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早死希望。

「喫煙止めろ若者。早死にするぞ」


先生は私にそう言った。


別に、もう煙草を吸ったからって法を犯している歳でもないんだけど。先生が私にとってまだ"先生でしかなかった"頃からこのお叱りは受けている。


「良いんだよ。寿命一杯なんて生きたくないし」

「はぁ?」


灰皿代わりの空缶をテーブルに置きながら毎回毎日私はそうやって理由を述べる。


「このままだと先生の方が年齢的に先に死んじゃうじゃん」


歳なんだから。と続ければ、先生は眉をひそめた。

恋人に未だ先生と呼ばれているせいか、言外におっさんと言われたせいか。

私の事を若者呼ばわりする割りに、多分後者なんだけど。


「だからこうして寿命を合わせてあげてるんだよ」


どうだ。とは言わないがきっぱりと言い切った。

それはもう淀み無く。


「…莫迦か。そんな事してっと俺より先に死ぬぞ。」

「後よりは良いよ」


溜め息混じりの先生の言葉に即座に返す私。

何も一緒に死にたいなんて贅沢は言わない。ただ先生が居ない世界に一分一秒も私だけが取り残されたくは無い。それだけの事だ。


「俺も年下に先に死なれるとか無いわ」


煙草を止めさせたい先生の本音が漏れる。

一回り以上年の離れた私達。先に死ぬのが多分先生なのは、まだ覆せない。けど、


「じゃあ煙草止めても良いよ」

「!そうかっ!!」


あまりにも先生が言ってくれるから、少し位は私も妥協するべきだろう。

何たって、私だって先生と生きては居たいのだ。少しでも長く。


「その代わりに、先生が長生きしてね」


私が生きていると言うことはつまり、先生が生きていると言うことだから。


「大丈夫。死んだらその時は連れてって貰うから」


気圧され気味の先生が確かに頷いたので、私の長い喫煙生活は確かに幕を閉じた。



end

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