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異世界生活は神々の加護で!  作者: 軌跡
序章 女神に招かれて
1/42

Ⅰ-Ⅰ

「……?」


 気付けば、その荒野にいた。


 両手を突いて立ち上がってみるものの、辺りには乾き切った大地しか映らない。地平線の彼方まで同じ光景だ。町はおろか、人の姿さえ見当たらなかった。


「――どういうことだ?」


 首を捻りながら、直前の記憶を整理してみる。

 しかし靄がかかったように思い出せない。自分の名前、これまで関わってきた出来事は回想できても、ここに来る直前の光景がどうにも思い浮かばない。


 足元にはただ、紅い槍が落ちているだけ。


 ああ、これは忘れていない。共に戦いを潜り抜けた、父から受け継いだ剛槍だ。俺が英雄である証の一つであり、神の加護を宿す神器でもある。


「……」


「いたぞ! 召喚された英雄だ!」


 屈んで槍を拾い上げようとした直前、男達の叫びを耳にする。

 赤い鎧で身を覆った男達だった。手には剣と盾。俺に対して敵意を向けているのが、嫌というほど伝わってくる。


「はん、上等だ」


 俺は足先だけで槍を拾い上げた。

 戦いに対して一切の嫌悪感は持っていない。挑んでくる者があれば、どんな立場の人間だろうと受けて立つ。


 それが俺という人間。

 大英雄を父に持つ身の、絶対的な基準である。


「殺しても構わん! 王の前に突き出すのだ!」


 隊長格らしき男が吠えた。

 それに従い、部下である四名の男達が剣を手に疾走する。――何か特別な力でも持っているのか、彼らは地面を滑るように走っていった。


 なるほど、悪くない。

 悪くないが、


「俺の敵じゃねえんだよな!」


 一瞬だった。

 俺が、彼らの背後に回り込んだのは。


「え――」


 刹那の出来事。彼らにとっては正面にいた筈の敵が、いつの間にか背後に回り込んでいるという事実。


 俊足か、あるいは神速か。


 それを理解するよりも先に、赤の鎧はより濃い紅の一撃によって吹き飛ばされる。

 耐えた者はいない。中にはどうにか盾を構えた者もいたが、俺が持つ槍の前には防御など意味を成さなかった。


 吹き飛ばされた彼らは、倒れたまま動かなくなる。

 

生きてはいるようだが戦闘は不可能だろう。なら残るは一人。後ろで勝利を目にしようとしてた、隊長格の男だけ。


「さて、アンタはどんな武器を使うんだ? 剣か? 槍か? 弓か? それとも魔術か? やる気があるならさっさと見せてくれよ」


「な、な……」


「おいおい、ビビって声も出せねえのか? ……ま、逃げるんなら逃げでも良いんだぜ? 抵抗しないのであれば、俺も殺す気はねえし」


「っ――」


 男は背負っていた大剣を手にする。

 淡い光を帯びた、見るからに特別な能力を持っていそうな剣だった。


しかし、それを目にした俺に恐怖はない。むしろ好奇心だけが刺激される。


 どんな力を持っているのか、俺の速さについてこれる実力はあるのかどうか。

 命のやり取りを前にして、確かに口元は笑っていた。

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