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along a wall, traveler's go.

ある日この世界に、

壁ができた。


人工の様で違う、何処までも真っ直ぐに延びる果ての見えない高い壁。

薄くて透明で触れただけでも砕けて仕舞いそうなのに、その実ダイヤモンドよりも硬く何をしても傷一つ付くことがない。

誰も壊せなくて、越えられない壁。

この世界を真っ二つに別けたその壁は、


小さな村に住む僕と彼女の間にもできた。




『なら旅に出ましょうよ』


『いつかこの世界の端っこに着くまで』


『そうしたらきっと壁の端っこもそこにあるわ』


四年経っても、五年経っても壁は世界を二分する。

もう世界も人々も壁があって当たり前だと認識し、コチラとアチラは別世界の様に振る舞う。


壁越しの彼女は隣人よりも近くに居るのに、声も手も届かない。


そんなある日、彼女が僕に提案した紙に書かれた言葉。


彼女の温もりを忘れて仕舞いそうな未来が恐くて、僕は


『そうだね』


彼女と旅に出た。




壁に沿って僕らは歩く。

壁は森が在ろうと街が在ろうとお構いなしで真っ直ぐに延びている。


目の前に障害物が聳え立ち一時別れる事に成ろうとも、壁の下へ戻れば僕らはまた互いを見付ける。


『きっともうすぐ触れ合えるわ』

『そうだね』


壁越しに掌を合わせて、長い長い旅を続けて。


『僕らの間に壁が無くなったら先ずは何をしたい?』

『そうね。先ずは壁が入る隙間も無いくらいに貴方と抱き締め合いたいわね』

『そうだね』


川を渡って、砂漠を抜けて、草原を歩いて。


『世界の端っこはどうなっているのかしらね』

『君はどうなっていると思う?』

『そうね。崖になっていて、水は滝の様に落ちているのかしら』

『それは危ないね』

『でも、この壁を越せるのならば崖の淵でも渡ってみせるわ』

『それは僕の役目かな』


何回見たのか月と太陽が壁を越えて廻る。


『きっともうすぐよ』

『そうだね』


彼女のその言葉が幾度となく僕に希望と勇気と、それからどうしよもない焦燥をくれる。

それでも二人で歩いて行く、何処までも。いつまでも。


『ほら、もうすぐ草原を抜けるわ。あの村で休んでいきましょう』

『そうだね』


僕らはまた新たに村に差し掛かる。


『きっと壁の端っこももうすぐよ』

『そうだね、もうすぐこの旅も終わるんだ』


僕らは歩き続ける。

果てしないこの世界の端っこに着くまで。


再び出逢い、抱き締め合えるその日まで。




end

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