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安倍晴明と安東総理のやり直し転生譚  作者: 坂崎文明
第一章 現代過去転生編
3/48

超デート理論

 新宿駅前のフルーツショップの前で、安東要はデート相手を待っていた。

 

「安東君、待った?」


 月読波奈(つくよみはな)は、今時、珍しい牛乳瓶の底のような丸いメガネをクイッと持ち上げながら、美少女気取りで安東要を見つめた。

 黒いゴスロリメイド服で厚底ブーツを履いている。


 通称≪ブスメガネ≫、安東要的にはむしろ振られた方が幸せである。

 こんな女と何故デートの約束をしたのか、自分の正気を疑いたい気分だ。

 若さゆえの過ちにちがいない。


 一応、名門大学のラノベサークルの後輩だが、安東要は三浪しているので、まだ、大学三年生の24歳である。彼女は二年生の20歳である。


「いや、さっき来たばかりだよ。でも、波奈(はな)ちゃんのためなら何時間でも待つけどね」 


 安東要は軽くウィンクしてみせた。

 彼はちょっと頼りない感じだが、容姿や顔には非常に恵まれていた。

 人気ロックミュージシャンに少し似てる甘いマスクの彼が 月読波奈(つくよみはな)と腕を組んで歩きはじめたのを見た周囲の女性は、振り返りながらため息をついた。

 何という物好きなのか?という冷たい視線が安東要の身体に突き刺さる。


(晴明さま、何か周囲の視線が痛んだけど、何とかなりませんか?) 


(東日本を救うためだ。わしもつらいが辛抱してくれ)


 安倍晴明は安東要の脳の中に念話で直接、語りかけた。


「かなめちん、今日のデートどこ行こうか? やっぱり、ディズニー?」


 いや、その呼び方やめてくれと要は心の中で叫んだ。


「そうだね。ちょっと暑くなってきたので、ディズニーシーにしようか」


(晴明さま、相手の全てを肯定するという恋愛法則『超デート理論』ってつらいですね)


(つらいだろう。これからもっとつらくなるから。そろそろ愚痴がでる頃合いだ。でも、東日本を救うためだ。耐えてくれ!)


 安倍清明の音声ナビゲートも心なしか悲壮感が漂いはじめていた。 


「ねえ、かなめちん、わたしね、お姉さんが三人いるの」


「へえ」


「一番上の月奈(つきな)お姉さんは『月』にいるんだけど、わたしが生まれてから一度も会ったことがないの」


「そうなんだ。寂しいね」


「二番目の真奈(まな)お姉さんは≪遊星クルド≫にいるんだけど、太陽の光で蛇を焼いたり(注1)、異次元空間から天使を召喚したりするのよ」


「そうなんだ。ラノベとかファンタジーな感じだね」


「三番目の三奈(みな)お姉さんは地上にいるんだけど、地上基地の統括責任者というか、月読(つくよみ)のシステム全体を動かしてるの(注3)。凄いでしょう?」


「そうなんだ。お姉さんたち、凄いなあ」


「でもね、わたしはダメな子なの。何もできないから、どこにも行かせてもらえないの。ぐすん」


 月読波奈(つくよみはな)は泣きはじめた。

 いつものように泣きはじめた。

 思い出してきた。サークルの飲み会の時、泣きはじめた彼女を慰めるためにデートの約束をしてしまったのだ。


(晴明さま、この子、どう見てもメンヘラですよね? 言ってることが支離滅裂ですし、リストカットとかしてないですかね。大丈夫でしょうか?)


(その心配はないようじゃ。まあ、満更、間違ったことも言ってないようだが、3月11日まで彼女を励まし続けることが、お前の使命だと思ってくれ)


(はあ、そうですか。『超デート理論』がこんなにつらいとは思いませんでした)


(わしなんか、『超デート理論』の上級編である『超ヒモ理論』を極めているが、これも結構、つらいぞ)


(『超ヒモ理論』! 何か宇宙の神秘を感じるような理論(注2)ですね)


 思い出した。

 確かこのデートで振られた原因はこの重さというか、支離滅裂な月読波奈(つくよみはな)の言動に耐え切れなくなって、受け止められなくて振られたのだ。


 普通、こんな会話について行けるはずはないし、正気を疑うのは無理もない。

 だが、安東要には『東日本を崩壊から救う』という使命があった。

 もう、あんな想いはしたくない。


 しかし、この女の子とデートしたり、励ますことが『東日本を崩壊から救う』ことになるのか、全く意味不明だと思っている安東要であった。


(あの、晴明さま、この女の子を励ますのはいいとして、『東日本を崩壊から救う』ための残りの75%の要素って何なんですか?)


(気になるか? 次のミッションを知りたいか?)


(もったいぶらずに教えてください)


(うん、次のミッションは比較的簡単だと思う。この時代の神沢優に会って、お前が知った未来の事を告げるだけでいい。それが『東日本を崩壊から救う』残りの25%の要素になる)


(え? そんなに簡単なんですか?)


(そうじゃのう。彼女は≪天鴉アマガラス≫のリーダーになる器じゃ。それにかなり柔軟な頭脳の持ち主じゃ。説得は簡単だと思う)


(で、後の残りの50%は何なんですか?)


(これが一番、難しいかもしれん。その話はこのデートを無事に成功させて、神沢優に会った後に話す)


(そうですか。わかりました)


 安東要は意外と素直に引き下がった。

 実は月読波奈(つくよみはな)の会話に合わせるのがかなり辛くなってきていた。

 めまいがしそうな会話の応酬の中で、安東要は使命感に燃えていた。

  



(注1)常世封じ道術士 風守カオル 第一章 『柊の木の呪い 蛇神』を読むと満更、ホラでないことがわかる。

http://ncode.syosetu.com/n2805cb/7/


(注2)常世封じ道術士 風守カオル 第三章 『安倍清明の遺産 天山原発の危機』参照。

http://ncode.syosetu.com/n2805cb/22/


(注3)『彼女のパパに認めてもらえるように、役立つヒモ男を目指せ!シュールな放置系ゲーム『超ヒモ理論』』とは全く関係はない。

http://www.techjo.jp/2015/04/418711/


 むしろ、物理学の『超ひも理論』とは関係あるかもしれない。


サルでもわかる「超ひも理論」の基本だけ

http://matome.naver.jp/odai/2132453613216297001


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