包 -wrap-【ハグ(8/9)の日@ひろかな】
是非、元ツイとボイスをお聞きになってからお読みください。
元ツイはこちら↓
https://twitter.com/john_doe_nana/status/894125250903891968
悶えること間違いなし!(笑)
「……やっぱりやめた」
差し出したタオルを即座に引っ込め、ぷうとむくれる。
「どうしたの?」
相変わらずの反応に煽られて、ますます頬が大きく膨れた。
「『水も滴るいい男』を地で行ってるんだから、少しは周りを気にしてよ。ただでさえ女の子の目を引くっていうのに、そんな姿でいられたら余計心配で仕方な……」
するするとそこまで言葉にしてしまってから、はっと気付いて慌てて口をつぐむ。すると、一瞬の驚きを浮かべた後で、彼が小さなため息をついた。
「なら、君もわかったろう?」
「何が」
「あの時、僕がどんな気持ちでいたか、だよ」
少しだけ怒っているような声色。なんのことかわからず戸惑っていると、ふわ、と手にしたタオルごと抱き寄せられた。ぐっしょり濡れた髪や衣服が――布地から透けて見える肌が目の前に迫ってどきりとする。
「これからは気をつけます」
そうして直後耳元で響く、殊勝でひそやかで甘い声。
「他の子の目に、触れさせたくないんだよね」
改めて知らしめられて、身体のぜんぶが熱くなる。
「そんなふうに聞こえたけどなぁ」
自意識過剰にも聞こえる台詞。珍しく試すようなそれを、真正面から肯定するのは悔しくて、けれど否定もできなくて。
「……知らない」
弱々しく逃げ口上を吐き、一層熱を帯びた頬を濡れたワイシャツに押し付ける。
そうして気づく、手にしたままだった一枚のタオル。
もはやそれすら、もどかしく思えて。
すぐさま投げ出し、空になった腕を背に回すと、包み覆い隠して悦に入った。
自分が、その代わりになればいいのだから。
もういまさら、必要ない。