっていた。


卯「うわっ!」


卯乃が突然叫び声をあげる。そしてすぐに口を手で押さえる。


雪「なんだよどうしたんだよ」

卯「あれだよあれ…」


卯乃が木と木の間を指さす。


そこにはドラゴンがいた。

くろの話が本当だとすれば、恐らくちさに唾液をかけた個体で間違いないだろう。

さっさとちさの仇を討ってやりたい。私は剣を握りしめた。

とはいえ私たちがあのドラゴンを討伐できるわけがない。


卯「あっ、あれ!」


また卯乃が指をさした。

その先には…。


雪「舞香菜じゃん!」


捜し者の舞香菜がいた。

しかし…。


雫「でも、ドラゴンに踏まれているわね…」


そう、ドラゴンに踏まれ、ピクリとも動いていない。

私たちがもっと早く助けに来ていればこんな事には…。

私は涙を流す。そして舞香菜の叫び声が脳内でこだまする。


雪「あの野郎…ちさを危ない目に遭わせるだけじゃなくて、舞香菜を殺すなんて…絶対許さねぇからな」


雪音はそう言うとおもむろに剣を引き抜く。


卯「ば、馬鹿!あいつは私たちには手に余る敵だぞ!あなた一人に倒せるわけ――」

雪「うるせぇ!それでもやるんだ。たとえ私が死んででも奴に私の友を殺した罪の重さを分からせてやる」

卯「で、でも…」


雪音を掴んでいた卯乃の腕が離れる。

それと同時に雪音はドラゴンに向かっていく。


しかしそんな雪音に突然別の腕が止める。

――いや、止めたわけではなかった。


舞「いや~ん。雪音ちゃんってばかっこいいこと言うのね~」


…え?なんで舞香菜がここにいるの?

私たちは口を開けたまま塞がらなかった。


卯「え、えっと…舞香菜さん?」


卯乃も困惑からか"さん"付けになっている。


舞「はなしはあ~とで。ほら、ドラゴンがこっち向かってきてるわよ」

茜雫卯雪「「「「は?」」」」


確かにそこにはこちらに迫ってくるドラゴンの姿があった。

私たちはすぐにドラゴンから逃げる。



――――――――



 無我夢中で走って、気がつくと町に戻ってきていた。

ドラゴンは追って来ていないようだ。そんなに足は速くなかった気がするが、一応ドラゴンから逃げ切ったようだ。

ただ、また舞香菜がいなくなってしまった。

舞香菜を見つけるはずが、疲れただけになってしまった。


茜「…また森行く?」

雪「ふざけんな!行くわけないだろ!」

卯「森での威勢はどうしたんだ…」


しょうがない。今日はもうなんだかんだで辺りは暗くなっているし、疲れたし、舞香菜が見つかるとは限らないし。

悪いが舞香菜には野宿をしてもらおう。


雫「それじゃあ城に戻りましょ」



城に着いた私たちは一目散に部屋へ向かった。

とにかく今は寝たい。疲れきった今の私たちに睡眠より必要なものがなかった。


部屋の前に最初に着いた私は、急いでドアを開ける。

そして、部屋に飛び込む。


茜「んゴハァ!」


部屋にあった何かに激突し、ダサい声を上げてその場に倒れこむ。

部屋を見る。そこには高々と積まれた様々な物資がそびえたっていた。

ここは確かに5階で間違いないはずだ。

それなのに先に部屋にいたのはちさではなく、見覚えのない荷物。

…どういうこと?


ギ「…何やってんだ?こんなところで」


ギルド長が不思議そうに私を見つめる。

見せもんじゃないんだぞ。これは。

それに何やってんだ?はこっちのセリフだ。

勝手に私たち(ひと)の部屋に堂々と荷物を置きやがって。


ギ「ああ、そうだ。部屋なら6階に移動になったからな。5階は物置だったわ。すまんな。ハッハッハ!」


ギルド長の笑い声が反響して耳に突き刺さる。

それにしても私たちは昨日は物置に寝ていたということになるのか。

なんとなくショックだったが、気を取り直して新しい部屋に向かう。



部屋に着くと既に雫と雪音が到着していた。

それから元気そうなちさと、私たち同様疲れ切った表情をしたこはるもいた。


茜「あれ?ちさめっちゃ元気そうね」

こ「そうだよ。こいつ食わせたらこうなったんだ」


こはるはかばんから麻の袋を取り出す。

そしてその中から赤い木の実を取り出した。


茜「それがどうかしたの?」

こ「こいつの正体はトマトだ。ミネストローネの材料のトマトでもこんな症状を起こすんかな~って思って食べさせたんだ。そしたらこの通り。大当たりさ」


なぜか格好つけながら話すこはるだったが、まあ言いたいことはよくわかった。

兎にも角にもちさが元気になってよかった。

私は胸を撫でおろす。


――とその時、私は後ろから何かに覆いかぶされた。


私はきゃあぁぁぁぁ!と久しぶりに女の子っぽい悲鳴を上げてしまった。

私の肩には腕がそれぞれ寿司のネタのように乗っていた。

思わず手の主の方を振り向く。


茜「ま…舞香菜…?」


その手の主は、森で遭難したはずの舞香菜だった。

顔は泥まみれだったが、舞香菜で間違いない。

…それにしても雫にしろ舞香菜にしろ、なぜ部屋が変わったことを知っているのか。


舞「はぁ…はぁ……魔法使ったら…疲れちゃった……」


そう言って舞香菜は眠ってしまった。


茜「って今魔法って――」

こ「今は寝かせてやれ。疲れたって言ってるだろ」

茜「そっ、そっか…」

こ「よし、みんなも疲れただろうし私たちも寝るか。おやすみ」


こはるは部屋を出た。

他のみんなもベッドで寝る支度をする。

…私を置いて。私は舞香菜に抱かれたような姿勢のまま動けなかったので、その場で寝ることにした。

ホントは私もベッドに横になって寝たいけど、我慢だ。


それにしてもまだ一日目だよね…?

みんな相当疲れているようだけど大丈夫なのだろうか。

私たちこれからやっていけるのかな…?


舞「……た………だいじょ…………たし…………るか……」


舞香菜の聞き取れない寝言を子守歌代わりに眠りについた。

キリが悪いようにも見えますが、本話で"始まりの章"は最終話となります。

次話からは別章になります。

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