プロローグ
ここはあるものを祭るために造られた巨大な神殿。造られてから長い年月が経ち、朽ち果てそうな場所もあるがその美しい姿や神秘的な空間は健在だった。そう今さっきまでは・・・・・・。
今、この神殿の中の礼拝堂のような場所では、光と闇が中心付近でぶつかり合い奔流となり、荒れ狂っていた。その光と闇の奔流は周りにある物を巻き込み、神殿を破壊しながら膨れ上がってる。そして、その光と闇の奔流を創り出している二人の女性の姿があった。
「何故こんなことをしたのですか!!」
光の奔流を放っている女性は叫んだ。
「こうするしか・・・・こうするしかなかったのよ!!」
闇の奔流を放っている女性も叫んで答える。
光の奔流を生んでいる女性は光輝の巫女リュミエル
闇の奔流を生んでいる女性は闇夜の巫女フォンセ
この二人は世界に光と闇をもたらすと言われている神の血を引くと言われる巫女の二人だ。
今、世界は闇で覆われている。
事の原因は人々の信仰が光輝の巫女にしか関心がないことだった。
闇は暗い、闇は怖い、闇は重い、闇は地獄、闇は・・・
人々の中では闇とはそのようなマイナスの認識が広まっていた。
闇夜の巫女はそれに激怒し、闇の素晴らしさを知ってもらおうと、世界を闇に包んだ。
闇の中だけでは作物も育たない、水は生まれない、人々が生活するには厳しい環境だった。
そして今は光輝の巫女が輝石を残した場所にだけ光が生まれ、そこを中心に人々が暮らしている状況だ。
光輝の巫女は闇夜の巫女を止めるためにこの神殿を訪れ、言い合いの後に戦うまでに発展してしまった。
「くく、あーはっはっはっはっは!!」
闇夜の巫女は狂った笑いをして力を更に増幅させる。
「くっ!」
今まで均衡を保っていたが光輝の巫女は押され始めた。
「・・・これしか、ないのですか」
光輝の巫女は闇夜の巫女が暴走した時のために秘策を持っていた。
「皆!来て!」
光輝の巫女の呼び声に赤、青、黄色、緑の四つの光の球が闇夜の巫女の周りに漂い始める。そして、四色の光は闇夜の巫女の周りで強く発光を始めた。
「な!何を!!」
闇夜の巫女は力が抑えられる感じがして戸惑いを見せた。
「ごめんなさい。フォンセ。始原に基き・光輝の力・此処に示す・彼の者を・時の牢獄に・捕えよ」
光輝の巫女は一言謝り魔法の詠唱を開始した。そして、最後の言葉を紡ぎ出す。
「プルヌス・ルシス」
最後の言葉を紡ぐと、周りを漂う四色の光の球と光輝の巫女から発せられた光は闇夜の巫女を包み込み始める。
「こ・・・これは・・・」
「これは貴方を封印するものです。長き眠りに就き、頭を冷やしなさい」
その言葉を聞こえたのかはわからないが、闇夜の巫女は光から産まれた結晶の中に閉じ込められた。
こうして、世界を脅かした闇は封印され、世界は平穏を取り戻していった。
これが『光と闇の巫女戦争』と呼ばれる伝説とされる戦いである。
これから始まる物語はここから数千年の時を超えて始まる一人の少女の物語である。
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「何故殺さなかったのですか?」
後ろからそんな声が光輝の巫女にかかる。
「光があれば闇は産まれる。闇が無ければ光は無い。闇夜の巫女だけを殺すことだけは絶対にありえません」
「しかし、それでは世界に溢れている闇は!」
「封印したことにより、今溢れている闇も次第に落ち着きを取り戻し、世界は以前の姿を取り戻すでしょう」
「・・・わかりました」
後ろから聞こえた声の主は納得したようだ。
「それとこの封印が解けるのには恐らく相当な時間がかかるでしょう。私も私の子孫もそれまで力を持ったまま生きているかわかりません」
「・・・では封印が解けた場合はどのように?」
「あの子を送りましょう。時期は封印が弱まった時に目覚めるように」
「いいのですか?あの子は」
「いいのです。闇夜の巫女とこうなることになった時から覚悟は出来ていましたから」
「・・・わかりました。そのように」
その者はそう言い残して下がっていった。
「ごめんなさいね。駄目な母で・・・・・」
光輝の巫女は一人でその場で泣き崩れたのだった。